Wio BG770Aの研究3〜仕様書から読み解く通信・マイコン周りの特徴〜
Wio BG770Aの研究シリーズでは、Seeed社のLTE-M対応IoT開発ボードWio BG770Aについて深堀りしてきます。3回目の本記事では、Wio BG770Aの仕様書から、通信周りとマイコン周りの特徴を読み解きます。
■ NTTドコモ回線とKDDI回線に対応している
Wio BG770AのLTE-M通信(LTE Cat.M1)キャリアとして、NTTドコモとKDDIが選択できるようです。現場の通信強度に応じて2つの選択肢中から選ぶことができます。
SORACOM IoT SIMの中から選択する場合、plan-D(NTTドコモ)、plan-KM1(KDDI)、planX3(NTTドコモ)を選択できるのではないかと予想します。これについては別途深堀りします。
SORACOM IoTストアの記載を見ると下記に対応しています。
・SORACOM IoT SIM:plan01s, plan01s-LDV, planX3
・特定地域向け IoT SIM:plan-D, plan-KM1
■ FeRAMが搭載されており電源OFF時も値保持できる
電源の供給がなくても記憶を保持できるメモリーとして、FeRAMやEEPROMがありますが、Wio BG770AはFeRAMが64KiB搭載されています。FeRAMはEEPROMよりも高速書換え、高書換え耐性といった特徴があります。
ArduinoUnoマイコンは、EEPROMが1KiB搭載されていましたが、Wio BG770AはFeRAMが64KiBです。例えば、1時間毎にセンサーの値を取得するIoTシステムにおいて、電池消費量削減を目的に、1時間毎のデータをFeRAMに24時間分保存し、1日1回、24時間分のデータを一気に送る、という運用もできそうです。
■ アンテナが小さい
付属アンテナは、棒型のアンテナではなく、平面型のPCBアンテナが付属されており、非常に小さいです。
Wio LTE M1/NB1(BG96)は棒型だったのですが、防水ケース内にアンテナ収めようとするとWioの基板に対して一回り大きなサイズのケースを選ぶ必要がありました。平面型であれば、簡単に防水ケース内に収めることができます。
アンテナに関し詳しくありませんが、電波受信度合いは、棒タイプと同程度なのでしょうか。
■ マイコン機能+Groveシールド機能+通信機能+電源制御モジュール機能が1つに
上図上段は、Arduinoマイコンで、Groveケーブルで接続したセンサーの値をLTE-M通信させる電池駆動IoTデバイスを作成する場合のボード例です。この構成の場合、4つのボードが必要でした。
一方、Wio BG770Aの場合、Grove端子の数や待機電力低減レベルの差はあるものの、なんと、4つの機能を1つのボードで実現できます。ボード間の配線を考える必要もありませんし、何よりシンプルです。
■ だからこそ、小さいケースに収めることができる
上図は、タカチの開閉式防水樹脂ケースBCAPシリーズの抜粋です。
屋外IoTデバイスの最小構成は、電池(例えば単3電池x3本)+Wio BG770A+Grove接続センサーだと考えますが、Wio BG770Aのアンテナが平板タイプで小さいこともあり、この構成であれば、BCAPシリーズの一番小さいサイズのケース(BCAP091207G)に収まりそうです。現時点では、このケースで屋外IoTデバイスを作成することを考えています。
■ まとめ
本記事では、Wio BG770Aの仕様書から、通信とマイコン周りの特徴を紐解きました。以下のようなポイントが挙げられます。
柔軟な通信キャリア対応:NTTドコモとKDDIのLTE-M回線に対応し、現場の通信環境に合わせた選択が可能。
FeRAM搭載:電源OFF時でも64KiBデータ保持が可能。高耐久・高速書換えが特長。
小型アンテナ:平面型のアンテナのため、ケース内での実装が容易。
4つの機能が1枚のボードに集約:マイコン機能、Groveシールド機能、通信機能、電源制御機能が1枚のボードに集約されており、非常にシンプル。
小型ケースへの収まり:小型アンテナや、複数機能が1枚のボードに集約されているため、小型ケースに収めることが可能。
前回のnoteに書いた電源周りの特徴に加え、これらの特徴により、Wio BG770Aは屋外IoTデバイスの設計において、非常に優れた選択肢であると感じました。次回はサンプルコードに着目し、深堀りしていきます。
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■ 参考
・Wio 770Aの研究シリーズの各記事を、マガジンにまとめています。
■ 更新履歴
2024/12/06 対応SIMの記載を修正