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フォトグラメトリと3次元計測機を活用したハイブリッド3Dモデル作成手法

概要

こんにちわ@ふにゅんです。
お仕事でフォトグラメトリ撮影をしていると、寸法の正確さも求められる場合があります。

また文化財計測など、解像度の高いテクスチャ情報はもちろん、合わせて表面の微細な形状と寸法精度をしっかりアーカイブしたい。という要望は多いです。フォトグラメトリでは概ねのサイズ感などは合わせることができても
精度のトレーサビリティを担保することは難しいため、3次元計測機を併用し作成します。また、寸法精度のオーダーが数十μmだとした場合には、相応の精度に対応するデスクトップ型の高精細計測機の選定から、仕様策定に参画することもあります。

ここでは簡単に計測機の特徴と、寸法情報とテクスチャ解像度の両方を
しっかり保持したデータ制作について解説していきます。


対象物

今回の対象物は植物化石です。

撮影対象の植物化石
微細形状が多い
実測値は197.63mm

三次元計測機

今回の対象物の特徴を踏まえて、カメラタイプの計測機(機種名:smartscan he/c8)を選定しました。スキャナー本体の中央のプロジェクターからパターンを対象物に投影し、両サイドのカメラレンズでその投影されたパターンによって明らかになる凹凸形状を撮影し、三次元情報をデータ化します。​

このタイプの機種の特徴としては、対象物の数μmの微細な形状の撮影計測が可能であり、その寸法・計測精度が非常に高い点が挙げられます。​

欠点としては、ハンディタイプなどのスキャナーと比較して、小さめの画角を細かく取得していくため、計測時間は相応かかることです。​

主に、金型などの工業製品の比較検査や品質検査等の目的で利用されます。また文化財の領域では、絵画の筆致などの研究・解析にも使用されています。​


今回使用する計測機smartscanR8

scan中はこのような感じで複数のパターン投影をします。

フォトグラメトリ

フォトグラメトリは形状を囲むように7週、計170枚撮影しております。
今回写真のように1カット全体が映るよう撮影し生成しています。
この時下部を固定し撮影しているのですが、固定部を写真に写らないように撮影することで、トリミングの手間をなくします。


撮影写真
アライメント画像

撮影データ

今回のフォトグラメトリは、このように形状自体の再現性は計測機と比較して、若干ゆるい印象がありますが、テクスチャの再現性は取得した高解像度の画像の合成により、非常に高いものとなります。​

ジオメトリ
テクスチャ

三次元計測機での撮影データは表面の再現性も高く、寸法もしっかり再現されています。

表面の微細形状もしっかり再現されている。
実測値197.63mmに対し
計測メッシュデータは197.66mm

データマージ

ここからが本題です。
今回この2つのデータをいいとこ取りをしたデータを作成します。
ジオメトリは計測機撮影データ、テクスチャをフォトグラメトリを使用します。このワークフローを解説します。

①計測機データのUV展開

UV展開ですが、CGソフトで調整していくという方法が一般的なのですが、
3次元計測機でのスキャン物はポリゴン数が多いため、ハンドリングに時間がかかります。(今回ポリゴン数は600万くらいです)
そのため、ある程度UVの島が分かれるのは許容して、自動でUVを開きます。
使うツールはmetashapeになります。
metashapeでは、事前にアライメントされている適当なデータに
メッシュをインポートしテクスチャコマンド実施することで、
適当にテクスチャがマッピングされUVが構成されます。
今回はそれを実施しUV展開します。

このように過去作成した、関係ないアライメントデータに読み込みテクスチャマッピング
UV展開することができる。

②フォトグラメトリとの位置合わせ


こちらはwrapというリトポロジーソフトウェアを使用します。

このソフトウェアではスケールの違うデータの位置合わせすることが可能です。
今回、先ほどUV展開した3次元計測データを移動スケール変更させフォトグラのジオメトリに合わせます。

読み込んだ状態。スケールが違うことが確認できる。
ノードの構成
このように位置合わせが可能になります。

③テクスチャマッピング&移植

スケール変更したデータを、元のmetashapeデータに読み込みます。
位置合わせされた後なので、元のアライメントデータとぴったり位置が合います。
そのままUVを保持に設定し、テクスチャマッピングを行います。

元のアライメントにインポートしUV保持を設定しテクスチャマッピング
テクスチャマッピング後。
UVが共通になります。
UVはこのように共通になります。

このようにテクスチャをマッピングしたら、①の時に作成した
スケール変更前のメッシュデータにテクスチャマップを設定します。
※この時マッピングしたデータのスケールを戻すのではなく前の物に
テクスチャを反映させることで、入力ミスなどで起きるスケールずれを防ぎます。


このようにすることで、スケールを維持した3次元計測データフォトグラのテクスチャもマッピングしたハイブリットなデータ作成が可能になります。

まとめ

フォトグラメトリ―と3次元計測機を活用したハイブリッドデータの作成手法をご紹介しました。​

今回のような、対象物化石のスケールを厳密に保持したデータを作成する場合以外にも、「フォトグラメトリでは、取得できないが計測機だと取得できる」対象物、たとえば、金属光沢・漆仕上げなど、にも有用です。​

​デジタルアーカイブの領域では、対象物に対して、極力安全に負担がかからない撮影手法を取ることは前提ながら、アーカイブの目的として、完成するデータにどのような情報を確実に担保したいのか?この点をしっかりと踏まえて、その目的に見合う最適な手法・機材選定・データ作成プロセスを設定するということがとても重要となります。​