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ブックストアデイズ ー洋書を売っていたあの頃ー

私が、本屋でバイトを始めた時は、ちゃんと一角に洋書売場があって、ものすごい数のペーパーバックが並んでいて、さらに専門書もあった。ヴォーグやコスモポリタンやグッドハウスキーピングなどもここぞとばかり並んでいて、洋書売場にいるとまるでアメリカにいるみたいだった。

だから、バイトをお願いしに行った時、ちょうど洋書売場に空きがあったのは今から考えると本当にラッキーなことだった。毎日、横浜に住む外人さんがペーパーバックを買いにきたり、当時、大ブームだった日本語学習書を買いにきてくれたものだ。さらに日本人もバカ高い値段のついた洋書や洋雑誌をちゃんちゃん買ってくれた。

そう、世の中にはまだインターネットも密林もなかった頃、人々は洋書で世界を見つめていた。忙しかったなあ。でも、楽しかった。英語を使う職業、そして本が大好きだった私には、天職だったなあ。もう一度あの頃に戻れたたら、あんなにぶつぶつ文句も言わずに毎日通しでも長時間労働でも何でもやる。それくらい、楽しくて大切な仕事だった。そうこうしているうちに洋書の販売がネットに移り、洋書の直輸入も割り合わなくなり、洋書売場自体が2~3本の棚で収まるようになってしまった。

今、本屋で割高な洋書を買われる人は、わずかだろう。サブリーダー的なものは、中身を少し確認したいかなと思うが、まるまる洋書なら、やはり。。となるかなと思う。本を読む人が少なくなった今の日本で、洋書売場はもう。。と言いきれない自分が悲しいなあ。

学生の頃、新宿で購入したオックスフォード大学の『Getting on』(確かこんなタイトルだったかと)テキストの中のアメリカ(と信じていたがおそらく英国かもしれない。。)は、憧れだった。普通の図書館で働いている青年が夜になると下宿のソファでテレビを観ながら、ガールフレンドがやってくるのを待つ、みたいな設定が書かれていて、そのテキストを新宿の一等地で買うだけで、私はそこにはいない誰かになれたような気がしたものだ。

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