ロック
『お婆ちゃん何飲んでるの?』
小さな頃のたっくんは、畳の広がる和室で、ばぁちゃんに尋ねた
『レッドブルウォッカじゃよ』
ばあちゃんは優しく微笑んだ
俺のばあちゃんは朝からレッドブルウォッカ飲むタイプのばあちゃんだった
そんなばあちゃんはウォッカが効いてご機嫌の様子だ
『そいじゃ、たまにはばあちゃんの昔話をしよう』
そう言うとばあちゃんは着ていたチャイナドレスを脱いで椅子に腰をかける
ばあちゃんの体は傷だらけだった
ベージュの塊が椅子に座って語り出す
『懐かしいなぁこの傷は…』
ばあちゃんは脇の下のたるみきったシワを傷と言い指刺した
おもむろに酒を口に含み
その傷に含んだ酒を吹きかけ、レコードでビートルズを流し始めた
『この傷は、リンゴスターにつけられた傷だよ』
ばあちゃんはビートルズのドラムと
シノギを削りあった、嘘のエピソードを話し始めた
レコードから流れるペニーレイン
脱ぎ捨てられたチャイナドレス
飲みかけのレッドブルウォッカ
仏壇にチャーハンのお供え
夏が近いと僕は思った。
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