見出し画像

放射線治療の4R

放射線治療を行う際には4Rという概念が重要になってきます。
4Rというのは細胞や組織に放射線が当てられた際に起こる変化のことです。

4Rには以下の4つがあります。

①回復(Repair)
放射線は一回の照射でたくさん当てるよりもある程度小さいエネルギーの放射線を何回かに分けて照射した方が正常な細胞の回復が起こりやすくなり、正常細胞の生存率が高まります。
放射線治療では何回かに分けて照射を行う(分割照射)ことで、正常細胞はできるだけ殺さずに腫瘍細胞を多く殺すことができます。


②再酸素化(Reoxigenation)
放射線が細胞に与える効果は酸素がある条件において高まります。これを酸素効果といいます。
治療にはx線という種類の放射線が用いられることが多いのですが、x線は間接作用を引き起こしやすい性質があります。
間接作用というのは放射線が細胞に含まれる水分に照射されたときに、活性酸素(酸素が変化したもので毒性が高い)という物質が放出され、DNAが傷害されることです。
活性酸素はエネルギー的に不安定なので、他の物質とくっつこうとします。このときに活性酸素とくっつく物質がDNAだと、DNAが破壊されてしまいます。

腫瘍細胞がある場所では酸素濃度が低い場所と高い場所があります。
放射線を照射すると、酸素濃度が高い場所の腫瘍細胞は死にますが、低い場所の腫瘍細胞は死にません。(これが酸素効果です)
しかし、酸素濃度が高いところの腫瘍細胞が死んだことで、酸素濃度が低かったところに血管から酸素が供給されるようになり、再び酸素濃度の高い部分が生じます。
ここに再び放射線を照射することで最初の照射で死ななかった腫瘍細胞を殺すことができます。
そのため、放射線治療では定期的に照射する必要があるわけです。

放射線の治療効果を高める方法としてオキシドールを照射部位に塗布・注入するという方法があります。この方法はコータックと呼ばれています。
オキシドールは反応すると酸素を生じるので、これも酸素効果を利用した治療法です。


③再分布(Reassortment)
細胞の分裂には細胞周期というものがあり、細胞はこれに従って分裂を繰り返しています。
細胞周期は主に4つに分けられます。
DNA合成準備期、DNA合成期、分裂準備期、分裂期の4つがあり、分裂期が終わると再び、DNA合成準備期に入ります。このサイクルを繰り返すことで細胞は増殖していきます。
体はたくさんの細胞によって構成されていますが、細胞ごとにその周期のどの段階にあるかは異なります。

この4つの時期ですが、放射線の影響の受けやすさ(感受性)に違いがあります。
この中でもDNA合成期の後半は放射線に対する感受性が特に低いです。
そのため、放射線を照射すると、DNA合成期後半の細胞は死滅せずに残り、他の周期にある細胞は死んでしまいます。
これにより、照射部位周辺では細胞分裂の周期が揃います。
ある一定の期間をあけて再び放射線を照射すると、最初に照射したときに死ななかった腫瘍細胞は別の周期に入っているので、2回目以降の照射でさらに腫瘍細胞を殺すことが出来ます。


④再増殖(Repopulation)
腫瘍細胞や正常細胞は放射線照射の影響を受けても、死んでしまう程の影響を受けなかった場合には細胞内で修復機構が働き、行き続けようとします。
死ぬことなく、修復ができた細胞は再び、分裂を開始します。
正常細胞が再増殖してくれるのはいいのですが、腫瘍細胞が再増殖されては困るので、やはり、何回も照射を行うことで再増殖する腫瘍細胞を減らすことが出来ます。


放射線治療では腫瘍細胞だけでなく、正常細胞も影響を受けてしまいますが、腫瘍細胞と正常細胞では放射線への感受性が異なります。
そのため、腫瘍細胞には効きやすく、正常細胞には効きにくいエネルギー量の放射線を当てることで結果的には体に得られるメリットが大きくなるわけです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?