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旧ブログ再掲 音楽感想 怪物たちのために

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Jポップから実験音楽まで、というか大抵そのふたつのジャンルの音楽の感想を書いています 以前に書いていたブログの記事の再掲シリーズです
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記事一覧

Horse Lords 『Horse Lords』 『Hidden Cities』 『Interventions』 (旧ブログより転載 2017.2.11)

まずは映像を見てくれ 画面中央で踊る、痛Tを着たオタクの圧倒的な存在感に注目して欲しい。 酩酊したような動きを基本にしつつ、腕や首の振りを交えてグルーヴし続けている。 彼はもちろんメンバーでもなんでもない。 ただ、それによって映像が熱を帯びたものになっていることが重要だ。 というわけでボルチモアの白熱する永久機関、Horse Lords ホース・ローズ。 Andrew Bernstein - saxophone,percussion Max Eilbacher - ba

Bill Orcutt 『A History Of Every One』 『A New Way To Pay Old Debts』 『How The Thing Sings』 (旧ブログより転載 2015.12.11&2016.1.17)

オーカットのギターにはこうしたいまどきの前衛/即興ギタリストとしては唯一無二の個性がある。それはブルースであるということ。 こういう領域でのギター演奏は、デレク・ベイリーの昔から、調とかリズム、メロディ、意味からいかに距離を置いていくか?という部分があるんだけど、この人の演奏はそういう問題設定が一周したあとのところにあるというか。 もはや、意味とか感情とかを、その場ですべて表現していくことに対して、躊躇いも怖れもないんだよね。それは即興演奏の初学者が手探りにそういうことをや

Hubble 『Hubble Drums』 (旧ブログより転載 2013.12.16)

Northern Spyから。 以前にはZsにも在籍していたギタリストBen Greenberg ベン・グリーンバーグのソロ・プロジェクト。 アルバムは20分のトラックを10分のトラックで挟んだ3曲40分の構成で、何をやっているかというとギターを中心にひたすら引き絞られたミニマルミュージック。11年作。 ファーストトラックの"Nude Ghost"のみゲストでMatt Papich、Joe Williams、Jon Lelandとクレジットにあるけど、他2曲はギターだけで作

Yes Deer 『Gross』 The Flying Luttenbachers 『Shattered Dimension』 My Disco 『Environment』 (旧ブログより転載 2019.3.27)

Yes Deer 『Gross』 ジャズトリオYes Deer (はい、鹿。というバンド名。映画のグリーンブックでヴィゴ・モーテンセンがDearとDeerを間違えてマハーシャラ・アリに指摘されていたのを思い出す)、昨年の半ばに出ていた新作。 相変わらず5曲35分というタイトな尺にしてハチャメチャブチ狂った内容で笑えます。 ギターがわりとストレートな歪のトーンで演奏するようにはなっているんだけど、そのことがなんの救いにもなっていないのが凄い(酷い)。 君がいればゲームはいらない

Jim Sauter & Kid Millions 『Safe & Sane』 Oavette 『Oavette』 点滅 『we all die anyway』 (旧ブログより転載 2019.4.11)

Jim Sauter & Kid Millions 『Safe & Sane』 ボルビトマグースの最狂ノイズサックス Jim Sauter ジム・ソウターとオネイダのマラソンドラマー Kid Millions キッド・ミリオンズの即興コンビの4作?め。2019年最新作。 本作は32分と11分の2トラックのみにて構成されるというシンプル極まりない仕様。 しかしながらこれが凄まじく、長い尺を使って天井知らずに狂気を爆発させるサックスに鳥肌が立つ。 最初の一分から間合いの読み合いも

Siraph 『past & current』 MOROHA 『MOROHA IV』 (旧ブログより転載 2019.06.02)

Siraph 『past & current』 は、こうしてリリースのライブにも行ってきたのだが… 今回のアルバムはライブ限定販売のシングルシリーズをまとめたものなのだが、そのシリーズはアイディアをパッパッと早いペースでまとめて出すような感じだったらしく、そう思って聴くと確かにミニアルバムと曲の感触が違う。 もっとロック的というか、音楽としてシンプルな響きに聴こえる。 確かにリズムやサウンドの組成は奇妙で複雑なところが多いけど、ミニアルバムでの、そのレイヤーが神経症的に重な

Sunn O))) 『Life Metal』 Machinefabriek 『With Voices』 Klaus Lang & Golden Fur 『Beissel』 (旧ブログより転載 2019.05.06)

Sunn O))) 『Life Metal』 みんな大好きSunn O))) サンの太陽がサンサンな最新作。 デスメタルに対してのライフメタルってことらしいのだが……。 出たばっかの最新作に対してこう言うとメッチャわざとらしいけど、今までの彼らの作品の中で一番好きですねこれ。 単純に、とにかくサウンドがいい。 スティーヴ・アルビニはオーガニックな方法論で最良の録音をするエンジニアだけど、そのやり方ってナマの楽器を用いたものであればどんな音楽にもフィットしちゃうなあってのを改め

Lee Ranaldo 『Ambient Loop For Vancouver』 (旧ブログより転載 2015.12.21)

もう何万年も会っていないような、そんな気がするよ。 違うか。 この話をどう始めたらいいいのかな。 手紙は書きだしが一番難しいなんて言うけど、15年前はそんなこと考えもしなかった。手紙が理由が必要なものになってしまったということなのか、あるいはそうなったのは僕たちの関係のほうか?とにかく、思いついたことから書いていくから、少しの間辛抱してほしい。 先日のことがあってから、何度か空港のゲートに足を運んだ。 特に用があったわけじゃない、ただ、あの映画の冒頭で言っていたことを思

Mr.children 『重力と呼吸』 (旧ブログより転載 2018.10.11)

ハイハットとワン、ツー、という肉声のカウントに合わせて、光をぶち撒けるようなギターサウンドで本作は始まる。 鐘のような音色を折り重ねたギター、シンプルなロックビートを叩き出すドラムス、サビ全体を使って独立したメロディとして振る舞うようなベースライン…このバンドはアルバムにイントロ的なものを配して立ち上がりはゆったりとしているときが多いけれど、今回は一曲目からハイライトになっている。 『重力と呼吸』。重力と呼吸、足と心肺と言い換えてみれば分かり易いんだけど、本作のタイトルは、

Mr.children 『DISCOVERY』 (旧ブログより転載 2018.9.14)

ミスチルことMr.childrenの中で一番好きなアルバム。 生まれて初めて手に入れたCDアルバムでもある(それまでもレンタルはあったけど)。 どこかに家族旅行に行った帰りのサービスエリアの売店で親に買い与えられたという謎のシチュエーションだったので、よく覚えている。 世の中にはなんて素晴らしい音楽があるんだろうと思って、毎日毎日飽きもせず聴いた。 それからラジオを聴くようになって、カセットに吹き込んではいろいろ聴き漁った。 中学を卒業して高校に入学する間の春休みで、ベースギ

ハナレグミ 『だれそかれそ』 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 『東京ブギウギ』 旧ブログより転載(2019.8.9)

てなわけでよく聴いているカバーアルバム二枚。 貼ったツイートにも書いてる通りで、きっかけは映画の『きみの鳥はうたえる』。 これとてもいい映画なのだが、作中でカラオケシーンがあって、石橋静河が"オリビアを聴きながら"をうたう。 これがスカ調の軽妙なアレンジで、ただその享楽的な感じとせつなさの交差するイメージが、妙に映画にハマっている。 更にはフェイクを派手に効かせた独特の節回し。とても気になって調べてみると、これがハナレグミのカバーアルバムに収録されているヴァージョンであると。

Tania Chen with Thurston Moore, David Toop, Jon Leidecker 『Electronic Music for Piano (John Cage) 』 旧ブログより転載(2019.6.28)

2016年の録音で最近出たやつ。 ジョン・ケージの1964年のスコア、"electronic music for piano (john cage)" ピアノのための電子音楽は、ケージによる数多のピアノ曲のスコアの中からピアニストが部品を選び出して、他の演奏者に電子機器を用いた演奏を指示していく…というものなのだが…。 ピアノを担当するタニア・チェンはケージの楽曲を独自に解釈して演奏した作品を数多くリリースするアーティスト。 この人が集めたのが、おなじみギターのサーストン・ム

高井息吹 『世界の秘密』 (旧ブログより転載 2018.8.27)

先日『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』という映画を観たら、タイトルの印象に反してかなり良い映画だったのだけど(タイトルバックが映画始まってから15分位して出てくるとか、それだけで「おっ、いいな」ってなりませんか?)、その映画で何曲か掛かっていたのが高井息吹の曲。 これがべらぼうに良く、『yoru wo koeru』『世界の秘密』という二枚のアルバムが出てたんでソッコー買いましたはい。 1st『yoru wo koeru』、自身のピアノ弾き語りを中心にしていて、ノ

Phurpa 『Chöd』 (旧ブログより転載 2016.11.30)

闇はそこでくり抜かれたかのように一層深く落ち窪んで、虚ろな大口を晒している。 底は見えない。 遥か下から吹き上がる風音が反響しているのか、複雑なうねりを孕んだ遅く重い響きが足元を叩いてくる。 単純な洞が得体の知れない魔力を孕んでいるかのように、深淵に覗かれているなんて言葉が馬鹿らしくなるほどに、意識が闇の奥へ誘われる。 これから君を世界で一番寂しく冷たい場所に連れていく、覚悟はいいか。 2016年作。約45分のトラック×2の二枚組。 Phurpa プルパはAlexei Te