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豚汁事件

月に1度、炊き出しのお手伝いに行く。炊き出しのお手伝いは、以前からとてもやってみたいことのひとつであった。というのも、何か人の役に立つことをして、神様から褒めれたい、幸運をいただきたいと邪推な気持ちを持っているからだ。徳を積むとはまた少し違う、そう私は幸せになりたいのだ。といっても、自炊をまったくしないおひとり様の私は、料理が下手だ。若い頃は料理研究家になりたいくらい凝っていた頃もあったが、ここ数年まったく料理をしない生活に慣れ、世の中もお惣菜天国になり、家族がいなければ料理をしなくてもりっぱに食べていけるようになった。そもそも、一人分作るには労力もいるし、食材は無駄になりやすく、ましてや自分が作ったものはそれほど食べたくもないし、一度つくれば数回は同じものを食べ続けなければいけなくなる。などなどくどいほどの言い訳を言えるのが、料理をしないことである。だから、いい年をしても料理が下手である。
そんな自分が、調理ボランテイアをしようとするのだから、若干無理があっても仕方がない。が、最初から料理が下手なので、皿洗いを率先してやります。本当に何もできないし、知らないので教えてください、と高らかに宣言した。ボランテイアというのは、報酬が発生するわけではないので、できなければいけないというわけでもないらしく、誰もこれこれこうしてくださいと指示をしない。ので、何気なく見ながら覚えようと思った。年配の人に教えてくださいと伝えたところ、スマホで見て覚えなさいとけんもほろろに言われたので、まあ仕方がないと思いやめた。
今日は、人参のいちょう切りに挑戦、前回、切っていた人が、人参は火が通りにくいからと何度も言っていたので、なるべくうすく切ろうと思った。こういうところは器用なので、いくらでもうすく切ることはできる。そうしたら、薄すぎると怒られた。3ミリくらいは厚みがないと豚汁なんだから噛みごごちがわるいでしょ!と。へえへえ、そういうものか。家で食べる人参ものは、カレーやシチュー以外はわりと薄めに火が通りやすく切れていたものだから、そういうものだと思ったのが失敗。なんだかなあ。そこから、自炊しないの?豚汁つくらないの?といろいろ言われて、辟易した。豚汁?ひとり暮らしのおばちゃんはつくりませんね。そもそも、豚肉をあまり食べないビーガン気質の私は、わりと生野菜中心の生活。たとえ作ったとしても、それを3日間くらい食べ続けるのはしんどいし。食べたくならないの?と訊かれても、食べたくなったらお惣菜として温めるだけのもの買うかなとふと思った。そんなものですよ。
なんだかぐっと凹みました。豚汁の一つもまともにつくれないいい年をした人間は、欠陥人間なんだろうなと思いながら。でも、これだけコンビニ、デパ地下、スーパーのお惣菜がある今の時代、そんな人達がこれから増えていくのだろうと思う。


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