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合成化学者が困るかもしれない質問
常にそうではないかもしれませんが、合成化学者の方がちょっと困る可能性のある質問があります。
それは、
カジュアルバージョン「それ何のためにつくってんの?」
丁寧バージョン「あなたは何のためにその化合物を合成されているんですか?」
です。
実はこの質問は、登山家に「何故山に登るんですか?」と聞くのに等しいです。
上記の質問に対する回答は、
カジュアルバージョン「つくりたいから」
丁寧バージョン「合成したいからです」
です。
こんな書き方をすると合成屋ってアホなのかと思うかもしれませんが、他の方の名誉のためにちゃんと言いますと、当たり前ですが、決してそうではないです(私はアホですが)。彼ら彼女らは優秀です。彼ら彼女らのおかげで新薬の合成手法などが出来たりします。合成ステップ数が減ることは製造時間やコストの削減につながります。単純に時間やコストだけでなく、より環境負荷の少ない手法も生まれます。
もちろん、目的をもって合成する場合も多々ありますが、合成屋の興味は「目的化合物をどのように合成するか」にある場合があります。その方法を新規に開発したり、改良したりすることに情熱を燃やします。
合成手法自体に興味があって、最終化合物はそれを試した結果または試すための目標にすぎないという場合があるということです。
ちなみに私も分類でいえば合成屋になると思うのですが、真のバリバリの有機合成屋ではありません。私は生物化学系のちょっと特殊な合成屋だと思います(読者の方にとってはどうでもいいことですが)。
そういえば、大学時代に合成屋の生態について知る機会がありました。
所属研究室のゼミで他大学のある論文が紹介された際に、「この化合物は何のために合成されたんだ」という議論になったことがあります。
その際に一人の教員の方が明快な回答をずばっと出してくれました。
「そんなもん、合成したいからに決まってんだろっ!!」
な、なるほど(;^_^A
読んでくださいましてありがとうございました!