見出し画像

2023年ワダデミー賞ブックス部門候補作

皆さん、こんにちは。
なかなか寒くならない12月。寒いのは嫌いなので良いような悪いような。
忘年会シーズンもあってか、体調を崩している方が多いようなので、皆さん体には気をつけてください。

私も寒さのせいか身体が張っており少しきつい日が続いていました。
鍼を打ってもらってようやく大分楽に。
打ってもらっている最中に足の輪郭がはっきりと呼吸で感じられるようになり、今までぼやけていた感覚がよりクリアになりました。
四角い部屋を丸く掃除していたのが、隅々まで届くようになった気がします。
緊張が感覚を閉ざしてしまうと自分だけではなかなか気づかないので、より深くリラックスしたい所存です。

また、前回のnoteには書かなかったのですが、川崎でクラスを立ち上げました。
不定期なのであんまり集まらないかなと思いながらも何名か様子を見に来て下さり、ありがたい限りです。
来てくれるメンバーのおかげでクラスが成り立っているというのが、改めて分かり、自分自身の取り組み方も1段と変化しているように思えます。
不定期ではありますが気軽にやっていますので、気が向いた方はいらしてください。

さて、ワダデミー賞のブックス部門の候補作発表です。
映画部門と同様に下半期に追加になったものに簡単にコメントを載せています。

【マンガ部門】
「波よ聞いてくれ 沙村広明著」
「僕のヒーローアカデミア 堀越耕平著」
「東京喰種 石田スイ著」
「アンダーカレント 豊田徹也著」

映画部門でもノミネートされていた「アンダーカレント」。
マンガのもつ独特な雰囲気で語られる物語はまた違った匂いを帯びており、違う物語に触れているように感じます。映画とは終わり方も異なり、ずっと手元に置いておきたい1冊になりました。

人を分かるってどういうことですか?

【映画関連部門】
「町山智浩のアメリカスーパーヒーロー映画 町山智浩著」
「韓国ノワール その激情と成熟 西森路代著」
「映画女優のつくり方 行定勲著」
「ハリウッド映画の終焉 宇野維正著」

最近だと“リボルバー・リリー”を監督した行定監督。“窮鼠はチーズの夢を見る”もあったので、ヒロインという一貫した哲学は見つけられていませんでした。
1人の監督から見るそれぞれの女優の個性の違いが語られており、劇場からでは見えない部分は映画を観る目を養うのに助けになりました。
「ハリウッド映画の終焉」は、なかなか辛辣な映画界の現状が投げかけられており、少しきつい本です。SNSや動画配信のサブスクが変えてしまった環境を直視したら、見えてくる希望はあるのでしょうか。

【エッセイ・その他部門】
「どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか みうらじゅん×リリー・フランキー」
「ご本、出しときますね 若林正恭編」
「身体は考える 甲野善紀×方条遼雨」
「熟達論 為末大著」
「言語の本質 今井むつみ×秋田喜美」

どっちが先かは忘れましたが、リリーさんが好きでラジオを聞いたり、映画で見たりしているうちにエッセイまで手を出すようになってしまいました。知識量もさることながらワードセンスが良く、いい加減なことを言っているように思えるのになぜか刺さる。
オススメはしにくいですが、興味のある方は是非。
「ご本、出しときますね」はシリアスな作家さんの意外な日常のアホさ加減がうかがえて面白い本でした。代官山の蔦屋書店をいじる場面もありましたが、私はそこでこの本と出会いました。
「身体は考える」「熟達論」「言葉の本質」は繋がりで読み進めていった本です。
システマ含め身体感覚というのは言語化しにくいものです。そんな身体感覚を丁寧に紡いでいっており、伝えるための努力の大切さも感じ、非常に勉強になりました。言語学者の今井さんは為末さんとの共著「ことば、身体、学び」も出されており、こちらもオススメです。「言語の本質」では、子供が言葉を学んでいる過程でどのような推論から原理を獲得していくかというのがとても興味深い学びでした。

【実用部門】
「お金をかけないアンチエイジング! 若さを保つ栄養メソッド 藤川徳美著」
「食欲人 デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン著」
「JUST KEEP BUYING ニック・マジューリ著、児島修訳」
「きみのお金は誰のため 田内学著」

「JUST KEEP BUYING」「きみのお金は誰のため」についてはどちらもお金の教養と呼ばれる本かと思います。「JUST KEEP BUYING」の方が投資向き、「きみのお金は誰のため」の方が広く一般向けかと思いますが、どちらも現在の環境を教えてくれるとともに、自身を知れというところに終着するところが良いなと思いました。
「きみのお金は誰のため」と合わせて「父が娘に語る経済の話 ヤニス=バルファキス著、関美和訳」も読んで欲しい1冊です。久しぶりに読み直して改めて思いました。

【小説部門】
「愛されなくても別に 武田綾乃著」
「52ヘルツのクジラたち 町田そのこ著」
「正欲 朝井リョウ著」
「ひゃっか 今村翔吾著」
「あしたの君へ 柚月裕子著」
「未必のマクベス 早瀬耕著」

全て下半期に読んだ作品になりました。
上半期の候補作を発表しようとしていた矢先に「愛されなくても別に」と「52ヘルツのクジラたち」を読んでしまい、上半期のランキングが瓦解して、結果的に発表することができませんでした。
本屋大賞は強いなぁと感じた2作。どちらも声なき声がテーマにあり、「愛されなくても別に」の素っ気なさも、「52ヘルツのクジラたち」の温かさもどちらも良かったです。
「正欲」は最近映画化されていました。朝井リョウは心の底に怒りのマグマがグツグツとしているように感じる作品が多く、つい引っ張られそうになります。
僕自身もいつでもハルクになれるくらいには身体の中に怒りが流れているように思いますが、よくここまで表現に変えられるなとある意味羨ましくなります。
「ひゃっか」は時代劇作家の今村翔吾が現代小説を書いたものです。ファンに刺さる設定も取り入れながら、ある意味時代劇よりも面白い?と思ってしまう部分もあり。これからの作品も楽しみです。
「明日の君へ」は「孤狼の血」シリーズでも有名な柚月裕子作品の1つ。
正義というものを書かせたら今一番の作家でしょう。正義は時に冷たく、あまり好きではない言葉ですが、その言葉に人情をもたせ納得させてしまうだけの説得力がある作品です。
そして「未必のマクベス」。
正直、今年のワダデミー賞はこの作品で間違いないように思っています。この小説を読んだ後は他の小説を読む気がなくなってしまい、物語の力を失ったこの世界に生きる価値があるのかを考えてしまうくらいのインパクトがありました。
ハードボイルドでありながら、純愛の趣もあり、緻密ながら、なめらかで読みやすい。不思議な1冊でした。

人を分かるってどういうことですか?
「アンダーカレント」で象徴的に語られる言葉です。映画ではリリー・フランキーさんが口にし、真木よう子さんにその言葉が棘のように刺さり続けながら物語が進行していきます。最近の映画では”ある男”に始まり、”市子”なども一緒に住んでいてもその人を分かっていたわけではなく、本当のその人を分かための物語が多いように感じます。人を分かるということはどういうことなのかという問いが投げかけられ続けている気がします。

きっと分からないだろうけど、分かろうとし続ける。
そのために物語に触れ続けているのかもしれません。

ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?