見出し画像

司法試験・予備試験に暗記はいらない

司法試験って六法全部覚えるんですよね?

よく聞かれる問いであるが、逆に問いたいが六法全部覚えることなんて人間に可能なのか?
私は人間をやめた覚えはないが、司法試験・予備試験にちゃんと合格している。
また、論文の添削を除き、大学の講義や予備校にも十分には通っていなかったことから、もはや暗記すらいらないと個人的には思っている。
今回は、司法試験への誤解、つまり暗記が必要であるとの誤解を解こうを思う

法的アプローチとはなにか

まず、司法試験について考えるため前にそもそも法的アプローチとはなにか、以下の例について考えていきたい

設問
あなたはA小学校の教員である。以下の行為をした生徒がいる場合、あなたはどうするべきか。なお、A小学校には、みんなのルール10条「A小学校の生徒は、廊下を走ってはならない。廊下を走った場合、次の日の日直をしなければならない」というルールがある。
①休み時間になり、人の多い廊下を勢いよく走っていったA君
②授業中に、トイレに行きたくなり、だれもいない廊下を走っていったB君
③休み時間、お父さんが倒れたとの校内放送を受け、慌てて人を多い廊下を走っていったC君

早速回答を検討していきたいが、まず結論からいうと法律的文章の書き方は大枠以下のようになる
①生の主張
②法的根拠
③要件検討
④あてはめ

①生の主張とは、あなたの主張である。つまり、今回のケースだと、生徒に対して①次の日の日直をしろ②罰金1億円支払え③反省文を書いてこい、といったなんでもありの生徒への主張である。

とはいえ、廊下を走って罰金1億払えと言われても「は?」ってなるのが普通であろう。そのためにあるのが、次のプロセス、②法的根拠である。
今回のケースだと、みんなのルール10条「廊下を走ってはならない。廊下を走った場合、次の日の日直をしなければならない」というルールが存在するため、生徒に対して、次の日の日直をしなさい、根拠はみんなのルール10条といえる。

さて、ルールにただあてはめるだけでいいかというとそうではない。全てのルールには理由が存在する。その理由を検討するのが、③要件検討である。
廊下を走ってはならないというルールはなぜ存在するのであろうか?
いろんな回答があるかと思うが、一般的なものは人にぶつかり危ないからであろう。
ということは、人にぶつかってしまうのを防ぐために存在しているのが、廊下を走ってはならないというルールだと解釈ができる

では、AからC君について具体的に④あてはめをしていこう。
まず、Āくんは、廊下を走っており、その時は休み時間中で人も多くいたとあることから人とぶつかる可能性もあり、「人にぶつかってしまうのを防ぐため」という趣旨に反してルールを破っているといえる。
そのため、A君は次の日、日直をしなければならない。なぜなら、みんなのルール10条「廊下を走ってはならない。」というルールを破ったため。となる
次にB君はどうだろうか。B君も廊下を走ってはいるものの、授業中であり、そのとき誰もいない廊下であったため、人とぶつかる可能性は基本的にはないといえる。そうだとすると、「人にぶつかってしまうのを防ぐため」という趣旨に反しないといえる。そのため、ルールの趣旨を考えると、特にお咎めなしでよいといえる。
さて、最後にC君はどうだろう。直感的にはお父さんが倒れたという緊急事態であるため、おとがめなしでいいのではと思う。もっとも、人の多い廊下を走っており、人にぶつかる可能性はあり、これはルールの趣旨に反しているといえる。いやいやかわいそうと思う方もいると思うが、その思う人は、自分の息子の手術費を稼ぐために親を強盗殺人で殺されても文句を言わない心の広い人を思うが、基本的に少数派といえよう。以上から、C君も次の日の日直をしなければならないといえる

ざっくりとした説明のため、異論がある人もいるかもだが、だいたいはこんな感じで、基本的に全ての司法試験の問題は上の4つのプロセスで解ける。

司法試験とはなにか

ではもう一つ例を考えながら司法試験について考えたい。

設問
あなたはAマンションに住もうかを検討している。そのうえであなたは以下の動物をマンションで飼いたいと思っているが、それが許されるか?なお、マンションには、マンション規約20条「猫は飼ってはならない」というルールが存在するとする。
①猫
②犬
③カメ
④イグアナ

この問題も上の4つのプロセスにのって検討してみよう。
まず、猫について①生の主張は猫を飼いたい。②法的根拠、これは今回は反対者(マンション管理人)の根拠といえるが、マンション規約20条「猫は飼ってはならない」といえる。③要件検討としては、猫を飼ってはいけない理由も多くあると思うが仮に動きまわって汚れる(毛などを落として)のを防止するためとしよう。そうだとすると、④あてはめとしては、まったく動かない等の特殊事情がない限り、猫は飼えないとなる

同様に犬も、要件としては猫ではないため、よいように思えるものの、趣旨を考えると動き回って汚れる可能性があるといえ、犬もだめといえうる。
となると、カメは基本的に水槽で飼し、毛などを落とすこともないから飼ってもよい。イグアナは知らん。

最後は適当になったものの大枠はこういった感じ4つのプロセスを駆使して、納得感のいく文章を作成するのが司法試験である。

なぜ、司法試験に暗記はいらないのか

さて、本題。
なぜ、司法試験に暗記がいらないのか、それは基本的に上の4つのプロセスの中に暗記の要素がないからである。
まず、①生の主張は、ただ要求をかけばよいので、暗記は必要ない。
次に②法的根拠については、論文の試験中は六法というルールブックが配布されるため、そこから探せばよく暗記の必要はない。
③の要件検討も、なぜルールが存在するかを合理的に思考すればよく、暗記は必要ない。④のあてはめもそうである。

司法試験で落ちる人

逆に暗記をしようとすると司法試験の合格は困難になる。

上の例マンションの例でいくと、落ちる人は問題を見たとき「犬を飼っていいかどうか、判例や予備校でしたことないぞ、勉強不足だった」と思い、より勉強しようとするのだが、次でてくるのは、カメであり、また勉強不足と思い勉強しても、次でてくるのはイグアナである。つまり、見たことない問題を意図的に司法試験は出そうとしているため、暗記で乗り切るのは難しいといえる。

加えて、暗記の人は④のあてはめを思考放棄する傾向にある。司法試験の問題は今ではわりと長く様々な情報が与えられている。それにもかかわらず、判例では犬はオッケーといわれてるのでオッケーですと判例暗記の思考放棄で臨むと点数は入らない。

暗記が流行る理由としては受験生としても安心するからというのと、予備校のビジネス、つまり講義を取ってもらえばもらうほど収益になるといったWin-Winの関係からなのであろうが、基本的に上の通り4つのプロセスで問題は解け、暗記はいらないといえる。

最後に

以上にように基本的に司法試験に暗記はいらないといえる。

もっとも、試験時間内に法的根拠をさがすのが困難ゆえにある程度どういった条文があるか覚えておくとか、処理の仕方のショートカットのために判例を学んでおくとか暗記が一切必要でないと思わない。
が、受験生が思っている以上に暗記はいらないと思う

むしろ、どういった人が受かるというと逆に暗記が嫌いな人といえよう。

暗記が嫌いだからこそ、誰よりも必死に根拠を探し、解釈をし、あてはめを行う。

だから、暗記はもうやめよう

異論はいくらでもあってよいと思うが1人でも役に立てばとそれでこのnoteに意味はあると思っている。

個別に相談がある方はTwitterにて連絡を(一応司法試験は全ての科目Aでした)


中村公哉@Web3弁護士×VC(@kimiya_nakamura)さん / Twitter



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?