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ウェルビーイングは選択できる

こんにちは。Sustainable Innovation Lab 参画メンバーの山口です。Sustainable Innovation Labが毎月開催している勉強会「Xゼミ」の第8回(2022年1月27日開催)の模様をレポートします。

今回は、NPO法人「ETIC.」の創始者として知られ、第1期SILフェローである宮城治夫さんにプレゼンターとしてご登壇いただき、SIL共同代表の白井さんとの対談形式で、「ウェルビーイング経営を考える」をテーマにお話が展開されました。
ぎゅっと内容が詰まった時間のほんの一部になりますが、ご紹介します。

DoingよりもBeing、その延長でのWell-being

「DoingよりもBeing。その延長にWell-beingがある。当たり前すぎる概念だけど、当たり前のことを意識せずに来たんだな、と感じている。」
そう語る宮城さんは、ETIC.設立時の思いから現在にいたるまでの変化を振り返ります。

ETIC.設立の背景には、”外の人がつくったモノサシで自分を定義している感覚”に対する違和感があったそうです。宮城さんご自身が団塊ジュニア世代として生まれ、両親や祖父母が求めてきたものを自分は求めてはいないのに、変わらないモノサシで”頑張らされている”感覚があった。そんなときに起業という考え方に出会い、『本当に自分が大切にしたいことは何か』を問い『全員が起業家精神を持ちうる』ことを仲間に伝えたい、という思いでETIC.を立ち上げられたそう。

しかしその後、新たな壁にぶつかります。
「起業する人を応援する過程で、IPOする仲間も出てきた。しかしIPOしたあと、資産は手に入ったのに、株主に追い立てられるように、むしろ心を病んでいく人が出始めた。『なんのためにやってるんだっけ?』と考えを深めて、”社会起業家”という概念にフォーカスを当て始めた。『なんのために?』の問いを立て、これまでの成功の概念と違う概念で挑む人に、光を当てることにした。それから今や社会起業家は、地道に浸透してきているという実感があります。」

自分の意思で今の環境を選んでるなら、それはアントレプレナーシップ

宮城さんは続けて語られます。

「”社会を変える”ことと”半径数mの幸せ”。この両立は、まだ達成できていないかもしれない。社会起業家に限らず、家族のため・会社のために、自分の幸せを犠牲にして、周りに貢献しようという人がたくさんいる。ここ5‐10年で、そのことにやっと目が向けられ始めた。
とくに社会起業家は、自分で意思決定しているつもりが、いつの間にか『課題を解決しなければならない』『解決してあげている』というマインドに陥りがち。
ウェルビーイングというのは、自分で意思決定できること。そしてアントレプレナーシップというのは、自分で自分の人生を決めて、人生に責任を取ること。

それなのに、気付くと他責になっていたりする。
社会の不満を言い出すと止まらない人もいる。黙って自分を痛めつけるように仕事してる人もいる。そういう態度は、”自分で決めている”ということに対する覚悟や感覚を阻害してしまう。

社会起業家も起業家も、過去の縛りから脱却するための型の例示にすぎないんです。別に起業なんてしなくたっていい。自分の意思で今の環境を選んでるなら、それは十分なアントレプレナーシップだと思います。
一人ひとりが個人のウェルビーイングに向き合えば、自ずと組織の在り方も変わっていくでしょう。」

自分が変わると、組織の見え方は一瞬にして変えられる

組織と個人の関係の観点では、具体例が挙げられ、さらに話題が深まりました。

「人は年季が入るにつれ、できない言い訳を考える天才になる。『組織では許されないと思うが…』という言い訳が必ずつくようになる。でも実際は、同じ環境で好き勝手やってる人は必ず居る。選択可能であることに、自ら気付かないようにしているんです。

『俺の前に組織が変われ』という感覚だと、組織は変わらない。逆に自分が変わることで、組織の見え方は一瞬にして変えられるものです。
取り組みの例として、文部科学省の若手官僚とのプロジェクトで有志メンバーと全国の尖った教育長・校長のネットワークを作ったのですが、これが省内で物議を醸しているんです。
この若手有志約15名のチームは、無給ボランタリーなので文科省の制約を受けていない。
これまで官僚と現場とのネットワークは形式的な会合に限られて、『横でつながって何かやろう』という活動は全く行われてこなかったから、教育長や校長たちはとても喜んでいる。
有志官僚には何の権限も権力もないが、現場から出てきたアイデアを、彼らが拾い上げて、政策にしていくことはできる。結果的にいいものを広げていくことができる。
トップダウンの官僚組織の中で、ボトムアップ的な変革は無理な構造だったのだが、まさに今、これを変えていこうとしている。
時間外の活動に人気が集まり規模が大きくなることで、だんだん目を付けられるリスクも出てきているが、現場のニーズは高まっている。そして、実は有志メンバーの上司たちもこれが大事な活動だと解っていたりする。
省庁の中でもお堅いイメージだった文科省が、実態から変わるかもしれないという希望的なムードが生まれている。
これも、組織の中のアントレプレナーシップの表われだと受け止めています。」

やりたいことがない人、やりたいことが多すぎる人

そのほか、多様な参加者からの質問に対しても、宮城さんのウェルビーイングに対する思いの詰まった言葉が語られました。

質問:「やりたいことがない」人には、どう対話したら良い?
宮城さん:こちら側が持っている「やりたいことがなければならない」の枠組みを外しておくことですね。価値観を押し付けないこと。自分なら、「やりたいことがわからないということは、ニュートラルに全てのことを選びうるということ。ラッキーじゃないか!」と言うかな。

質問:反対に、夢が壮大でやりたいことが多すぎる人へのアドバイスはありますか?
宮城さん:出島が大事ですね。会社をやめる必要もない。興味があることを勉強会でちょっと深堀りしてみたり、仲間と小さいプロジェクトをしてみたり、インターンシップで小さくリスクを取ってみたり。そういう一歩を踏み出してみると、景色は劇的に変わっていく。自分で実践に踏み込んでみることで、広がる繋がりや得られる価値は大きい。


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この記事を書いた人
Writer:山口有里 / SILメンバー
Editer:矢嶋あやか / SIL事務局

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