見出し画像

和歌山県すさみ町・武蔵野美術大学、連携協定締結イベントリポート!ーその1

2023年2月5日、和歌山県すさみ町と武蔵野美術大学がこの冬、連携協定を結んだことを記念して、すさみ町の保育園をリノベーションしたコミュニティ施設“イコラ”にて、オンライン併催での締結記念トークイベントが催されました。
 
昨秋行われた、すさみ町・熱中学園・武蔵野美術大学による産官学プロジェクト。社会に役立つデザインの研究と実践について探究するソーシャルクリエイティブ研究所を擁する武蔵野美術大学。その学部生と社会人院生13人が現地に入ってから約半年。地域のデザインをテーマに各々独自の興味関心と問題意識を持ち寄りながら、すさみのウェルカムマインドと大自然に感銘を受けたメンバーは、授業プログラムとして終了しても自主的に現地へ通い続けました。都市と地域に生まれた繋がりを大事に育てたい、そんな想いからすさみ町と武蔵野美術大学の連携協定が生まれただけでなく、社会人院生を中心とした10名による一般社団法人“すさみの美術大学”が2023年1月19日に誕生しました
 
これを記念して、すさみ町の岩田勉町長、武蔵野美術大学の山崎和彦教授、すさみの美術大学の石井萌代表理事が集まり行われたトークイベント。当日は岩田町長の話に始まり、受験期間ゆえにビデオ出演となった武蔵野美術大学長澤学長のメッセージ、石井代表理事のプレゼンテーションと続き、最後にクロストークが交わされました。その後、メンバーの妄想を可視化したポスターセッションが開かれ、参集いただいた町役場や観光協会の方々と「こんな未来はおもしろい」「これは具体的にこうすればできそう」といった積極的な対話がなされました。ここからは、当日も参加し、すさみの美術大学を有志と立ち上げた岩崎の等身大リポートをお送りします。


芽が出る種には、理由がある。

僕たちが一般社団法人“すさみの美術大学”を立ち上げることになったのは、学び舎でもある武蔵野美術大学とすさみ町による産学プロジェクトがきっかけ。正直、ご縁という名の種は世の中あちこちで蒔かれるものですが、芽を出すものってそう多くはありません。でもこの種は、違った。関わったみんなが大事に育てたいという気持ちを持っていました。そんな想いが積み重なって、両者のみんながよりこれから密接に協力し合っていこうと、この冬新たに結ぶことになったのが武蔵野美術大学とすさみ町の連携協定。そこで、これら3者が集まって2/5(日)にすさみ町の保育園リノベ施設イコラにて、締結記念のトークイベントが開かれました。
 
「和歌山県すさみ町は人口約3,600人、高齢化率50%に近い過疎地。そんな町に関東の美術大学の学生が何かやろう、何かしたいと来てくれて、住民も温かく迎えてくれたことに感謝。そんな学生たちが昨秋からもう何度も来てくれている。これからより手を結んで一緒に未来づくりをしてくれることを心から楽しみにしている」、と口火を切ってくれたのはすさみ町の岩田町長。思い出します、プロジェクト最初のオリエンで見たカブに乗る町長の姿を。いや、勇姿といってもいいかもしれません。社会や人間や世界ってこのままでいいんだっけ?と考えながら都心の大学に通う僕らには、どこかウルグアイのムヒカ大統領と重なって見えたかもしれない。オンボロのワーゲンに乗る彼はこう言っています。「貧乏な人とは少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲望があり、いくらあっても満足しない人のことだ」、と。僕も、心からそう思います。

町長車に乗る町長の勇姿

心の音が聞こえますか?

武蔵野美術大学の長澤学長が、ビデオメッセージで重ねます。「武蔵美の学生は、大学に入るときも周囲を説得して“芸術家になる、デザイナーになる、クリエイティブに生きる”という宣言をしている。しっかりした固い意志と柔らかい頭脳がないとこの決断はなかなかできません。意志の”意“という文字は、”音“と”心“という文字からできているんです。私たちはさまざまな作品や課題をつくる試練を課しながら、それぞれの心の中で鳴っている音を聞かせる、そういう教育をしています。すさみ町は、海に囲まれた豊かな土地で、過疎化をはじめ課題もたくさんある中、学生がそこへ行って自分と向き合うことで『心の音』を聞ける場所なのだろうと考えています」。学長の言う通りで、僕らはすさみに来たことで、自分の心の音を聞いて、意志を持ちました。都会が失ってしまった幸せが地域社会にいっぱいあって、人としてその幸せから学ぶことがいっぱいあったんです。
 
すさみの美術大学(=通称すさび)の代表理事、石井もえちゃんがその意志を語ります。「何でもあるけどなぜかお金が溶けるようになくなり、好きなことしてるのになぜか疲れている都会。私たちはすさみに来て、色濃く美しい豊かな自然に元気をもらい、何もないから手作りする姿勢に創造力をもらい、互助の精神から生まれるおせっかいに愛情をもらいました。そんな素敵なすさみがこれからも都会人の心のふるさとになるよう、創造的な学びの場になるよう継続的に関わり続けながら、この地の魅力を伝えていきたい」。心の音は聞かなかったフリができないし、昔の人が天啓とか言うのもそういうことかもしれません。


クリエイティブ&リーダーシップ。

元漁師の町長は、気さくな学生たちのグランパでもあります。写真に映るときは、キュンポーズだけでなくギャルピースもできます。「孫のような世代で最初はどう付き合えばわからなかったが、可愛くてしゃあなくなった。こうして外から来た人に教えてもらうことがあるし、自分たちの伝統文化を大切にすることも大事。それを重ね合わせられる環境づくりをしながら、自分事としてすさみに携わってくれる皆さんと繋がり続けていきたい。学生のみんなもいろいろと提案してくれましたが、どれも“アレが足らん、コレが足らん”という提案やなかった。ただ、みんなすさみの“人がいい”、と言うてくれる。だからこそ我々もそこに磨きをかけて、価値づくりを一緒にしていけたらと思ってます。そうそう、だからこそ大事なのはね、息切れしないこと。気楽に、長くお付き合いしましょう」。
 
僕らの専攻は、武蔵野美術大学造形構想研究科、クリエイティブリーダーシップコース。何もないから何でも作ってしまう大工の観光協会会長に、先陣切って町のために動きまくり新たなことにチャレンジしまくる漁師の町長。クリエイティブもリーダーシップも、けして教室にはない学びを授かっています。授かったものは次に渡していかなければならない。これもすさみから学んだことで、おせっかいって恩送りなんです。もらった恩はその人に返せなければ、誰かに送ればいい。その気持ちは、贈る、なんです。PLやBSも大切ですがそのために人間、生きてるわけではありません。むさび、すさみ、すさびの未来に向けた取り組みが、ここから始まります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?