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【アニメでアニメをぶっ壊す】「涼宮ハルヒの憂鬱」にハマった理由がわかったので書いてみる【考察】

ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上


こんにちは何するため、すらぷるためです。


この名台詞から早10年以上が経ちました。谷川流氏の小説を原作とした京都アニメーションの名作「涼宮ハルヒの憂鬱」での名(迷)言ですね。以前にも書きましたが自分はハルヒど真ん中世代で、あのエンドレスエイトや、予告なしで2期がいきなり始まる演出などをリアルタイムで体験していて当時の衝撃はかなり強く印象に残っています。

今でも大好きな作品なのですが、最近アニメと原作小説の方を観直してみて
当時は気が付かなかったこの作品のテーマ、なぜ自分はこの作品にハマったのかを書きたいと思います。



現実に宇宙人、未来人、超能力者はいない


設定を簡単に説明すると「全てのあらゆるモノが涼宮ハルヒの意思で存在している」という話です。ハルヒがこの世を作った全知全能の神みたいな存在ですね。

「ハルヒ」の表紙だけ見たことがあったり、あまり興味がない人にとっては「カワイイ女の子が出てくる学園モノ」のイメージが強いと思います。確かにその要素もありますが、、、はっきりいってそれらはダミーに近いのです!

「カワイイ女の子」「学園モノ」「日常系」という表面上わかりやすいイメージを借りてきているんですね。まさにハルヒが言っていた「所謂一つの萌え要素が必要よ!」なのです。もっと言うとそういった要素をぶっ壊す為に上の三要素が用意されているようにも見えます。

自分は初見は中学生ぐらいでしたが、学園モノだと思っていたら作中に真逆の非日常とハードSFという大好物が入りまくるので、それで一気にハマったという感じですね。

しかしそういった要素以上に重要なポイントがあると思っていて、それは端的に言うと「こんなアニメみたいな人達、現実にいるわけないだろやれやれ・・・」というキョンの視点があることです。

この点が物凄く面白いポイントで、宇宙人の長門有希、未来人の朝比奈みくる、超能力者の小泉一樹は冒頭のセリフからハルヒが「望んだから」ハルヒの元に存在しており、物語上でも設定上でも「ありえない存在」ですが

それと同時に「こんな人格現実にはいねーだろ」という視点があるんです。もし私達が生きている現実の世界にこの3人がいたとしたら

長門は無口な上にインテリ拗らせたようなイタい奴

小泉はナルシスト過ぎるイタい奴

朝比奈みくるは極限までぶりっ子をする、女子に嫌われる系女子のようなイタい奴

みたいな感じで、現実にいたら確実にイタい3人です。この3人のキャラはアニメの世界だから成り立っていた、という事です。

もし現実にアニメの中から飛び出してきた様な痛いキャラ、人格の人がいたら自分なら「うわ・・・現実世界でアニメっぽいキャラ演じてるよ・・・」と輪の中から一歩離れてそう思うでしょう。

この時の感覚、視聴者目線が主人公「キョン」という存在なんですよね。キョンのポストモダン的な斜めに構える態度に腹が立ったという方もいますが、キョンのあの冷めた態度というのは、「やる気がなく無気力だから」ではなく、「アニメという虚構の世界に対する現実からの視点」なんですね。

そう考えるとキョンは現実世界からアニメの世界にやってきた「異世界人」と言える気がします。昨今の異世界転生もの、なろう系の主人公の源流に涼宮ハルヒの憂鬱の「キョン」がいるような気がしました。


余談ですがこの「アニメは虚構なのだから、現実に戻るんだ!」みたいな要素がエヴァやハルヒに入っているのは、クレしんヘンダーランドの大冒険の記事でも書きましたが、個人的には90年代の虚構の時代からの揺り戻しなんじゃないかと思ってます。

ハルヒとキョン(異世界人)は存在する

この話の流れでいくと現実だとハルヒはオカルトをガチで信じてるヤバい奴になりそうですが、実は彼女は非日常を求めつつ「そんなことは起こるはずが無い」と心の底では思っている、という理性を持っています。

つまり言い換えると「自分でも嘘だと解っているが、あえてやっている」というノリなんですね。この感じが非常にリアルで、この態度こそが「涼宮ハルヒの憂鬱」という作品、このアニメ全体に漂っている「アニメは嘘だと解っているが、でもそのことをあえてアニメでやっている」みたいなことに繋がるのじゃないのかと思いました。

作中には他にも様々なメタ視点的な要素が入っていて、まるでアニメでもってアニメ自体を破壊している、原作で言うとラノベでもってラノベ自体を破壊しているかのように視えてきます。

そういう事で、虚構に現実(メタ)が介入していくことをやったからこそあのEDのハルヒダンスもネットでフィーバーしたし、ヒットしたんじゃないかと思いました。

00年代のポストモダンでしょうか。涼宮ハルヒの憂鬱の、虚構の世界で終わらずに現実に作用してくる感じが最高にツボです。

おわり


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