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歴史小説『はみだし小刀術 一振』第8話 話し合い

宇喜多直家は西大寺、備前福岡を手中に治める形で現在の岡山市東域邑久郡の辺りを吉井川沿いに海まで広く支配下においた。話を少し戻し、乙子城にあって直家が海賊退治を担った時、直家の方法論の一旦となる資料が残されている。資料には宇喜多直家は海賊を平定する為、海賊となった。と少し驚く事が書かれていた。直家の兵が他の兵に比べて異質だったひとつには初期戦力の乙子城において直家が兵を集めていた時その3割ほどは平定した海賊を兵に取り込んだ者達だったと簡単にその資料には記されていた。闘争と裏切りと残虐の戦国は続く。

小文太は左腕手首近くに巻き付けてあった鉄糸(針金)を寄り込み、薄い鉄板をはめ込んだ手製の手硬を半身に構えながら左手付近まであげた。
脇差しを構えた大男の傾奇者は三角で尖る形で小文太と対峙する。『あんたはカシラなのか?』小文太は聞いた。
『いや違う。一番強い者は他へ出掛けておる。』
『そうなのか?』
答えると同時に小文太は高速で大男に近づく。
斜めに振り上げられた第一撃をすんでで交し、小文太は外した相手の体制のまま懐に入り腕に腕を絡めた。
瞬間激痛に大男は脇差しを土の地面にとり落とした。
落とした脇差しをコレも鉄板の先に入った足袋で遠くに蹴り、扇を開くように回転し素早く横移動しながら残った左腕を捻る形で投げを打ち地面に大男を倒す。
『こっちも折っていいか?』
左腕の肘関節を極めながら共に地面に転がったまま、聞いた。大男は地に倒れ首を振った。
『じゃ、やめとくか。』
極めた腕を離し後ろにでんぐり返る形で、服をはらいながら小文太は立ち上がった。
『今日は話し合いに来ただけだ。また一番強い奴なといる時に話し合いに来る。』
静まり返ったもの達に話す。

もう既に話し合いに来ただけではなくなっているが、小文太は気にも留めず、左足を軸に出口に向かって廻り、服の残りを払いながら引き返し始めた。

思わず唖然とうなづいてしまった最初の尻餅の若者に話しやすいと思ったのか、出口の掘っ立て門の方向に向かってスタスタしばらく歩きながら振り返って見回した後、視線を移し『また話し合いに来るからな。』
と大声で告げた。

もっと奥まで調べた方が良かったか…まあ、いいか、めんどくせぇし…

唖然として見送る傾奇者達を視線の横に見ながら逃げるような早足で去っていく。

右腕の手首から肘にかけての辺りを押さえ、呻きながらようやく地に転がっていた大男が立ち上がる頃には、小文太は掘っ立て門に近づきかけていた。

その後何故か傾奇者に付け狙われ、その度に小文太は撃退していく。なぜなのかまったく小文太は理解できなかった。
『また話し合いに行くと言ったのにな。もしかして話し合いに来たのか?その割には襲いかかってくるしな。他国者の考える事はようわからん。』
仲の良かった年上の弥助に相談し話したと書いている。
『ワシは違うと思いますけど…』
弥助は呆れながらそう答えたと自らの書き付けでは結んでいる。


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