対数関数を積分で定義してみる
緑が生い茂り、過ごしやすい気候になってきた今日この頃。ミケはいつもの河川敷で寝転がっていました。どうやら考え事をしているようです。
ミケ:指数関数の逆関数として対数関数を考えてきたけど、それ以外で定義することはできるのかな?
ミケ:そういえば、$${\displaystyle\frac{1}{x}}$$の原始関数は対数関数だよなぁ。…まてよ。
ミケ:対数関数を積分で定義することができるじゃん!
ミケ:そうと決まればこの定義でこれまでの対数関数の性質が成り立つかを考えてみよう!
どうやら何やらひらめいたようです。今回は対数関数のお話です。
まずは基本の定義から
よし、じゃあまずは対数関数の定義を決めよう!冒頭でも話した通り、今回は積分を使って表すよ。
$${\displaystyle\log x=\int_1^x\frac{dx}{x}}$$
こういう風に定義しよう!右辺からわかるように、この関数は$${x>0}$$で定義されて(じゃないと発散する)、$${x=1}$$のとき$${\log x=0}$$となるね。
この定義を使っていろいろな対数関数の性質を導いていくよ!
対数関数の加法・減法
まずは対数関数の足し算と引き算について考えてみよう。
先に足し算から考えるよ。
これまでの定義だと$${\log x+\log y=\log xy}$$が成り立つけど、今決めた定義からそれを証明できるかな…?
とりあえず、左辺を積分で書き直すと
$${\displaystyle \log x+\log y=\int_1^x\frac{dt}{t}+\int_1^y\frac{dt}{t}}$$
となるね。積分同士を足し算して、積分上限を$${xy}$$にするために、右辺第一項の積分について$${yt\to t}$$の置換積分を行うと…。
$${\displaystyle \int_1^x\frac{dt}{t}+\int_1^y\frac{dt}{t}= \int_y^{xy}\frac{1/y}{t/y}dt+\int_1^y\frac{dt}{t}=\int_1^{xy}\frac{dt}{t}=\log{xy}}$$
と意外とあっさり求めることができたね。
それじゃあ次は引き算について考えていこう。
これも、これまでの定義だと$${\log x-\log y=\log{\frac{x}{y}}}$$が成り立つけど、これを証明できるかな…?
足し算と同じように積分で書き直してみよう。
$${\displaystyle \log x-\log y=\int_1^x\frac{dt}{t}-\int_1^y\frac{dt}{t}}$$
となるね。
それじゃあまず右辺第一項の積分について$${\frac{t}{y}\to t}$$の置換を行うと…
$${\displaystyle \int_1^x\frac{dt}{t}-\int_1^y\frac{dt}{t}=\int_{\frac{1}{y}}^{\frac{x}{y}}\frac{dt}{t}-\int_1^y\frac{dt}{t}}$$
と変形できるね。次に右辺第二項の積分について$${t\to\frac{1}{t}}$$の置換を行うと…
$${\displaystyle \int_{\frac{1}{y}}^{\frac{x}{y}}\frac{dt}{t}-\int_1^y\frac{dt}{t}=\int_{\frac{1}{y}}^{\frac{x}{y}}\frac{dt}{t}-\int_1^{\frac{1}{y}}-\frac{tdt}{t^2}=\int_{\frac{1}{y}}^{\frac{x}{y}}\frac{dt}{t}+\int_1^{\frac{1}{y}}\frac{dt}{t}=\log{\frac{x}{y}}}$$
と足し算に比べたら少し複雑だけど求まったね!
真数の指数部分をおろす
次に、対数関数の"真数"中では、肩の指数をおろせるかどうかについて考えてみよう。
通常の対数関数なら$${\log a^x=x\log a}$$が成り立つけれども、この新しい定義でこの性質が示せるかどうか考えていこう。
今回は右辺の式から左辺の式を導いていこう。
$${\displaystyle x\log a=x\int_1^a \frac{dt}{t}}$$
という風に書き直せるから、置換$${t^x= s}$$を行うと、$${xt^{x-1}dt=ds\to \frac{x}{t}dt=\frac{ds}{s}}$$となるので…
$${\displaystyle \int_1^a x\frac{dt}{t}=\int_1^{a^x}\frac{ds}{s}=\log{a^x}}$$
という風に導けるね。
対数関数とe^x
じゃあ次に、$${\log x}$$と$${e^x}$$の関係について考えてみよう。
これまでの定義なら互いが逆関数であるから
$${x=e^{\log x}}$$
$${x=\log{e^x}}$$
の二つが成り立つよね。
それじゃあこの新しい定義ならこれらが成り立つかを調べていこう!
まず1.の式から確かめていくよ!$${y=e^{\log x}}$$とおいて、両辺を$${x}$$で微分すると、
$${\displaystyle \frac{dy}{dx}=e^{\log x}\cdot \frac{1}{x}=\frac{y}{x}}$$
とできるね。じゃあこの微分方程式を解くと
$${\displaystyle\frac{1}{y}\frac{dy}{dx}=\frac{1}{x}\to\log y=\log x+C\to\log\left(\frac{y}{x}\right)=C}$$
よって、$${\frac{y}{x}}$$は定数であることがわかるね。この定数を$${A}$$と置くと、$${y=Ax}$$と変形できるね。
ここで、$${y(1)=e^{\log 1}=1}$$より$${A=1}$$とわかるよね。よって、$${x=e^{\log x}}$$が成り立つ!
それじゃあ次に2.の式を確認していこう!1.と同様に$${y=\log e^x}$$と置いて両辺を$${x}$$で微分すると、
$${\displaystyle \frac{dy}{dx}=\frac{1}{e^x}\cdot e^x=1}$$
となるね。常に傾きが1の関数は$${y=x}$$であるから、$${x=\log e^x}$$が成り立つね!
さらに、2.の式から$${\log e=1}$$が言えるね!
さらにさらに!逆関数の性質$${f(f^{-1}(x))=x}$$から、$${e^x}$$と$${\log x}$$は逆関数ということがわかるね!
自然対数以外の対数関数
今までの定義だと自然対数以外の対数が当たり前のように登場していたね。
でも、今回考えている新しい定義では"底"という概念がまだ登場していないから、自然対数以外の対数が登場できていないよね。
そこで、
$${\displaystyle \log_a b=\frac{\log b}{\log a}}$$
となる関数を底が$${a}$$、真数が$${b}$$である対数として新たに定義してあげよう。(そして、特に$${a=e}$$の対数を自然対数ということにしよう。)
これで自然対数が以外の対数についても、今回考えている新しい定義で扱えるようになったね!
自然対数以外の対数の加法・減法
自然対数のときと同じように、自然対数以外の対数でも足し算や引き算の性質が成り立つかを調べてみよう。
とはいってもすごく簡単で
$${\displaystyle \log_ab+\log_a c=\frac{\log b+\log c}{\log a}=\frac{\log bc}{\log a}=\log_a(bc)}$$
$${\displaystyle \log_ab-\log_ac=\frac{\log b-\log c}{\log a}=\frac{\log \frac{b}{c}}{\log a}=\log_a\left(\frac{b}{c}\right)}$$
という風にあっさり求まってしまったね。
自然対数以外の対数で真数の指数部分をおろす
つぎに、自然対数のときのように真数の肩の指数がおろせるかどうかを考えていこう。
こちらもすごく簡単だね。
$${\displaystyle\log_a b^x=\frac{\log b^x}{\log a}=x\cdot\frac{\log b}{\log a}=x\log_ab}$$
定義に従って変形してしまえば一瞬で導けちゃうね(笑)
底がaの対数関数とa^x
それじゃあ最後に、$${\log_a x}$$と$${a^x}$$の関係について考えてみよう。無論、今までの定義なら逆関数なんだけど、この新しい定義でも同じように言えるかな…?
今までの定義なら、次の二つが成り立っていたよね。
$${x=a^{\log_a x}}$$
$${x=\log_a a^x}$$
ではこの二つが新しい定義でも成り立つかを確認していこう!
まずは1.から確認していくね。$${y=a^{\log_a x}}$$と置いて$${x}$$で両辺を微分すると(※$${(a^x)'=(e^{x\log a})'=a^x\log a}$$)、
$${\displaystyle \frac{dy}{dx}=a^{\log_a x}\log a\cdot\left(\log_a x\right)'=y\log a\cdot\frac{1}{x\log a}=\frac{y}{x}}$$
となるね。ここからはもうわかるんじゃないかな?両辺を$${x}$$で積分して式変形を行うと、
$${\displaystyle \log\left(\frac{y}{x}\right)=C}$$
となるため、$${A}$$を定数として$${y=Ax}$$が成り立つね。そして$${y(1)=1}$$より$${y=x=a^{\log_a x}}$$が成り立つね!!
同様に2.についても考えるよ!
$${y=\log_aa^x}$$と置いて、両辺$${x}$$微分を行うと
$${\displaystyle \frac{dy}{dx}=\left(\log_aa^x\right)'=\frac{1}{a^x\log a}\cdot a^x\log a=1}$$
傾きが常に1である関数は$${y=x}$$であるため、$${y=x=\log_a a^x}$$が成り立つね!
よって、$${\log_a a=1}$$が成り立つこともわかるね!
さらに、$${a^x}$$と$${\log_a x}$$が逆関数であることもわかるね!!
今日のまとめ
オレンジ色の夕日が河川敷を照らしています。いつの間にか夕方になっていました。
ミケ:おお!できた!
ミケ:意外とできるもんだね…。正直足し算引き算の性質までしか示せないと思ってたよ(笑)
ミケ:まさか微分方程式を解くことになるとは思わなかったけどね…。ミケの知識で解けるレベルだったからよかったけどね。
ミケ:あれ、もう18時か…。そろそろ飼い主さんも帰ってくる頃かな。心配させるのも悪いから帰ろうかな~。
そういうと、ミケはすくっと起き上がって家に帰りました。
誤字脱字・間違いや質問などがございましたら遠慮なくお願いします!
by ミケ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?