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掌編小説

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掌編です だいたい、適当
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2017年10月の記事一覧

透明なガラスの檻の中で。

透明なガラスの檻の中に3年も暮らしている。肌はボロボロにハゲ上がり、体のあちこちが少し千切れている。それでも死なない自分に感動する。

何故、自分が生かされているのかわからない。もしも、自分が自分より高度な生き物手によって展覧されているとすれば、このような惨めな姿で生かしてはおかないだろう。手当もする様子もなければ、殺す気でもない。ただ、食事だけはたっぷりとくれる。それが何故だかわからない。

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モビー (掌編小説)

私は『モビー』と呼ばれている。しかし、私の名前は『モビー』ではない。

それが、友人達の間で付けられる、たわいのないあだ名だったらよかったのだが、残念ながら私には友人らしい友人は一人もいない。

では、誰が私の事を『モビー』と呼ぶのか?
それは無数の知人で達である。

私は、友達はいないが、人の誘いは断ることはない。飲み会もそうだし、ボランティア活動も、宗教の勧誘も、セールス活動も、消防団も全て受

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極めて曖昧な前世達 0

 私は、人の前世がなんとなくわかるような気がする。『わかる。』と言うにはいささか自身がない。そこが問題なのである。

 そもそも、人が前世を語るとき。「あなたの前世は侍だった。」やら「さぞ品のある貴族でした。」なんていうような切り口で語られるのが常であるが、私がわかるのはそういった前世の生まれや役職的な事ではないのである。

 そもそも、私は生まれ変わりを信じていない。前世生まれ変わりを信じていな

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