『ヨブンのこと』2020.05.31回
木村花さんの報道を知ったとき「テラスハウスの視聴者じゃなくてよかった」と思った。
視聴者ではないという線引きができたことで、罪悪感を抱かずに済んでほっとしていた。
もちろんそんなことは意識しておらず、無意識のうちに頭の中ではぐらかされていた。
そんな僕は、朝井リョウのラジオ「ヨブンのこと」を聴いて打ちのめされている。
朝井リョウはテラスハウスのファンだ。
ラジオ内でテラスハウス講座を行ったこともある。
そんな彼が、木村花さんの報道を受けて数日後に独白を行ったのが今回の放送である。
僕たちは、誰にも迷惑をかけずに生きていくことはできない。ただ何をせず生きているだけでも周りになんらかの影響を与えているし、影響を受けている。
(木村花さんに自殺を決意させる)最後の一滴を注いだのはSNSでの誹謗中傷かもしれないが、それまでに溜まってきた何万滴の数滴には自分が含まれている。
デスマッチを観る原動力の先にあった己の中の黒い部分、人の死が見たい、という欲望の怖さをリアリティショーに見出せなかった。
生身の人間を、人の心をエンターテインメントにするコンテンツが小さな頃から好きであった自分への不信、恐怖。
そんなことを30分弱とつとつと語った。
木村花さんの死をうけ、いち視聴者として、いまとこれからを生きるひとりの人間として、考えたことをきちんと言葉にして表明した朝井リョウは誠実な人間だと思う。
思考は人生税。いつかは払うものだから、後回しにしているとツケが回ってくる。
木村花さんの死で思考を放棄していたツケが回ってきたと感じた。
僕は視聴者でないという線引きだけで、これからもはぐらかして生きていくところだった。
人生は長い、世界は広い。
そんな言葉に漠然と共感もしたけれど、人生は突然終わる可能性がある。
そして、その一滴は僕が注いでしまうのかもしれない。
1つ年下の会社の後輩が死んでしまった。
そんな大きな出来事を社報が出るまで知らなかった。
なんで死んでしまったのか聞ける人もいない。
20年弱通った蕎麦屋が店を畳んでしまったり、ここ数日でなんだか無力だと感じることが多い。
それでも、僕たちは周りの影響は与えてしまっている。思った方向に影響を与えられなくても、思わぬ方向に影響を与えてしまうかもしれない。
そんなことを考えると、出来る限り誠実に生きたいと思う。
知ろうとすることを、自分の頭で考えることを、放棄せずに生きていたい。
これまでヨブンのことを聴いてきて本当によかった。
これからの朝井リョウがそうするように、僕も誠実でいようと思う。
高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと | ニッポン放送 | 2020/05/31/日 | 22:30-23:00
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