23. 小説MCH - アクア「リアナお姉ちゃん」(修正ver.5 2024/4/6)
「アクア〜!こっちよ〜!ほら、早く〜〜!」
遠くの方に小さくなった人影が、大きな声の響きをのせて、元気に手招きしている姿がボンヤリ見える。
「リアナお姉ちゃん、待ってよ〜」
アクアは小さく顔をあげて、一旦、足を止めると、また自分を呼ぶその声に向かって歩みを進めた。
隣を静かに流れる清流の水面は、樹々の隙間から覗く空の光を受けて、キラキラと輝いている。
平坦ではあれど、舗装もされていない森の中の細道は、そのほんの少しのあかりでも、
——— 案外歩きやすい
はずなのだが、アクアに言わせてみれば、
「もう!お姉ちゃんが早すぎるんだよ〜」
というのが、まさに正しい表現のようである。
アクアは、そのまま森の先へと歩んでいくと、周りを樹々に守られながら、ひっそりたたずむ小さな泉にたどり着いた。
遠く見上げた樹々の隙間から、そよ風に揺られて時折のぞく青空は、真っ直ぐに一筋の光を泉に向かって伸ばしている。
「やっと追いついた〜」
アクアは、一足先に泉のほとりで待っていたリアナに向かって声を掛けた。
「よ〜し!やっときたね、アクア。それじゃあ今日は、こないだの冒険の続きだよ♪ 今日はこの先をさらに探検していくからね。エイエイ オ〜ッ!」
リアナはアクアをくるりと振り返ると、ニッコリ笑って握り拳を突き上げた。
「え?ここから先ってお姉ちゃん。ここはもう行き止まりだったはずじゃ...?」
アクアがいくら辺りを見渡しても、この先の道が見当たらない。それもそのはずだ。
「だって、前にこの泉を見つけた時に、あんなに一緒に調べたもん」
「うふふ。私もそう思ってたんだけどね。でもほらアクア。ここを見てみてよ」
リアナはアクアを促すように、目の前の泉を指差した。その指先に静かにたたずむ水面は、深く澄み渡った紺色で、一点の曇りなく、周りの樹々を鏡のように映し出している。
そして時折、頭上からの光のヴェールに包まれて、まるで見るものを別世界にいざなうような、不思議な面持ちをしている。
「あ!海巻貝(うみまきがい)!こないだここを見つけた時には、こんなコたちは見当たらなかったよね...?」
アクアは泉に駆け寄って、そっとそれをすくいあげると、不思議そうな顔つきでリアナを見上げる。
「うん。たぶんその理由は、あれじゃないかな、って」
リアナは頭上に遠く覗いた樹々の隙間を、少し眩しそうに見上げた。
「あ!...あそこからの光に誘われて、このコたちが今日は水辺近くまで遊びに来ていた、っていうことか。それに、こないだよりも少しだけ中も見えやすいような気もするね」
「そうそう。こないだきた時は、あそこの風が吹いていなかったし、たしかに、なんだかちょっと雰囲気も違うよね。
ねぇ、アクア。...これって、なかなかすごいタイミングだと思わない?」
リアナは終始ワクワク顔が止まらない。
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