しゅうる。

小劇団で演劇をやっていました。一度、就職したもののやっぱりモノづくりへの想いが溢れ、ち…

しゅうる。

小劇団で演劇をやっていました。一度、就職したもののやっぱりモノづくりへの想いが溢れ、ちょこっとずつ活動再開中。noteには小説やエッセイを載せていきます。戯曲も書いてます。

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想像したことって本当に起こるのだろうか。

ふと、自分のことを考える。 気づけば36歳になってしまった。 しまった?って言うのもなんか変な感じがする。 なんだかどうしてもおかしく感じて、仕事を辞めた。 この違和感はなんなんだろうってずっと考えてた。 36歳って言うのに何かが引っかかる。 それで思い出した。 大学生の時、しきりに考えて、そうして友人たちにも言っていた 自分の言葉。 大学で文学を専攻したってのもあって、 当時は中原中也、アルチュール・ランボー、太宰治なんかに傾倒していた。 作家、演劇人になりた

    • 創作1ー⑤『タイトル未定』 2022.12.21

      すぐに治ることを期待して、毛布を頭からかぶった。 食道から胃にかけて食べたパンの圧迫感を感じる。 三上はぐるぐると回る深い溝の世界にいた。 なかなか眠りにつけない。 頭からずっと溝の底へと落ちていく感覚はするのに、眠くなるどころか 逆に緊張していくかのようだった。 ふとどこからともなく視線を感じる。 それは三上の足の方からだった。 落ちていく三上にピッタリくっついてくるように追ってくる。 あの、ゴミの山にあった男の目であった。 見上げて、目が合った瞬間、締め付けられるよ

      • 創作1ー④『タイトル未定』 2022.12.19

        こんな日はすぐに眠るのにかぎる。 そう思って三上は飯も食わずに寝てしまおうと思った。 六畳の部屋に机とベッド。 散らばった本が他を埋めている。 部屋の明かりを消してベッドに横たわると、 かすかに外の光の、こぼれた切れ端が三上の顔に指す。 かつて高村光太郎が 「東京には空がない」 と詠ったのを低い天井を見ながら思い出す。 徐々に微睡んでいった。 ふと目を開けると、薄いレースカーテンの向こうから まだ街灯の光が見えた。 今何時だろう、と三上はベッドで一緒に寝ている時計を見る。

        • 創作1ー③『タイトル未定』 2022.12.18

          隣の建物で視野の半分は奪われている。 日のあたりも決していいとはいえない物件だ。 所々滲みのある灰色のコンクリと、わずかに見える向かいの通り。 あたりはすっかり暗くなっていた。 東京であるのに、街灯は少なく、 遠くにある繁華街の光を際立たせている。 三上はスウェットを着ると、暖房のスイッチを入れ椅子に腰かけた。 ふう、とため息をついて机の上に散らばっている論文を眺める。 英語や日本語で書かれた文章の、意味を考えることなく そして横から、斜め下からとデタラメに目を沿わせると

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        想像したことって本当に起こるのだろうか。

          創作1−② 『タイトル未定』 2022.12.14

          二階建てのアパートの、204号室が三上の借りている部屋である。 外に露出された階段の、手すりはボロボロと剥がれ落ちていて元のクリーム色はほとんど残っておらず、全体が赤褐色にくすんでいた。 雨に吹きさらされているその階段を、三上は静かに上がっていく。 一階の部屋にドアの前には傘が水溜りをつくっていた。 安っぽい鍵を開けて部屋に入る。 コンクリむきだしの玄関の色がすぐに暗くなった。 くぐもった雨の音に、水滴が蛇口から垂れる音がまぎれている。 三上はその場で服を脱いだ。 下着

          創作1−② 『タイトル未定』 2022.12.14

          2022.12.13 創作1 「タイトル未定」

          男の名前は三上といった。 東京の郊外にある大学の院生である。 もともと専攻は英文学だが、最近は国文学に心を惹かれているようである。 三上はいつもと同じように今日も大学で、吐く息が酒臭いでっぷり太った斎藤教授の手伝いをしていた。 「三上くんさ、いい加減決めたの?」 呆れたように斎藤教授が机の上を整理していた三上に声を投げた。 「ええ、まあ・・・。まだ、ですね」 三上は片付ける手をほんの少しだけ止めたが、すぐ空白を埋めるように 散乱した机の上で目を忙しなく動かせた。 視界には

          2022.12.13 創作1 「タイトル未定」

          2022.12.12

          休職をしてからはや、4ヶ月が経とうとしています。 いや、まだ4ヶ月なのかな・・・? 今日は、休職している日のいつもの日って感じの1日でした。 朝は7時には起きて、コーヒー豆からコーヒーを淹れる。 何回も取りに行くのがめんどうなので、コップになみなみと入れてそっと デスクに持っていく。 窓を少しだけ開けて、冷たい空気を吸いながらモーニング・ノートを書く。 それからゲームする。今はポケモン。 スプラはストレスが溜まるからうつにはあんまりよくない笑。 それで、ご飯食べ

          『書く習慣』 著いしかわゆきを読んで   (日記 2022.12.11)

          すごい、久しぶりにnoteを使ってみる。 というのも、ずっと休職していました。 いや、今もまだしています。 うつ病になりました。 原因は、きっと自分で明日に希望を持とうとしなかったから。 今はやっと回復期に入ったようで、ずいぶんいろんなことができるようになった。 それで、『書く習慣』という本を読んで、久しぶりにnoteを書く気持ちになったんです。 この本で、「ああ、今からでも書いていいんだ」っていう勇気をもらえました。 腐っても文学部出身の自分は、あーでもないこーで

          『書く習慣』 著いしかわゆきを読んで   (日記 2022.12.11)

          無題

          変化し続ける 必ずしも進化ではない 良いか悪いかでは判断できない 僕は変化した 変化してしまったのかもしれない 若い夢は姿を変えて 夢も年をとった 生まれたてのピュアさは消えて 手垢のついた古ぼけた錆だらけの夢だ もう叶えるだけの力も生命力もないかもしれない でも、この半ば色褪せた夢は 僕のものだ。 もう夢とは言えないかもしれないが 僕と同化した もしかすると錆が身体に溶け出して 蝕むかもしれないし 毒のように感じる夜もある だけれども、大切な僕の夢なんだ。

          3年ぶりの帰省。

          ずっとコロナで地元に帰らなかった。 別に、特段帰りたいとも思っていなかった。 僕の実家は東京からそれほど遠くない。バスで2、3時間といったところの田舎。 今年の連休も帰る予定はなかったけれど、 1ヶ月くらい前に、母から突然LINEで「帰ってきてほしい」 と言われたので帰った。 理由は特に聞きもしなかったし、母も言ってこなかった。 何か買ってきてほしいのある? って聞いても、「特にないけど、お菓子とか?」 って言っていた。 だからバスに乗る前に、適当なお土産屋さんで お

          3年ぶりの帰省。

          全ては、『今』『ここから』始まる。

          僕は転職した。 よく広告で見かける、「今より年収UP!ハイクラス求人」とかじゃない。 なんなら収入は減る転職だ。 理由は、前の会社が好きではなくなったから。 他にも色々あげられるけど、原点はそれだと思う。 馬鹿なもんで、 いざ新しいところで働き始めると、気にしていなかった収入減ってものが 気にかかる。 気にしていなかった、のに。 一つの悩みを解決すれば新しい悩みを見つけてしまうんだと気づいた。 先日、用事があって、母校の大学に行った。 あれから10年以上経っているし、昨今

          全ては、『今』『ここから』始まる。

          F家の人々 その6 守護霊を見てもらったら

          10年くらい前、知り合いの役者から紹介された占い師の方に見てもらったことがある。 対面で占ってもらったりしたのはそれきりなんだけど。それが結構笑い話。 その占い師さんは守護霊も見ることができるって話だったから、 「あ、守護霊気になるー」って思ってみてもらった。 僕の予定としては、 飼い犬のジュウベエさんか、父親が守護霊っていわれるつもり100%でいた。 それで、所定の場所に行くと、優しそうな女性が待っていた。 軽く挨拶をして、「何からみましょうか」って言ってもらったので

          F家の人々 その6 守護霊を見てもらったら

          F家の人々 その5 ジュウベエさん

          こんにちは。しゅうるです。 今日は僕が昔飼っていた、犬のジュウベエさんのお話。 ジュウベエさんが僕のところにきたのは、僕が小学校に入った頃でした。 知り合いの人のうちに遊びにいった時に、ちょうど子犬をもらってきたというところで、僕は犬を飼いたいなんて言った覚えはないけれど、ワガママな僕は飼いたい!欲しい!と言ったんです。 姉は犬が好きで、ずっと飼いたいと言っていたそうですが、厳しいお母さんに反対されて飼えなかったんだよね。 だけど、僕が思いつきで言ったら、許可が出ました。

          F家の人々 その5 ジュウベエさん

          【創作大賞2022 応募作品】 夢の墓標 

          人は何を求めているのか 侵されることのない自由か? 恋を語る相手か? 求めるものを探している 求めるものがわからないママ、僕は生きている 中也が言ったように、それは めまひのするやうなものだ 全てに焦点が合わず、 本当のところ、その瞳には何も映っていないのだから 人は深い溝に囚われる そこは誰も声も言葉も届かぬ海の底だ! あらゆるものが、 ただ一筋の光にもなれない いや、存在すらできないのだ 自らが 自らの言葉を造りだす その時マデ、暗い海の底は 小さき生き物もいない、無の

          【創作大賞2022 応募作品】 夢の墓標 

          怖くなったら、一歩前に出ろ。

          「やってるとある時、ふっと突然怖くなる。その瞬間は真摯に向き合ってないとこない。その時が成長のタイミングだ。いいか、怖くなったら、一歩前に出ろ!」 これは昔、役者をしていた時に先輩に教わったことです。 確かに、舞台の上で演じているときに(それは稽古中でも本番でも)ある時グッと力が入る時がある。たぶん、本当の感情が生まれた瞬間なんだと思う。 それって本当に怖いっていう感覚があるんです。何が怖いかって、それまで稽古でやってきた、ようは決まっている流れというか何十回も繰り返してき

          怖くなったら、一歩前に出ろ。

          窓を開ける。

          朝、目が覚めるとコーヒーを淹れる それとコップに水を汲む それらを机に並べる 机の前の窓を10センチ開けてみる 窓の奥は、隣の家の外壁の鮮やかなオレンジ色と 木の緑 アスファルトも少し 車も人も通らない 10センチの画面の7割は、空が占めている 今日は曇りらしい 灰色の、少し軽めの雲で覆われている ふと、ここはどこだろう?と思った 憧れのイングランドの風景に、見えなくもなかった 窓は10センチ開けるのがいい それ以上だと、途端に現実を突きつけられる 生活感が邪魔をす

          窓を開ける。