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読書感想文『ショパンゾンビ・コンテスタント』

町屋良平さんの本を初めて読んだ。
これは、いつものように特に目当ての本があるでも無く、なんとなく読みたい本と出会えたら何か買おうと本屋に行った時に買った本だ。

買った時は、ただタイトルに惹かれたんだった記憶。
タイトルだけでわかる、ピアノが絶対に作中に出て来ることが。
あぁ、これはとりあえず、買っとくしかないな。
こんな感じだった。


内容から、少し外れた感想として、書き方が独特だった。
ひらがなの多さ、鉤括弧の中にセリフが全て入らないところ。

これは読み終えた後に、あぁ、この曖昧さがいいのかもしれないな。と思った。


音大に入ったもののピアノを辞め、小説を書く「ぼく」
同じく音大に入り、ショパンコンテストを目指す友達の「源元」
僕が恋をする源元の彼女の「潮里」
お金持ちの「寺田くん」とそも婚約者の「チカ」

ピアノを辞めて小説を書く主人公、自分と被りそうで僕はすごく感情移入したしまうんじゃないかと思っていたのに、最後までほぼ感情移入しなかった。

入り込めなかった、とかではなく、自分は景色の一部になったかのように主人公たちを見ていた。
こういう感じで読むのは、あまり無いので不思議な感覚だけど、読了感は気持ちが良かった。


この本を読んで良かったことは、こんな表現方法もあるんだなと知れたこと。

「ぼく」は小説の書き出しを、なかなか書き上げられない。
「ぼく」の書く小説と、「ぼく」のリアルがとても曖昧で、読みながら「あれ、ここはリアルじゃ無いのか」と何度も思った。

この曖昧な感じ、ゆるい感じ、鉤括弧の使い方、ひらがなの多さ、全体的にふわふわとしていて、大学生くらいの年齢にある独特なゆるさや、熱くなりすぎない感じが絶妙にリアルに感じられた。

寺田くんが横断歩道の先にいたチカに向かって赤信号を車をぬって駆けていき抱擁するシーン、まさか主人公じゃ無いやつが一番の盛り上がるシーンを持っていくとは・・・。

あとは、ダン・タイ・ソンが作中によく出てくるので、引用文献も読みたくなってしまった。
そして、ダン・タイ・ソンのピアノを聴いてしまった。


僕って、好きなことへの興味の持ち方がおかしいのか、ショパンコンクールとか目指してるとこういう事に詳しくなるのか、そもそも人それぞれなのかわからないけれど、有名なピアニストや弟子とか気にするものなのかな?とか思ってた。
だって、僕はあまり興味が無いから。

ふわっと、思い出したのは、前に僕に指導してくれていた先生のこと。
有名?な先生だったのに僕が音大を目指さないことを咎めたりはしなかった。
ただ、厳しかったのは事実。
あの時、僕がピアノだけに絞っていたら僕は「ぼく」側よりも「原元」側だったのか。
とか、考えた。

ショパコンのゲネプロを友達の為にさぼって、舞台で転けて、最初からミスタッチ。
僕がやりかねなくて苦笑い。

でも、割と僕はこの辺のシーンが好きだ。

青春っぽいなあ、なんて思いながら。
あー、これ、青春小説なのか。


うん、たかいね、空。

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