アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 《ムーラン・ルージュにて》 〜 アートの聖地巡礼(米国)
印象派の聖地ともいえる、シカゴ美術研究所所蔵作品の中で「もう一度みたい」作品を紹介している。
今日は、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901)の《ムーラン・ルージュにて》(1892/95)。
貴族の生まれでパリジャンだったロートレックの作品と、彼のモンマルトルでのナイトライフは、切り離せない。
この作品のタイトル《ムーラン・ルージュ》は、モンマルトルにある有名なナイトクラブの名前(*1)。バーといっていいのか、キャバレーといっていいのか「赤い風車」が目印(今でも店の屋根の上にある)。
そのムーラン・ルージュのパトロンでもあり常連だったロートレック。彼が描くパリのナイトライフの作品は、数あれど、このシカゴ美術研究所所蔵のこの《ムーラン・ルージュ》が一番好きだ。
印象派の画家達が、日常を切り取ったような構図で作品を描くのは、1888年にイーストマン社で発売されたカメラ「コダック」の存在があったのかもしれない。
当時のカメラは、今のようなカメラと違って、絵画のような構図で撮影するなんて不可能だったはず。でも、それが本当の意味で、印象派の画家達の「日常を切り取る感覚」とマッチしたと勝手に思う(この説に関しての参考文献は、今日のところはご勘弁を)。
ロートレックがコダックを持っていたかどうかは知らないけれども、この《ムーラン・ルージュ》の構図は、まさにカメラアングルだ。ただ、この作品は、このままでは売れないと思ったディーラーが「普通の絵画にみえるように」切り取って販売した、という逸話が残っている(現在は修復されているようだ)。
画面中央、我々に背を向けて座っているオレンジ色の髪の女性は、ジャンヌ・アヴリル。手前のライトに顔があたっている女性は、メイ・ミルトン。どちらもロートレックがよく描いた踊り子達だ。
そして、画面奥に歩いている男性2人に注目。
手前がロートレック、隣の背の高い男性がロートレックの従兄弟の1人ガブリエル・タピエ・ド・セレイラン。彼もまた、ロートレックの作品に登場する人物だ。
そういえば、ユアン・マクレガーとニコール・キッドマン主演の映画「ムーラン・ルージュ」(2001年)もあったな(見てないけど)。
華やかなパリのナイトライフを描いた作品のようだけれども、ロートレックがアルコール中毒で36歳の若さでこの世を去った事実を知ると、何ともいえなくなるのだ。
それでも、もう一度シカゴで見たい名品。
NOTE:
*参考文献及び、全ての画像は、シカゴ美術研究所の以下の公式サイトより引用。
*シカゴ美術研究所所蔵、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、《ムーランルージュにて》は、クリエイティブ・コモンズ・ゼロ(CC0)の作品。