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#5『ナチュなる坊や』の思い 言葉が出るとき

 ある夜 ナチュなる坊やは、不思議な夢を見た。夢の中で、ふと目を覚ますと、頭の上に何か光るものがある。でも、あまりにまぶしすぎて、どうしても目を開けることができない。そこで、目をつぶって、これから何が起こるのか、しばらく様子をみることにした。

すると、頭上から
「ナチュなる坊やのはるまくん、今までありがとう。君の笑顔と願い、それにナチュなる光線のおかげで、たくさんの人が自然な状態に戻って、前よりも幸せになりました。本当にありがとう。
 でもそろそろお役目は終わりです。もう『ナチュなる』だけを話すことに無理が出てきました」

「明日の朝、起きたら言葉が出るようになっているよ。でも、うれしくて心の中の言葉を全部外に出さないでね。このことは、君ならわかるでしょう」

「うん、気をつけるね」
ナチュなる坊やは明日の朝のことを想像し、少しドキドキした。

「あの、、、ぼくから、質問してもい~い?」

「はい、何なりと」

「スーパーマンは大人でしょ?でも、どうして小さい子どもが『ナチュなる坊や』になったの?」

「それはね、力で戦う時代は終わったからです。子どもたちの笑顔によって幸せを感じ、自分の自然な状態を取り戻すことで、みんなの心が安定するのです。そういうほのぼのとした幸せが積み重なり、争いのない平和な世の中になったらいいですね」

「それと、、、どうしてぼくが『ナチュなる坊や』になったの?」

「思い出してごらん。君のお気に入りの服には星のマークがついているし、
赤いマントをひるがえして、ぼくは正義の味方になるって決めたでしょう?」


「ああ、そうだった、、、、」
2才のお誕生日に決心したのを思い出した。

「最後にナチュなるの星を見せてあげるね。はい、手のひらをだしてごらん」
はるまは両手を出して、その星を落とさないように受け取った。

(なんて、きれいなんだ。虹のような色も見える)

「ほんとうに、きれい」
そう心でつぶやいた瞬間、星はすう~っとはるくんの、のどの奥に吸い込まれていった。

「ああ、どうしよう。ごめんなさい」
すっかりうろたえてしまったはるくんに、その声の主は

「驚かせてごめん。それは一生、君の心の中で輝き続ける星だよ。
ナチュなる星から、君へのプレゼント」

「この星が胸の中にある君は、これから自分の人生を輝かせ、できるときは
他の人が幸せになるお手伝いをしてください。ナチュなる光線は使えなくても、君は一生ナチュなる坊やです」

「はい。僕はナチュラルマン、その後はナチュラル爺やと進化していきます。『ナチュラル爺や』ふふふ、、、これも楽しそう!」

「最後にこの世にはナチュなる嬢ちゃん、ナチュなる坊やが何人かいます。
将来『この人がそうかも?』と思う人に出会ったら、『ナチュなる』と言ってください。『光線』と返ってきたら、その人は小さい時にはるまくんと同じ活動をしていた仲間です」

翌朝、ママが
「はるくん、起きて)
と言ったので、
「はあい。ママ」
と答えたらママはとっても驚いて
「パパ! パパ!はるくんがしゃっべった!!」
と叫び、そのあとは泣きじゃくって言葉にならなかった。


それから20年

 4月から社会人になる晴馬は、演劇サークルの佑太に幼いころのことを尋ねてみたい衝動にかられた。それというのも彼には、何でも話せる友達という思いを超えて、なんとなく根っこの部分がつながっている気がするからだ。

 今日こそ勇気を出して「ナチュなる」と呼びかけてみよう。知らない人は「何?」で終わるから。

考えてみたら、思い切っていうことでもないと晴馬は気づいた。

 いろいろな話をした後に晴馬は
「小さいころの仲間だけにわかる合言葉があるから、言ってみるね」

「ナチュなる」、、、、、、、

、、、、、、、、でも、佑太から合言葉は返ってこない。

「やっぱり、僕の思い違いか」
とあきらめかけたとき

「光線」
佑太が応えた。

「えっ!  君も元ナチュなる坊やなの?」

「そうだよ。でも今の晴馬の合言葉で、二人は仲間だったという事実に驚き、
その次に、巡り合えた喜びがじわっときて、すぐに応えられなかった」

「うれしいよ。君も僕と同じ気持ちで生きてきたと分かって」

就職で遠く離れてしまう二人だが、これからは、それぞれの場所で自分とみんなの心の平和を目指していこうよ。

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