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【脱炭素電源不足】2℃上昇でも起こり得る気候暴走の恐怖 原子力発電所に賛成?反対?

50年後には、このイシューの読者の多くと、その子や孫のほとんどが生きているはずである。

しかし温室効果ガスの排出がこのまま続けば50年以内に人類の3分の1が「住めないほどの」灼熱にさらされるという研究結果がアメリカ・ヨーロッパ・中国の研究者からなるチームによって発表された(大学共同利用機関法人 総合地球環境学研究所)。
CO2の排出がこのまま続けば、世界がもはや予測できない危機に陥る可能性があることを強く警告している。

地球温暖化への対策として、政府は2030年度までに温室効果ガスを(2013年度比で)46%削減することを約束しており、削減目標の達成のために、2030年までに原子力発電をあと17基稼働させる計画になっている。
2050年ゼロエミ達成のために2030年までに原子力発電を、(2021年11月現在の)10基に加えてあと17基稼働させることに賛成か?反対か?

温暖化で一番怖いことは何か?

不連続なことや制御できなくなることが人間にとって一番怖いことを新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)で学んだ。

地球温暖化についてあえてひとつ挙げるなら、このままどんどん温度が上がってゆくと、シベリアなど北極圏の地下や海底ではこれまで凍土にとじ込められていた膨大な量のメタンガスが噴出して人力では止めようがなくなり(CO2の25倍の温室効果を持つとされる)、ついには灼熱の地球になるということが怖い。
そのような恐ろしいことは、仮に(工業化以前からの)温度上昇を2℃で止めても起こりかねないと警告されている。

なぜゼロエミッションなのか?

出している限り温度は上がるから。
大気中に人為的に排出されたCO2の約半分は100年以上も大気中に居座り続ける。
つまり少しでも排出されればされるほど大気中のCO2は増えていく。
CO2の排出実質ゼロ(ゼロエミッション。以下、ゼロエミ)しか気候変動を止める手段がないとされている。

2050年までにゼロエミにするのは、できるできないではなく、立ち向かわざるを得ない人類生存の問題、自然の理であるとされる(「脱炭素社会はなぜ必要か、どう創るか」国立環境研究所 地球環境研究センターニュース)。

あとどのくらい排出できるか?

2℃以下に止める場合に、世界が今から排出できるCO2の量(炭素予算)はあと約1兆1,200億トンで、現存人口割にすると日本は残り約190億トンしかない。
1.5℃以下に止めるなら日本は残り約95億トンしかない。
今のまま排出を続けると、2025年の大晦日に日本の炭素予算がなくなり、除夜の鐘が鳴るともう一切CO2を排出できなくなる。

自分が今すぐできることは何?

普段の生活の中でできる対策は、さまざまな専門家のアドバイスがある。
TBWA HAKUHODOとFUKKO DESIGNが作った『気候変動アクションガイド』(PDF)など。
これ以外にも、例えば地球温暖化に関するイノベーション技術企業に投資をすることもできる。

政策に責任ある関わり方をしているか?

「危機だ!」「脱炭素!」の啓蒙や環境問題のテーマを取り上げるメディアは多い。
ゼロエミ達成のための政策の中身にも目を配り、賛成であれば協力し、反対があれば実現可能な代案を出し、合意を形成し、行動し、温室効果ガス削減目標を達成することが求められている。

政府は2030年度までに温室効果ガスを(2013年度比で)46%削減することを約束しており、この達成のためには、残りの9年間で、

・鉄鋼業を過去最低レベルに停滞させ続ける。
・自動車産業などの製造業からサービス業へ大規模で素早いチェンジをする。
・ガス機器や石油暖房などの使用をすぐにでもやめて電化する。
・現在のエコな行動をパワーアップさせた徹底的な省エネ行動をする。
・年間1万円以上のさらなる電気代の値上げを受け入れる。
・外国が日本のエネルギー覇権を握ることを受け入れる。
・原子力発電を現在の10基に加えてあと17基稼働させる。

といったことが求められているようだ。
【脱炭素社会のデザイン】46%削減まであと9年しかない。どうやって達成するか?)参照。

太陽光発電は原発を代替できるのか?

太陽光発電に関する賛成・推進意見や懸念する声が入り乱れている。

メガソーラーのパネルや架台には建築基準法が適用されず、自然破壊や災害リスクが指摘されており(実際に発生しており)、転売などにより責任の所在が不明な箇所も多く、近隣住民が被害に遭っても補償されない懸念があるといわれている。
さらに、2040年には燃やすことができない太陽光パネルが廃棄物として大量に出され、鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質を含む大量のゴミが日本のあちらこちらに不法投棄される懸念(2040年問題)も指摘されている。

農地の上に屋根状にソーラーパネルを設置し、農業を行いながら発電も行うソーラシェアリングが大きな可能性を秘めているともされるが、現在安価で大量に普及している太陽光発電で使われる結晶シリコンの製造工程では大気・土壌・水質などへの負荷から、環境基準が低い国や地域の人びとの過酷な労働(手作業でシリコンを砕くなど)で製造されているという報告や、製造には巨大な設備が多く必要で、(いわゆる「脱物質」には遠く、)セメント、鉄、ガラス、プラスチック、レアアースが大量に使われているという指摘もある。

もしこのような事実があるのであれば、そうした犠牲の上で達成される「脱炭素」は幸せな脱炭素、持続可能な脱炭素なのだろうか?

さらに、原子力などの集中型の発電設備は容易にサイバー攻撃ができないが、太陽光発電のような外国製の設備(インバーターなど)が電力網に多数接続されるとサイバー攻撃のリスクが高まるという指摘もある。

これらの状況を制度設計やイノベーションなどにより改善していくという声や動きがあるが、仮にそうした動きを優先した場合、再生可能エネルギーの導入が遅れ、2030年度までの残り9年で温室効果ガスを(2013年度比で)46%削減する目標には間に合わないと考えられている。

原子力発電所推進に賛成か反対か?

日本で2030年までに、原子力発電を現在の10基に加えてあと17基稼働させることができるか?そうすべきか?
フランスで2021年10月に実施された世論調査では、53%が「フランスのエネルギー自給にとって国内の原子力部門は必要不可欠だ」と回答し、64%が「フランスの将来のエネルギーミックスは原子力と再生可能エネルギーで構成される」と回答した。
日本では原子力発電所と再生エネルギーを合わせた脱炭素電源は現在20%~30%にすぎず、イギリスやドイツの50%~60%、フランスの90%超に遠く及ばない。

2050年ゼロエミ達成のために2030年までに原子力発電をあと17基稼働させることに賛成か?反対か?

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