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北海道 鉄道残照~失われた鉄道の遺産あれこれ

その11 胆振地方の話題2:洞爺湖電気鉄道


1.ごあいさつ

ご訪問ありがとうございます。

ことしからnoteをはじめ、「北海道の廃線跡探訪」なる、国鉄地方交通線廃線跡を主にした記事を投稿しています。

ここでは車輌や遺構のことなど、つれづれなるまま、書いていこうと思います。個人的主観で、なるべく有名でなさそうなものを・・・

今回は洞爺湖とうやこ電気鉄道です。

2.洞爺湖電気鉄道

1/5万地形図「虻田」昭和19年資料修正測図に加筆 虻田鉱山の軌道も出ている
「洞爺湖停車場 省線虻田駅へ七粁二分、更に一粁四分の貨物線に依りて湖畔駅に至る洞爺湖を背景とせし最新型の停車場なり。」 開通紀念写真帖よりホームには電車+客車+電車の編成、右端は電動貨車 貨車以外のすべての車輌が写っている。

洞爺湖電気鉄道は、1929(昭和4)年1月、虻田あぶた(→洞爺)~洞爺湖~湖畔間8.6㎞を開業した鉄道です(洞爺湖~湖畔間は貨物営業のみ)。
車輌は木造電車2輛、客車1輛、電動貨車1輛、有蓋車1輛、無蓋車2輛という、ささやかな陣容でした。
これらの車輌はすべて木製2軸車で、客貨車は鉄道省から譲り受けています。
1941年5月、全線廃止となり、12年あまりの短い生涯を閉じました。

函館市中央図書館デジタルアーカイブには、「(洞爺湖名勝)見晴台より望む洞爺湖温泉場全景」という絵はがきがあります。
画面中央のT字路の左上方に踏切があり、左右に線路が延びています。右上に小さく三角屋根の洞爺湖駅舎左の湖岸に突き出た桟橋のところに湖畔駅が写っています。湖畔駅には貨車らしきものも見えます。

また、「洞爺湖大観(電鉄沿線ヨリ)」という絵はがきに、同じようなアングルで、湖畔(貨物駅)への線路と湖畔終点と思われる建物が写っています(3枚続きの右端)。

3.洞爺湖駅舎

残っていた洞爺湖駅舎(ホーム側) 1979年7月撮影(タイトル写真も同じ)
同 正面 1979年7月撮影

洞爺湖電気鉄道の起点虻田駅は国鉄駅でしたが、終点の洞爺湖駅には、とても9㎞たらずの小電鉄とは思えないような立派な駅舎がありました。これも当時から広く知られた観光地ならではといえるでしょう。
廃止後は個人に譲渡され、1970年代後半まで残っていましたが、有珠山噴火で被災した人たちの住宅建設用地となり、姿を消しました

洞爺湖駅附近のようす 正面の道路が旧駅前通り? 2016年9月撮影

4.廃線跡

洞爺湖電気鉄道の廃線跡は、大部分が一般道路になっていました。
しかし、洞爺湖方では、2000(平成12)年の有珠山噴火により、地形が大幅に変わったり、火口ができて近寄れなくなったりしているところが多くなっています。

洞爺駅から洞爺湖へ向かい、急勾配を上っていく路盤転用道路 2016年9月撮影

最大の見どころで、しかも行きやすい場所にある旧道架道橋の橋台へは、洞爺湖有珠山ジオパーク金比羅山麓ルートの散策路で行くことができます。

途中に、2000年の有珠山噴火による泥流のため放棄された、町営温泉浴場「やすらぎの家」やアパートなどの「金比羅火口災害遺構」があり、実際に目にすると、やはり衝撃的です。

保存されている災害遺構 左は町営温泉浴場「やすらぎの家」 2016年9月撮影
洞爺湖有珠山ジオパーク金比羅山麓ルート案内図

旧線架道橋の橋台は、上記のルート案内図の3’のところ(ルートがV字型に折れているところ)です。

旧道架道橋の橋台 右側の矢板は建設中の泥流路 1979年7月撮影
旧道架道橋の橋台 手前が洞爺湖方 2016年9月撮影

現地には、仮設のような解説板があります(上写真右下)。

解説板(ひどい写真ですみません) 2016年9月撮影

驚いたことに、グーグルストリードビューでも見られます

散策路からはこういう景色も・・・ 2016年9月撮影

洞爺湖電気鉄道の遺構は、路盤を転用した道路以外は橋台だけで、営業時の写真も、冒頭の開通紀念写真帖や絵はがきくらいしかないのではと思われます。電車が走っている写真はないのでは?

洞爺湖電気鉄道は、噴火災害のため廃止されたわけではないので、旧道架道橋の橋台は、ジオパークでは大きな扱いではありません。
それでも、噴火災害に直接かかわる遺構ではないのに、よくぞ残しておいてくれたと感心します。
1979年にはじめて訪れたとき、すぐそばに泥流路が建設中だったので、少なくとも、むき出しになっていた洞爺方の橋台は、これが見納めだと思いましたが。

今回はこのへんで。

おしまいまで読んでくださり、ありがとうございました。

ご意見・ご感想、そしてご要望など、どうぞお寄せください。

次回は少年自然の家にあった旭川電気軌道の保存車輌です。


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