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【IoT】SORACOMのIoT SIMを比較検討して見えてきた使い分け指針

SORACOMの「グローバル向けIoT SIM」と「日本向けIoT SIM」を比較検討し、それらの使い分け指針を整理しました。


背景と目的

SORACOM Air for セルラーで使用されるIoT SIMは、「グローバル向けIoT SIM」と「日本向けIoT SIM」の2つのグループに分かれています。これまで「日本でしか使わない」という理由で日本向けIoT SIMを選んでいたのですが、日本で使用されているSORACOMのIoT SIMのうち、半分以上(?)はグローバル向けIoT SIMだということを聞きました。今までグローバル向けIoT SIMは、ノーマークでした。。なぜグローバル向けIoT SIM使われるのか、そのメリットは何か、気になってきました。そこで、日本国内でIoT SIMを使用するという前提条件で、比較検討してみました。検討結果と使い分け指針を共有します。

詳細

1. まずIoT SIMの全体像を把握する

SORACOM Air for セルラーのグローバル向けIoT SIMは、「SORACOM IoT SIM」という名称で販売されており、記事執筆時点で以下のプランがあります。
・plan01s
・plan01s – Low Data Volume(LDV)
・planX3 X3-5MB
・planP1

一方、SORACOM Air for セルラーの日本向けIoT SIMは、「特定地域向け IoT SIM」という名称で販売されており、24/1/16時点で以下のプランがあります。
・plan-D D-300MB
・plan-K2 K2-300MB
・plan-DU
・plan-KM1
・plan-K

正直、プランの名称決めルールや、各プランの特徴が全くわからないですね。。01って何?その後の小文字sの意味は?X3って?P1って???疑問だらけ。

2. IoT SIMの対応通信方式と対応デバイスは?

まず、各IoT SIMがどのキャリアやどの通信方式に対応しているのか、また自作IoTシステムを構築する上でよく使用されるデバイスが、どのIoT SIMに対応しているのか整理しました。下図をご覧ください。

セルラー通信において、電池駆動型IoTデバイスでよく使用される通信方式はLTE-Mですが、LTE-Mに対応しているプランは、plan01s, plan01LDV, planX3, plan-D, plan-KM1です。

また、私はよくLTE-M Shield for Arduinoを用いますが、このデバイスに対応しているプランは、planX3, plan-D, plan-KM1です。これまでplan-Dとplan-KM1しか使ったことがなく、planX3はどのような特徴があるのか気になります。

さらに、SORACOM LTE-M Button(以下、ボタン)には、日本向けの他にもグローバル版があることを最近知ったのですが、日本版ボタンにはplan-KM1が採用され、グローバル版ボタンにはplan01s LDVが採用されています。

このように一覧にすると、「汎用通信開発ボードを用いた電池駆動型自作IoTデバイスで、小容量のデータを通信する」という前提条件下において、対応デバイスや対応通信方式の観点から、planP1, plan-K2, plan-DU, plan-Kは選択肢に入りにくいため、残りの、plan01s, plan01s LDV,  planX3-5MB, plan-D-300MB, plan-KM1の5つのSIMに絞り、料金体系を比較します。

3. IoT SIMの料金比較表

利用頻度が高そうな5つIoT SIMに絞り、料金体系を比較してみました。

カバレッジはカバーしている範囲のこと指すようで、(日本を含む)グローバルと日本とに分かれます。キャリアは日本における通信キャリアを書いています。バンドルはそのSIMプランの基本料金に含まれる通信量のことです。利用開始待ち列には、SIMを長期間使用しない場合の料金を記載しています。通信量列には、100KBあたりの料金に統一して記載しました。課金自体は1KBごとに課金されるプランや100KBごとに課金されるプランがあるため、詳細は公式ドキュメントを参照ください。ステータス変更手数料は、使用中→利用開始待ちに変更する際に必要となる手数料です。グローバル向けIoT SIMの料金はすべてUSDですが、1USD=140円で日本円に換算しています。

こうして比較すると、グローバル向けIoT SIMはすべて利用開始待ち料金が0円であり、SIMを購入から利用開始まで時間がかかる場合や、1年のうち約半年は使用しないというような用途には適していると感じました。

また、プランによって、通信量あたりの通信料が100倍オーダーで異なるため、月額通信量を見極めたうえでのプラン選定も重要だと感じました。

4. IoT SIMの料金比較グラフ

IoT SIMの料金体系を表にまとめましたが、通信量あたりの通信料を把握すべく、グラフにしました。

横軸は通信量[KB/月]で、縦軸は月額料金[円/月]です。月額料金は、基本料金+通信料で計算しています。また、横軸縦軸ともに対数表示ですのでご注意ください。横軸の一番右の目盛りが1,000,000KBであり、1GBです。

驚いたのはplan-KM1で、おおよそ1,000KB=1MBまでで使う分には良いですが、10MB,100MB,1GBオーダーになると、月額料金が恐ろしいほど高くなっています。以前、電池耐久試験のため高頻度で通信させたら、びっくりする金額の請求になったことがあります。。注意してください。数100MB以上使う想定であれば300MBがバンドルされているプランが安心ですね。

5. LTE-M Shield for Arduinoで使うIoT SIMはどれがいいか?

公式ドキュメントによると、LTE-M Shield for Arduinoは、記事執筆時点で、plan-X3, plan-D, plan-KM1に対応しています。これら3つのプランで料金を比較してみました。

月額料金で比較すると、
・〜50KB→plan-KM1
・50KB〜11MB→plan-X3
・11MB〜→plan-D 300MB
が良さそうです。

また、plan-Dとplan-KM1の比較では
・〜400KB→plan-KM1
・400KB〜→plan-D
が良さそうです。

例えば、UDP送信で現場データを1時間に1回、つまり 1日24回送信するIoTデバイスを想定すると、1回あたりの通信量がおおよそ500Bと仮定して、
500B/回 * 24回/日 * 30日= 360KB/月
plan-KM1の方が若干安いですが、plan-Dとそんなにも変わらないですね。ただ、plan-KM1は通信量が増えると極端に高くなるので、plan-Dのほうが安心だと思います。

6. M5Stack用 3G 拡張ボードで使うIoT SIMはどれがいいか?

公式ドキュメントによると、M5Stack用 3G 拡張ボードは、記事執筆時点で、plan01s,plan01s LDV, plan-Dに対応しています。これら3つのプランで料金を比較してみました。


月額料金で比較すると、
・〜4MB→plan01s LDV
・4MB〜→plan-D  300MB
が良さそうです。

これまで、plan-Dを使ってきたのですが、plan01s LDVも魅力的だと感じました。

7. SORACOM LTE-M Buttonの日本版とグローバル版どちらがいいか?

公式ドキュメントによると、SORACOM LTE-M Buttonの日本版はplan-KM1、グローバル版はplan01s LDVが採用されています。この2つのプランで料金を比較してみました。

月額料金で比較するとグローバル版で採用されているplan01s LDVの方が安いですね。月500KB以下であれば、月100円以下で運用できます!!!

まとめと今後の課題

これまで、グローバル版のIoT SIMを日本で使うという発想がなかったのですが、グローバル版のIoT SIMの方が月額料金が安くなる場合あることがわかりました。また、利用開始待ちというステータスに変更すると、基本料金を0円/月にできることもメリットだと感じました。以前HTTPではなくUDP送信することで通信量が削減される記事を書きましたが、通信量削減も重要ですし、試作段階で通信量を見積もり、適切なIoT SIMを選定することも重要だと感じました。

いやー調べてみて大変勉強になりました。

今後は、グローバル版のIoT SIMにも手を出すとともに、グローバル版のSORACOM LTE-M Buttonが気になってきたので、これも深堀りしていきます。

なお、本記事で整理した比較表は記事執筆時点での情報です。誤記の可能性もありますので、公式ドキュメントを合わせてご参照ください。

参考

・LTE-M Shield for ArduinoでUDP送信し通信量を削減する方法について書きました。今回のIoT SIM比較を通し、通信量削減の重要性に改めて気づきました。

・グローバル版IoT SIM(=SORACOM IoT SIM )の利用料金

・日本版IoT SIM(=特定地域向け IoT SIM )の利用料金

・IoT SIM のLTE Cat.M1 接続可否

・IoT SIM のステータスの意味


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