見出し画像

~THE BEE~ 本人が本人であるという不思議さと、当たり前さのモヤモヤが心地いい。

『私の名前はニラミンコ。』
"魔法を捨てたマジョリン"というお芝居の中に登場する悪い魔女。僕の記憶の中にある初めての舞台での初めてのセリフ。

行列が行列を呼ぶのと似て、人気が人気を呼ぶ。
小学校6年生の学芸会では何故か皆ニラミンコになりたがり、学年でオーディションが開かれ、十数人の中からニラミンコに選ばれた。

『舞台』に魅了されていったのはこの頃からだったと思う。
ほんの一瞬そこに立つために、稽古を積み重ね、自分ではない誰かとなり、衣装を纏い、スタッフやお客さんと作品を共にし、小さな場で表現をする。
それが一瞬の内にしかないという儚さが、舞台の魔力の秘密なんだろう。


NODA・MAP番外公演『THE BEE』という舞台を観てきた。
演出は野田秀樹さん。会場が東京芸術劇場なので、いつも行ってるところだから行きやすかった、という訳ではなく。

長澤まさみさんのお芝居をどうしても今、直で観たいと思ったのが先で、調べてみたらタイミングと運に恵まれたのだった。有り難かった。

『長澤まさみさんって、なんでいつもまん中にいるんだろう?』と思っていた。
たくさんの人の人生を表現していても、本人が本人であることはどんどん濃くなるのが不思議で、でもそんなことは当たり前で。
そんなモヤモヤの存在を感じて、確かにモヤモヤしたかった。

片っ端から映画を観たが、確かに感じるためには映像作品では限界があった。


そして、

9月に僕の父ちゃんが亡くなったんだけど、一か月くらいかな。僕は現実感のない静けさの中にいて、何をするともなく何かを探していて。
自分の音や表現も体から離れているような感覚が怖かったけど、それも認めていて。自力や理屈では先へ進めない。"うつ"ってこんな感じなのかなとフラフラとしている中で、気づいたら長澤まさみさんのお芝居を観まくって写真集も手にしていた。なぜか長澤まさみさんの役者としてのその姿に、新しい自分の目標をもらった気がした。いつか一緒の舞台に立ってみたいとも強く思った。


これが、今、観たい理由だった。



観た。

凄く観た。

観すぎて穴が空いてしまったら申し訳ないなと思うくらい観た。

自分自身をすごく大切にしているんだろうなと感じた。周りの人も恐らく長澤まさみさんを大切にしているんだろうと感じた。誠実で誠実で、誠実さを越えて不誠実さも取り込んでいるような。

生きてきた時間と質量の積み重ねの総量を凝縮して、限られた人数でその瞬間を共有する。その一連の積み減らしが舞台の純度を濃くする。

舞台は観る人が勝手に自分を投影することによる気づきの場でもある。作品から受けるモヤモヤと、自分自身のモヤモヤを照らし合わせる。だから舞台に立つ人の純度は必須だ。その純度の結果、笑ったり涙したり勝手に心が動く。

今回僕は、作品の背景にある役者さんたちの生き方に投影していたんだと思う。

阿部サダヲさん、河内大和さん、川平慈英さんにも、野田秀樹さんの芸術観にもビリビリした。備忘録として残したいけれども余りにも長くなる。一つだけあげるならば、河内大和さんからにじみ出る『まん中感』は印象的だった。舞台の人の強さなのかもしれない。


舞台に立ち続け、観てくれた方と明日の勇気とか元気とかそんなモノを一緒につくりあげていきたいと気持ち新たに思うことができています。そんなことをまた教えてもらった長澤まさみさんと、THE BEEの皆さんに感謝です。

とても面白いのでオススメですが、東京公演は抽選での当日券のみ。。
(当選には執念が必要かもw)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?