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自然に生かされている

前回の投稿で自然のお話を少しだけしたが、リアルガチで水俣の自然の中には特別な何かが存在している気がした。杉本肇さんに初めての漁船を体験させていただいた。初めての経験だったのもあったし、ちょうどその日は白波が立っていて海がザブンザブンとなっていたのもあり、船の上でギャーギャー騒いでしまった。最初は杉本さんがわざと船を揺らしているのかと思い、初対面にも関わらず「わざとやってますか?!」と必死になって杉本さんに叫んでしまった。そのくらい海の凄まじい力を五臓六腑で感じた。これは酔うなと思い、その日はすぐに陸に上がった。もうちょっと酔いづらい体質だったらな、とすごく切ない気持ちになった…
それから、「冷水(ひやすじ)の池」というところにも連れていってもらった。現地でずっと案内してくださっていた浮浪雲工房の金刺潤平さんと森紗都子さんに「ここにあるお水は美味しいんだよ」と教えていただいて飲んでみると、スッと溶けてなくなる、とても軽い口当たりのお水で、身体のなかのモヤモヤが浄化される感じがした。紗都子さんに「太陽の光が当たるだけでまた違った景色が見えるんだよ」と教えていただいて、お日様が出るまでしばらく待っていた。すぐにお日様が出てきてくれて、光が当たると、冷水の池の周りが全然違う表情を見せてくれた。写真で見てもその違いがはっきりと分かる。水俣の自然に触れると不思議な感じがした…水俣の自然にはぜっっったいに特別な力をもった何かが存在している気がした。

光が当たる前の冷水の池
光が当たっているときの冷水の池


それと同時に、この時「ああ、自然って全部繋がって、生かし生かされ合っているんだな」と実感することができた。水俣に行った初日に、水俣病資料館で潤平さんがその繋がりについてお話をしてくださった。田んぼ用の除草剤が、ただですら水が淀みやすい不知火海に流れ込み、海草が死んでしまったことがあったそうだ。「学校で『海』の保全、『森』の保全などと言われるけれど、海も陸も空も全部繋がって生きている。それなのに、別々にして学ぶのはどうなのだろうか。」最初にそれをお聞きしたときは確かにそうだとは思いつつも、実感として受け止めることができなかった。しかし、水俣で少しの間過ごしてきて、少しだけその繋がりを自分の目で確認することができた。
そして自然は、私たち人間をも繋げてくれる力を持っていると、杉本さんのお話をお聞きして思った。杉本さんのご家族は代々網元であった。漁というものは「組織労働」であって自分一人だけの力で営んでいくことなどは当然不可能であり、家族やその地域との繋がりが大切にされていたそうだ。だからこそ、水俣病という出来事が起こったことによってコミュニティが壊れたことが一番の傷だと、杉本さんのお母様の栄子さんはおっしゃっていたそうだ。近代化が進み、さらなる発展のためにチッソの工場ができたことによって、自然界が歪みはじめ、人間たちのコミュニティにも亀裂が入ってしまったのかなと思った。それくらい、私たち人間は自然に生かされながら過ごしてきているんだなと、自然の偉大さを感じた。
『ロラックスおじさんの秘密の種』というアニメーション映画がある。その映画では、木を斬り倒して洋服を作ったらそれが大ブレイクして、森をさらに切り開いて工場を作り、「家族のために」洋服を大量生産して大儲けしようとした青年のことが描かれていた。でもその青年は結局森で出会った妖精・ロラックスおじさんや動物たち、家族との繋がりをも失い孤独になってしまった。水俣とは状況が違う部分もあるが、自然を壊してしまうと自分たち人間の繋がりを失われてしまうということが現実にも起きていることを知って、とても恐ろしい気持ちになった。水俣に来て、皆さんにお会いする機会がなかったら絶対に気づかなかったなあ…。

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