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掌編小説

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掌編です だいたい、適当
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2017年8月の記事一覧

1991 モスクワの向日葵

「起きろ!!戦車だ!戦車!!」

眠い目を擦りベットからムクッと起き上がった、同部屋の小林がブラウン管に齧りついていた。いつもの悪ふざけかと思ったがそうではない、テレビでは強い調子のロシア語で何かを叫び続け、画面いっぱいに戦車が映し出されていた。

「なにこれ?」

「知るか!!少なくとも試合どころじゃ無いのは確かだ!」

呆然とテレビを眺めていると、窓の外から暴徒が騒ぐような声と戦車

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おっぱいとホームラン王

家の近所の商店街にある雑居ビルの1階に「玉田」という無個性なラーメン屋がある。そこのラーメンは不味いくはないが、決して旨くない。だから当然客も少ない。その代わり何時間座っていても文句を言われないので居心地は良かった、メンマと煮卵をツマミにチビチビとサッポロの赤星を飲みながら、面白い店のオヤジと下らない会話をして、〆に塩チャーシュー麺を食べるのが日曜日の夕方の定番だった。

その日のテレビでは、

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はんぺん

私は、はんぺんだ。
そう、おでんの中でグツグツ煮込まれているダシが沁みたはんぺんだ。

面白い事なんてないし、ひたすら煮込まれ続けるだけだ。

誰かに美味しく食べられるかもしれないし、ひょっとしたら古くなって捨てられてしまうかもしれない。

グツグツ煮え滾る鍋の中で、ふと気がつくと、そこそこ可愛い女の子に生まれ変わっていた。理由はわからない。

わかる事と言えば、道端ですれ違った男が振り向く程では

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