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友達のためにつくったブックリスト、「働き方と恋愛と、宇宙」。

先日、最近はあまり本を読んでいないという元高校の同級生の友人(35歳)になにかおすすめの本はあるか?と聞かれた。「おすすめの本」というと、ちょっと広すぎるので、なんかテーマを3つくれと言ったら、「働き方、恋愛、宇宙」ということだったので、それに応じて以下のブックリストと解説をつくってみた。

【働くこと】
① 三品輝起『雑貨の終わり』新潮社、2020
② 岡敦『強く生きるための古典』集英社 、2011
③ 奥野克巳『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』亜紀書房、2018

【恋愛のこと】
④ ピーター・バラカン『ロックの英詞を読む——世界を変える歌』集英社インターナショナル、2016
⑤ 俵万智『サラダ記念日』河出書房新社 、1989
⑥ 伊波真人『ナイトフライト』書肆侃侃房 、2017

【宇宙のこと】
⑦ 坂口恭平『現実脱出論』講談社 、2014
⑧ 森田るい 『我らコンタクティ』講談社、2017
⑨ 『天文学と印刷—―新たな世界像を求めて』印刷博物館展覧会図録、2019
⑩ 山形孝夫『砂漠の修道院』平凡社 、1998

いただいたお題は、「働き方と恋愛と、宇宙」。わたしの解釈で本を選んでみました。


まずは「労働」からいきます。①は西荻窪の雑貨屋の店主のエッセイ。自分のお店をどういうふうにしようか、と考えるうちに、雑貨とはなにか? そもそもモノが売れることって? と広がっていきます。仕事ってたんに時間や知識や身体を売ってお金を得るだけじゃなく、社会とコンタクトをすることなのかも。②は、「ひきこもり」経験のある著者が古典文学から生きる知恵を読み取る。カフカ、ドフトエスキー、ヘーゲルといった古典って難解で読みにくいけど、この人は現代に生きる人が抱きがちな悩みにかなりひきつけて読み解いている。もちろん働くことについても書いています。③は、文化人類学者がボルネオ島の狩猟採集民「プナン」と過ごして生活や社会の在り方を考えるエッセイ。ブナンは「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉をもたないという。それはなぜか? いまと違う社会の在り方があるとおもうと、ちょっとラクになるかもしれません。


 さて、お次は「恋愛」。ちょっと恥ずかしいですね。恋愛を解説したりするのはヤボというもの。わたしにとって恋愛の教科書は「うた」だったようにおもいます。④は、洋楽の誰もが知っている曲をとりあげて、なにをうたっているか解説しています。ポップス短い言葉でグッとこころをつかむ魔法があります。ここで取り上げられているのは「世界を変える歌」。たしかに、恋愛って、あの人と出会ったときから昨日までの世界とぜんぜん変わっちゃうことってあるような気がします。ラブソングも「世界を変える歌」なんですね。⑤と⑥は、短歌集。⑤は、国語の教科書でとりあげられたりしているから、なんとなく知ってるけど、よく読むとけっこうエロい感じなんです。好きなやつを一つ「愛人で いいのとうたう歌手がいて 言ってくれるじゃないのと思う」。⑥はわれわれと同世代。郊外の風景をうたっていて、なんだか親近感があります。こちらもひとつ。「海岸に 借りた車を停まらせて ポップソングになれない僕ら」。


 そして「宇宙」。宇宙って、そういうところがあるって知っているけど、実際になんだか分からない。というか、自分が知っていることって、住んでいる土地でもわずかなもの。じゃあ、ほとんど「宇宙」みたいなものじゃないか。⑦は、そもそも現実がなんなのか、ということを徹底的に考えてみる。現実は現実じゃん、としか言えないところ、著者は自分の脳内を洗い出してこの問題にとりくむ。文章は難解じゃなく面白い独り言を聴いている感じ。⑧は、マンガ。これは傑作。町工場でひとりロケットをつくる主人公のお話。どの登場人物も性格に難ありなんだけど、主人公のロケットを打ち上げようとしているうちに、みんなちょっと自分の世界の外側へと出ようとする。⑨は、もうわたしの趣味。15世紀に活版印刷は発明されたのですが、その時期に天文学も発達しています。その時期に刊行された本を紹介しているのですが、当時の天体の動きというとてつもない大きいものをひとつの本に収めようとする野心たるや。⑩は、文化人類学者のフィールドワークの話を書いたエッセイ。エジプトのナイル川西岸の砂漠には、コプト教の修道院が点在します。ここには、人とのかかわりあいを経って修行するひとたちがいる。そういった人たちがなにを考えているのか。宇宙人の話をきくようです。


 以上、わっといきおいで書いてみました。この歳になって、若いころとちがってわっといきおいだけでやれることだけじゃなくなってきました。立ち止まって考えることが多くなった気がします。からだが重くなってようでイヤですが、分かったことも増えてきて、ま、それも良いかな、と思うようにしています。

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