22. 小説MCH - フレアと母「母の幸せな一時」(修正ver.4 2024/3/29)
「驚くのはまだ早いでしょ〜w」
アティカはニッコリ笑ってフレアをツッコむと、またすぐに少し真顔で話を続けていく。
「ねぇフレア。裏山の洞窟深くに、暗闇の中だけで生活している大きな闇グマ(ヤミグマ)がいるって聞いたことがあるでしょ?」
「うん。村長さんが、危ないから絶対に近づいちゃダメだって。でも、洞窟の中に入らなければ、あいつらは外には出てこないから大丈夫だ、って言ってたよ」
「そうなのよ。あの熊たちは昔から、洞窟の外には出てこようとしないのよね。外の光に当たると急におとなしくなったり、眠っちゃったりするからって言われているよね」
「うん。だから、外に出てきたところは、一度も見たことがないよ」
「でしょう。でもね、むか〜しむかしに、そんな闇グマが、洞窟の中でもなんでもない水辺で、しばらく暮らしていた跡がみつかった、っていう話があってね...」
「え〜!?どういうこと??」
「だから...、光をさえぎるものが何もないはずの場所なのに、闇グマたちが生活できていたっていうことは...、
実は、むか〜し昔のその昔、この光あふれるお空が、ず〜っとまっ暗な時代があったんじゃないか?
...っては〜な〜し。
これが今日のアティカの"お空の村伝説" でした!」
アティカはフレアの手を取り、呼吸をあわせると、
「この話を、信じるか信じないかは...」
「あなた次第です!」
二人で一緒に、最後の決めゼリフをバッチリ決めた。
「母ちゃん、すご〜い!」
おかげで、フレアは大満足の笑顔である。
「...まぁ、そうは言ってもさ、この空がぜ〜んぶ真っ暗だったっていうのは、ちょっと大げさな気がするけどねw」
フレアは笑いながら目の前の青空を見上げると、
「だってさ、もしこの光の空を全部まっ暗にするならさぁ。それって、この世界をぜ〜んぶスッポリ、洞窟の中に入れちゃうとか、窓がないお部屋で覆っちゃう、ってことでしょ〜?」
——— そんなのムリムリw
フレアは声をあげて笑っている。
「あら、あなたもやっぱりそう思う?」
アティカも一緒に笑いながら、
「まぁでも、これがアティカの "村伝説" 、っていうことで。ね?」
「うん。やっぱり母ちゃんの話は、"村伝説" だった、っていうことだ、ねw」
フレアは、自分の命名センスに、ちょっとだけいい気分。
「あ、ねぇねぇ母ちゃん! "アティカの村伝説" は、他にはもうないの〜?」
フレアは「おかわり〜!」と言わんばかりに、アティカにぐいぐい迫っていく。
「もちろんあるわよ〜!実はねぇ...
私たちがみんな持ってる、この "しずく" がね。
実は、たった1人のおじいさんが作っているんじゃないか?
...っていう話があってね...」
「え〜、なにそれ〜?w
さっきの話よりもさらにヘンテコな話〜!
さすがは母ちゃんの "村伝説" 、だねっw」
思わず吹き出すフレアと一緒に、「そりゃあ、そうよねぇ」と、アティカも腹を抱えて笑い出す。
——— 今日もいっぱい笑ったなぁ
この光あふれる空のもと、満面笑顔のフレアを見つめて、今日もアティカは幸せな気持ちでいっぱいになった。
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