どひょ〜!どんなコトバもワードスコイ 制作ノート座談会 (前編!)

登場する人たち:

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みなさんこんにちは、するめデイズのチカールです。今回はぼくがインタビューしていきます。(以下、チカールまたはチ)

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するめデイズのニルギリです。ワードスコイを作りました。インタビューされていきます。(以下、ニルギリまたはニ)

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<チカール>
今回は個人的にも大好きで遊びまくってる、最新作の「どひょ~!どんな言葉もワードスコイ」について、制作の経緯や工夫した点などを作者に詳しく聞いていこうと思うんだけど、最初の着想はどこから生まれたものだったのかな?

<ニルギリ>
駅から美術館に向かって2人で歩いてるときに、ヒマつぶしに考えた「基準当てゲーム」が元になってるんだ。親がある基準を考えて、それを隠した状態で子にドンドン言葉を言ってもらって、「どっちが勝ったか」だけを答えるから、そこから最終的に基準になってるルールを当ててもらうっていう。例えば「猫」とか「ラーメン」って質問していって、「より大きいものが勝つんじゃない?」とか「より温かいものかな?」って感じで。

<チカール>
それが最初のきっかけだったんだ!「曖昧フェイバリットシングス」ができたときも、最初は歩きながらやってた「好きな物しりとり」が元になってるんだよね。相手が好きそうなものだけでしりとりをしていくっていう。

<ニルギリ>
ずっと前から『わからないって面白いな』ってことを思ってて。自分は理系出身なんだけど、物理をやってたときに、日常生活が物理法則を探すためのパズルのように見えてきたんだ。そして「わからない」ってことが物理の面白さだったんだけど、この面白さをどう表現すればいいのかなって思っていて。

<チカール>
それをゲームの形にまとめて、2019年の秋に「ワールドワードゲームフェスティバル」でサンプル出展することになったわけだけど、最初の名前はなんでしたっけ? やたらと覚えづらい…。

<ニルギリ>
えーと、確か「気まぐれ行司のわから相撲」だったかな……。「きききじゅん」って案もあったなあ。樹木希林と基準をかけて(笑)。

<チカール>
よくわからない基準から、勝手に勝敗を決める親を「行司」に見立てて、相撲っていうフレーバーになったんだよね。最初はコンポーネントに軍配とか土俵も用意して(笑)。この時点でゲームとしては大体完成してたけど、大きかったのは「基準を当てるゲーム」じゃなくて、「最後のワード勝負で勝った人が勝ち」っていうルールに変化したことだよね。

<ニルギリ>
そうそう! 言葉を使って推理していくゲームから、わからないってこと自体を楽しむゲームになったんだ。「なんでメロンパンがライオンに勝つの!?」ってところが一番大事で。このときは紙の力士に言葉を書いて、最後の勝負の前に親が強い順に並べるっていうルールもあったかな。

<チカール>
イベントに来てくれたお客さんたちと何回か遊んでみて、「これはなかなか面白いし、いつか製品版も出してほしいな」て結構可能性を感じてたんだけど、作者としての手応えはどうだった?

<ニルギリ>
それが、自分としては非常に不満なデキだったんだ。この時点では前半パートが「各自が2回ずつ、紙に書いた力士を時計回りに順番に出していく」っていうルールになってて、人の解答を待ってる間に待ち時間が発生してテンポが悪かったり、作り手としてモヤッとする感じが残ってて。

<チカール>
それが1年半後のゲームマーケットで発売されることになったわけだけど、どんな経緯があったんです?

<ニルギリ>
コロナ禍の中でゲームマーケットをやるってなったときに、『実際に集まって遊ぶ』ということに特化した「クオキ」は、今この状況でこそ出す意味があるって話を、共同制作したタンサンの朝戸さんとしてて。それと対になるゲームとして、出すのにピッタリだなって思ったんだ。

<チカール>
ワードスコイはクオキとは逆で、「実際に会わなくても音声だけで遊べる」って部分がコロナ禍での大きな強みになったんだよね。

<ニルギリ>
そうそう。その頃ちょうど音声だけでやるSNSの「クラブハウス」が出てきて。そこで「声だけで遊べるゲームはないか?」って話になったとき、おそるおそるワードスコイを出してみたら大盛り上がりしたんだ。そこでテストプレイを重ねることができて、発言を順番じゃなくて自由発言にしてみたり、テンポを上げる方法をいろいろ考えて、今の形になっていって。

<チカール>
ちょうどコロナで人と会えないっていう、時世にハマった感じがあったよね。自分もこの時期にオンラインで何度もテストさせてもらって、一晩続けてやっても全然飽きないし、何回やっても面白くて、「実はこれは相当スゴいゲームなんじゃないか?」って思うようになった。スルメのような不思議な楽しさがあって。

<ニルギリ>
このゲームは脳にあまり負荷がかからないのが長所だと思ってるんだ。基準の推理も、そもそも答えをわからないようにしてて。だから気軽に適当なことを言うだけでいいし、一気に120点の盛り上がり方をするとゲッソリと疲れちゃうけど、毎回70点くらいのテンションがずっと続く感じになってて。

<チ>
気軽に取り出してみて、コミュニケーションを交えながら、ダラダラと楽しく遊ぶみたいな感じにスゴく適してるよね。「あっ、いいお題思いついたから、今度は自分が行司やってみたい!」くらいのノリで遊べちゃう。

<ニ>
普通のお題を当てるゲームだと、答えにたどり着いてもらう必要があるから、「熱いもの」とか「重いもの」とか推測が難しすぎないお題を考える必要があるけど、ワードスコイは逆にカンタン過ぎるお題は面白くならなくて。

<チ>
そもそも、勝者が「やったー! …だけど、なんでオレが勝ったの!?」って感じのゲームだもんね(笑)。「来年のM-1で優勝しそうなコンビ名」とか、「相撲の技名にありそうな言葉」とか、なるべく主観を交えたお題にするのがコツで。例えば「長いもの」とかじゃなくて、「教室にギリギリ入りそうなくらいで長いもの」みたいにアバウトな形にするといいっていう。

<ニ>
「コンセントに入れたらヤバそうなもの」ってお題とか面白かったなあ。「ナオミ・キャンベル」がずっと勝ってて(笑)。だって、ナオミ・キャンベルをコンセントに入れようとする発想が普通だったら絶対に出てこない!

<チ>
そのアバウトな部分に、プレイする人間の面白さが露骨に出るゲームだよね。いきなり出てくる突拍子もないワードのセンスだったり、行司になったときにちょっとしたリアクションでヒントを与えるセンスだったり。「猫は弱いけど、寝てる猫だったらワンチャンあるかもな…」とか、絶対わかんないようなことをつぶやいてみるとか(笑)。

<ニ>
普通のお題を当てるゲームは、「逆三角形」のイメージで成り立ってると思うんだ。下にある頂点の部分がお題で、そこから生まれた広がりの中から、答えに向かって少しずつ収束していって、最後に一番下の一点にたどり着くっていう感覚なんだけど、ワードスコイの場合はその角度がゆるやかで、最後も少しぼんやりと終わるって感じで。

<チ>
それは最後の答えに「主観」が入ってるからだよね。だけど、これが言われてみたら意外と納得もできたりして、謎の中を「え~、なんで!?」って言いながらさまよう感覚と、お題が明かされてことのほかスッキリするっていう感覚が妙にクセになるという。

<ニ>
逆三角形の形が理想だと思ってる、謎解きとかパズル好きな人の観点からしたら完全にダメなものだし、普通にこういったゲームを作ろうとしたら、「いかに答えにたどり着きやすくするか」で仕組みを考えると思うんだ。だけど、自分はこのゲームの「わけがわからない」という時間がすごく大切だと思っていて、そこを活かすためにはどう作ればいいのかなって。

<チ>
その方向で作ろうとした着眼点が面白いですよね。このゲームって、行司(親)のプレイヤーが明らかにズルくて、「毎日もらったら嬉しいもの」とか、「深夜番組で特集したら面白そうなもの」ってお題が出たときに、子が出してきたワードを脳内で対決させるのを1人で楽しみまくってるっていう(笑)。

<ニ>
そうそう(笑)。それで毎回の勝敗が行司の気分次第で決まるからこそ、問題を解き終わった後に今度は行司の立場になって、今まで出てきたワードを振り返ってみるというのがメッチャ面白いんだよね。

(To be continued...)

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