経理のスキルセット分解

去年知人に誘われてnoteデビュー致しましたj.yamazakiです。
今回ちょっとした気まぐれですが、2発目のnoteを書こうかと思います。
(今回は完全に自分主導で書きたいこと書く予定です)


経理のスキルセット分解(案)

早速ですが自分が今回書きたい、言いたいことは以下です。

【経理】と呼ばれている、呼ばれることがある仕事は細かく分けるとここまで分けることができる、というのがこのnoteのメインテーマです。
各項目の中にはその業務に従事している人が世間一般ではどのような呼ばれ方をしているか、どういった人がその業務に従事しているかを記載しています。
まずは項目一つずつ解説していきますね。

経理業務の4区分(横)

まずは横に並んでいる4つの各項目の説明から
一応、世間一般に使われることがある用語を用いているつもりです。

財務会計

おそらくですがここが皆さんが一般的にイメージする「経理」という仕事だと思います。
仕訳を切って、月次・年次を締めて、外部に提出する財務諸表を作成する仕事を【財務会計】と言っておきます。

税務会計

細かい話はしないようにしますが、実は「会社がいくら儲かったか」と「いくら税金を納めるのか」とは別々に集計をしなくてはいけないらしいです。単純な利益×税率ではないんですね。
その結果として発生する「いくら税金を納めるのか」を計算・算出する仕事を【税務会計】と言っておきます。
ここまでは、財務会計のついでに何となくやっている人が多いんじゃないかなと思います。

管理会計

ここから話が少々複雑になりまして
「予算対比でどうだったか」とか「顧客当たりの単価はどうか」とか「経費を支出した結果、重要なKPIの改善に繋がったか」とかとか
つまり「経理の数字と事業の指標を組み合わせて、経営の把握・改善を行う」ことが【管理会計】の仕事です。

財務

「あれ?さっき財務会計はやったよね?」と思われるかもですが、別なんです。
これだけ「会計」という名前が付いていないのですが、この仕事だけは「自分で仕訳を切ったり、数字を分析すること」が仕事ではないからです。
この【財務】という仕事の目的は「お金の出入り」です。
届いた請求書だったり毎月の給与の支払いをすることが仕事ですが、一番花形なのは「銀行借入や新株発行などで外からお金を調達すること」でしょうか。

設計と実装(縦)

横の分解はしたので(ここまではご存じの方も多いはず)
次に縦の分解に移ります。
ここからがこのnoteのオリジナルの部分です(だと思う)

設計とは

会社だと経営者
スポーツだと監督
家を設計する設計士
ソフトウェア・Web等を作成する際のデザイナー

【何をするか】【何を作るか】【どう作るか】という【プラン】を決めるのが【設計】の仕事です。
上記以外にも、料理を作る時にはレシピがあるし、車を作るときにも設計図があります。突き詰めると世の中で【何かをしよう・作ろう】というときには必ず【プラン・設計】があります。

実装とは

会社だと従業員
スポーツだと選手・プレイヤー
家を作るのは大工・職人
ソフトウェア・Web等を実際に作るのはエンジニア

【プラン・設計】されたものに従って動く、手を動かすのが【実装】の仕事です。
上記の例ですとレシピに従って料理を作り、設計図に従って車を作ることです。

【設計】の方が【実装】よりも偉いというつもりは全くないです。
スポーツでは選手の方が花形で年収も高いですし、経営者と従業員の関係だって従業員を蔑ろにする経営者は長くは持たないでしょう。現在の転職相場を見ても【デザイナー】と【エンジニア】で待遇が違うなんてことはありません。
【実装】の持つ特徴を生かして最も効率よい動かし方をするのが【設計】の仕事であり、そういう意味では【設計】は【実装】に縛られています。

何故、縦横で区切ったのか

一番上の表は、横の「経理業務の区分」と縦の「設計・実装の区分」で縦横に区切られていますが、何故このような分け方をしているかと言いますと、、、

  • 経理業務の横の区分も厳密には違う業務でありそれぞれ別々のスキルを身に着ける必要がある

  • 同じ経理業務の中でも「設計」と「実装」にはまるで違うスキルが必要になる

というように思っているからです。

経理業務の【設計】と【実装】

先程【何かをする・作る】時には必ず【設計】が必要だ、と申しましたが、経理業務も例外ではなく、4つの区分全てに【設計】と【実装】があります。
特に【設計】というのがイメージ付きづらいと思いますので、経理業務4区分の【設計】について説明していきます。

財務会計の【設計】

財務会計の【設計】について最も権威があるのは公認会計士です。
様々な会計基準が毎年新設、改訂されていますが、「会計基準に従って財務諸表を作る」ときに「どのように作ればよいか」を【設計】する時には、CFOやCAOと呼ばれる人が公認会計士にお伺いを立てながら【設計】をしていきます。
公認会計士の中には自分がCFOとかになって自分で【設計】をやり始める人もいますね。

税務会計の【設計】

似たような形で、こちらは税理士が権威、、、と思いきや最終的に行き着くところは国税庁です。
国税庁が通達を出し、それに従った税金計算ができるように、これまたCFOが税理士と頭を突き合わせながら税務会計の【設計】をしています

管理会計の【設計】

【設計】する人は社長・経営者です。
いやほんとに、予算を決めるのは最終的に社長ですし、社長が【こういう分析を出せ】と言われたらそれに合わせて資料を作成することになりますし、「経営の改善」に最も責任を負うのが社長なので社長が【設計】です。(実際には社長とCFOが膝つき合わせて、CFOが手を動かして【設計】する場合も多いです。)
これだけ最終権威者が社長・経営者なので世間一般的な基準とかがなく、会社毎に、最も見たい形に最適化された【設計】が会社の数だけ存在します。

財務の【設計】

財務の【設計】としてやらないといけないことは、端的に箇条書きにします
(この中で自分が一番苦手な領域なので解像度低いです)

  • 会社の継続や事業戦略達成のためにどれくらいのお金を調達する必要があるかを考える

  • 自分たちの会社があとどれくらい借入、株式発行をする余裕があるか、会社は十分な返済能力や配当原資を持っているかを考える

結果として起こっていること

このように経理業務を8つに分けて考えると、経理人材を巡って起こっている問題について以下のように捉えなおすことができます

経理のキャリア形成が困難になっている

「8つもマスターするなんて無理だよ!」と思う方がいるかもしれません。
おっしゃる通り、自分だってできてませんし、全部マスターした人を見たことすらありません。

しかしながら世の中では「経理と名前の付く人は上記の業務を全てできるはず」と思っている人のが多いのではないか、と感じています。
そしてそれに応えようとした結果、「どの業務もそこそこできるそこそこの経理人材」というのが育ったりします。
もちろんそういった経理人材は幅広く色々な求人に応募できるかもですし、その中で何か一つでも特技を身に着ければそこからよいキャリアを歩むことができるかもですが、

  • 8つの経理区分のどれか一つに特化することで、特化型のキャリアを歩むことができる世界観

  • 8つの業務区分ごとに求めるスキルや妥当な待遇=キャリアのゴールのビジョンが明確になっている世界観

というものがもし実現できたなら、経理のキャリアプランというものがもう少しはっきりと描けるのではないか、という妄想です。

(余談ですが2社目のSaaS企業に入社してデザイナー・エンジニアの違いを始めて認識できたことがこのnoteのアイディアの基礎となっており、経理も同じように区分ができるようになるといいなぁ、という妄想です。)

採用のミスマッチや採用後のパフォーマンスが上がらない原因となる

先程も書きましたが世の中では「経理と名前の付く人は上記の業務を全てできるはず」と思っている人が非常に多いため。採用のミスマッチの原因となっています。

例えば財務会計の【実装】しか知らない人に管理会計の【設計】や財務の【設計】を求めてしまうと絶対に本人はキャパシティ不足で苦しみますし、採用した側も期待通りのパフォーマンスを発揮してくれないと悩む原因になります。
特に盲点なのが財務会計の【設計】を得意にしている人間に財務会計の【実装】までさせようとすると上手くいかないケースが多かったりします。(【設計】と【実装】にはスキルの違いだけではなく「向き・不向き」といった面でもまるで別の性質・性格が求められたりするので)

まぁ経理を知らない人がそう思うのはやむなしですが、往々にして経理に従事する人間自身がこの8区分を理解しておらず、たまに「公認会計士として財務会計の【設計】ができるから【実装】もできるはず」とか「管理会計の仕事をしていたから経理の実務もやってみよう」とかとか、8区分の業務の性質の違いを理解せずにチャレンジしてギャップに苦しむケースも多いんじゃないかな、と思っています。

終わりに

長々と書きましたが自分も財務会計の【実装】と他の区分をいくつか「何となく」できている人材に過ぎませんので、経理人材とスキルにまつわる問題を解決できる訳ではありません。

ですがこのnoteが何かヒントになって、皆様の会社やキャリアに良いきっかけができれば、と思う次第です。