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中長距離スパイクレビュー【2021年編】と数社の中長距離プロトスパイクの動向

東京五輪が2021年に延期となってからの1年間でアシックス、アディダス、ニューバランス、ブルックス、ホカといったブランドが新しい中厚底の中長距離用スパイクを発売した。

今回は自腹で20万円弱をかけ集めた(=どこからも一切提供を受けていない)以下の11足のスパイクのレビューやそれぞれのスパイクの購入方法+3社のプロトスパイク情報を以下に記載する。

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ナイキ
①ドラゴンフライ
②ドラゴンフライ(コピー品)
③エアズームヴィクトリー
④スパイクフラット
アディダス
⑤アバンチTYO
⑥アンビション
ニューバランス
⑦フューエルセルMD-X
⑧フューエルセルLD-X
アシックス
⑨メタスピードLD 0
ホカ
⑩シエロX LD
ブルックス
11ワイヤー7

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インスタに写真を載せたらいいねがたくさんついた...)

ナイキ:ドラゴンフライ(ZoomX Dragonfly)

2019年シーズンのDLやドーハ世界選手権でプロトタイプが確認され好記録に貢献。ミッドソールにZoomXを使用し、フルレングスのPebaxプレートとの組み合わせ。中長距離用の中厚底スパイクの先駆け的存在であるが、超軽量かつ高反発なのが魅力で800-10000mまでの広範囲の距離で使用できるのも特徴。最近では短距離の「脚に優しい練習用スパイク」としても認知されているので、人によっては1000-10000mまで使用できるのかもしれない。

【発売日】2020年4月
【定価】18,150円(税込)/ $150(税抜 / 米国)
【ピン】取替式ピン6本
【カラー】
2020年発売
ブラック(品番:CV0400-001)
ホワイト(品番:CV0400-100 / 2020年オリンピックカラー)
マンゴー(品番:CV0400-800)
グリーン(品番:CV0400-300 / 日本限定カラーとの噂)
2021年発売
ホワイト(品番:DJ5255-100 / 2021年オリンピックカラー)
ベアリーボルト(品番: CV0400-700)
ジムレッド(品番:DN4860-600:バウワーマンTC限定カラー)

その他カラー

2021年5月のオストラヴァゴールデンスパイク(チェコの国際陸上大会)の3000mでジョシュア・チェプテゲイが世界記録挑戦の際に使用したホワイト / ゴールデンカラー(一般発売は無し)

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【パフォーマンス点(50点満点)39点】
反発性:8点(ミッドソール:ZoomX)
軽量性:9点
クッション性:8点
耐久性:6点
フィット感:8点

反発性 / ライド感(8点)
これまでの薄底シューズや薄底スパイクではスピードを上げる加速の局面において(ペースが速くなる局面)蹴るという感覚によって“脚を使う”という場面があったが、このスパイクはこれまで以上の反発性とその軽さによってラストスパートもそうであるが、ピッチコントロールや脚を回す / 脚をさばくといった動作がよりスムーズにできるような1足であると感じた。

また、このスパイクはPebaxプレートがヴェイパーフライのカーボンプレートのようにスプーン状になって湾曲しており、中足部から前足部にかけての反り上がりが特徴。中厚底であるもののヴェイパーフライのスパイク版と言っても差し支えない。

このスパイクが普及してから、トラック種目の中間走でのランニングエコノミーが最も改善されたのか(より余力があるようになったのか)ラストスパートでこれまで以上にキレのあるスパートができる選手が増えているように感じる。そして、13分台に突入するような選手であれば5000mのラスト1周で60秒を切るということが珍しく無くなってきたように思える。

アルファフライ / エアズームヴィクトリーのような反発性では無いが、ヴェイパーフライのような“脚を回すような感覚”がしっくりくる1足であり、それでいてかなり軽いので800 / 1500m等の中距離種目でも愛用者が多いことにも納得である。

軽量性 / 重量(9点)
26.5cmで約125g(ピンをつけていない状態)
薄底スパイクならまだしも、ミッドソールが20mm弱の中厚底スパイクにしては驚異的な軽さ。他社の中厚底スパイクと比較しても最軽量のクラスにあるのは、そもそもZoomXというフォームがとても軽いからである。

一般的にはシューズが軽ければ軽いほどランニングエコノミーがより高くなると言われている。

クッション性(8点)
ヴェイパーフライやペガサスターボなどと同じくZoom X特有のフワッという感触があり、これまでのマトゥンボなどと違って明らかにクッション性が向上していることがわかる。このクッション性が一部の短距離選手にも好評であり、東京五輪では200mでトルコのラミル・グリエフが予選で着用していた。ドラゴンフライは後に登場するスパイクフラットよりやや薄いが、Zoom Xのクッション性はこの20mm弱の厚さでもポイントになっている。

耐久性(6点)
アッパー:超軽量ということもありレース中の接触などで破れやすく、アッパーが破れた写真をたまに見る。

ミッドソール:ZoomXは超軽量のフォームであるがゆえに耐久性は高くない(耐久性が高いフォームは重いのでいわゆるトレードオフの関係性)ミッドソールもレース中の接触で削れてしまうことがある。トラックレースはロードレースと違って接触するケースも多い。そもそもスパイクはこういった接触が多いこともあって消耗品というイメージではあるが、ドラゴンフライが品薄であるがゆえにこの耐久性の低さがネックとなっている。

フィット感(8点)
アッパー:部分によって編み込みを変えて通気性や耐久性を変化させている薄手のメッシュアッパー。圧迫感が少なく、多くの人の足に馴染みそう。

サイズ感:ジャストサイズでOKという感じであるが、人のよってはハーフサイズ下げても良い。私の場合は26.5cmを履いているが、26.0cmでも履ける。もし、3000mSCを走るとなったら裸足でスパイクを履くので26.0cmを履く。馴染みの良いアッパーなので多少の融通は効くと感じた。

【総括】
ドラゴンフライは中厚底スパイクの先駆け。超軽量かつ高反発なので「これまでの薄底スパイクはもう履いていない」という人も多いのではないだろうか。それぐらいゲームチェンジャー的な1足となった。新しいカラーが販売されるたびにすぐ売り切れてしまう人気商品であり、トラック種目であればだいたい対応できる万能スパイク。流通量が限られているということと(ナイキの品薄商法)それゆえに耐久性が高くないということがネックである。

【流通量 / 購入方法】
流通量:極めて少ない。2021年はベアリーボルトのカラーが11月に発売してから少しずつ安定した供給がされているが、それでも店頭にあれば1日から数日ですぐになくなってしまう。

初回発売の2020年春に購入した情報感度の高い人ならまだしも、当初はここまで品薄になるとは予想されていなかった。性能の高さもあって次第にその評判が高まり海外通販やBUYMA、フリマサイトなど定価以上のプレ値で購入せざるを得ない時期も。私は2021年のOCモデルから購入したので店頭で買えたが、それまでは社会現象とも呼べるほどにプレ値が高騰していた(一時期は定価の2-3倍まで高騰)

ドラゴンフライは現在でもナイキジャパンのオンラインでは限定アクセスでの販売だったりするが、ステップや量販店での取り扱いが増えてきたので2022年にはある程度流通しているだろう。


ドラゴンフライのコピー品

プレ値がつく商品ともなればコピー品が流通することもある。今回私が手にとったドラゴンフライのコピー品は、実際手にとってみると「コピー技術」がすごいと感じたので「それなりにコストがかかってそう」な感じ。いわゆる「スーパーコピーN級品」の1ランク下の「スーパーコピーS級品」といったところ。

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(どちらかが本物で、どちらかがコピー品)

【発売日】2021年
【販売価格】6,000-7,000円ぐらい
【ピン】取替式ピン6本
【カラー】ホワイト(2020年OC / 2021年OC)/ マンゴー / ベアリーボルト
をこれまでに確認。

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【パフォーマンス点(50点満点)31点】
反発性:6点
軽量性:5点
クッション性:6点
耐久性:7点
フィット感:7点

コピー品の特徴は以下。

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