マガジンのカバー画像

おいしいエッセイ

72
おいしいお店を紹介。平野紗季子さんに憧れた“パクリスペクト”な文章たち。
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

鶏を極めたらこうなる #三歩一

 「ラーメンのことをそばと呼ぶ店は美味しい」。この概念を形成するに至った鶏そばのお店がここ。ラーメン激戦区の高田馬場ではどんなお店を出しても大抵競合他社が存在していて、実際に鶏白湯ラーメンのお店が近くにある。そんな中でも大学時代に食べた味を覚えていたので久しぶりに訪問してみた。  馬場のロータリーから漏れ出る不穏な空気から路地へと逃げ込む。お店はすぐそこ。数年前に来た時よりも年季が入っている気がする。学生時代を過ごした街なので、鼻高々に歴史を語ってしまう。  濃厚鶏そば(

歴史が紡ぐ王道の関東風 #川豊 本店

 定期的にやってくるうなぎの欲求。振り返ると1カ月おきに摂取していることに気が付いた。前回は3/27に食べているので私の腹時計、というかうなぎ時計は結構正確だ。  平日だったので普段は行けない人気店に行ってみることにした。川豊は成田山の参道にある老舗。テレビにもよく出るこのお店は圧倒的な人気を誇って他を寄せ付けない。向かって左側で鰻を捌き、右側で串打ちから焼きまでの一連の流れを見ることができる。  とにかくでっかい樹から豪快に切り出したことを想像させる作業台を一人で贅沢に

ミシュラン出身親方の本気 #まぐろとシャリ

 銀座の鮨とかみから独立し、はっこくを瞬く間に人気店に育て上げた佐藤親方が監修した人気沸騰中のまぐろ丼。とかみは日本最大の鮪卸である「やま幸」が運営しているため、その系譜を継いでここもやま幸から鮪を仕入れています。ちなみに「はっこく」はONE OK ROCKのTAKAが「白黒はっきりつける」とメッセージを込めて名付けたことで有名です。  場所は渋谷駅から徒歩5分程度のビルの中。7席のL字カウンター1本の細長い作りのお店です。渋谷は寿司屋が少ないのであまり来ませんが、今回は美

美味しい油そばを考えてみた #油や 大手町ビル店

 学生時代を早稲田で過ごした私の根底には常に油そばが根を張っている。年を取るにつれ身体が油を受け付けなくなったと言いつつ、定期的に食べているのがその証拠。久しぶりに湧き上がる油への欲求を感じたので、職場近くのお店を新規開拓してみる。  大手町のパリッとした空気感から、あの学生街を思い出させるきちっと詰まったタイトな距離感で構成された店内。「丼を上げて下さる貴方は神様です。」は油そば界のお決まり。店の回転率は客の協力あってこそ。  混ぜて、食べて、途中で酢とラー油を混ぜるの

お昼休みのマレーシア気分 #ゼロツー ナシカンダール トーキョー

 少し早いお昼休みを取り、大手町のビルから颯爽と歩き出す。人はまだまばら。イメージ通りの春を体現したような快晴と陽気。足取り軽やかに、今年2月にオープンしたばかりのマレーシア料理へと向かう。    そもそもナシカンダールって何だ?と言えば、ごはんの上にカレーや惣菜を乗せたワンプレート料理らしい。ここは嬉しいビュッフェ形式で、ベースを決めた後に惣菜3種類とカレー2種類を選べる。  ベースをラム(羊)、カレーをダック(鴨)と海老とイカにしたため、動物性たんぱく質を限界まで盛り込

韓国のあの味を思い出す #ヌナの家

 無性にポッサム(茹でた豚肉を他の具材とサンチュなどで巻いて食べる料理)が食べたくなってしまった。ソウル大学のヒョン(お兄さん)に韓国で奢ってもらったあの味が忘れられず、日本でもあの感動を。。と思っていたが理想の味を見つけるのは難しい。そんな矢先、職場から程近い神田の地下1階で私のポッサム探訪は一歩進んだ。新大久保のような流行りに左右されやすい繁華街より、離れた場所で粛々と営業を続けるお店の方が美味しい料理に出会える確率が高い。お腹を空かせた同僚4人で初訪問。  友人が肉の

おまかせ全部レビュー #みこ寿司

 最近では親方とオーナーの異なる寿司屋が増えてきました。こちらもそのうちの1つ。CXOバンクというIT企業のCEOが"趣味で"始めたという完全予約制・住所非公開のお店です。これからも新橋を中心に出店計画をしているそうで、つい先日にも「みこ酒場」をオープンさせ、今最も勢いのあるお店と言えるでしょう。幸運なことにオーナーの中村さんとご一緒することができ、貴重な話を伺いました。  冒頭にも述べた通り中村さんには本業があり、"趣味で"やっていると本人も仰っていました。とは言え運営に