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5. 小説MCH - フレアと父「精神と髪色」(修正ver.5 2024/1/6)

「いいんだよぉ!どうぜボクはまだ、"幼い髪色" の子供なんだからさぁ」

 フレアが少し口をとがらせながら、頬をふくらませるその仕草は、まさに小さな子供が、からかわれた時に、よく見せるそぶりそのものだった。

 たしかにフレアは、人間の世界でいうところの5、6歳の背格好で、年齢も、まさにそのくらいの年頃である。

 それを考えれば、この子供らしい反応は、どの時代でも当たり前に繰り返されてきた、ごく自然なものだったと言えるだろう。

「確かにお前の髪は、まさに "幼毛(おさなげ)" の真っ最中。しばらくはまだ、そこから成長しなそうだもんなぁ」

 我が子をみつめながら、ニヤニヤしながらそう言う父の顔を見てみると、どうやらただただフレアをからかって遊んでいるだけのように見える。

「当たり前だよー!だって、父ちゃんみたいな髪色になるのはさ、もっと大人になってからなんだからさぁ」

 フレアは父をジロリと見上げると、相変わらず口をとがらせながらそう言った。

 どうやら父が言う "幼毛(おさなげ)" というのは、この世界の "住人" たちの、特殊な性質のことを指しているらしい。

 これは、フレアたちの世界では「成長の一環」として知られている生理現象の1つで、人間の世界でいうところの、いわゆる「蒙古斑」に近いようなものだと言えるだろう。

「幼い髪色」の "幼毛" が、成人するなどの精神的な成長を経験して、やっと「大人渋い髪色」に変色する、というのがその特徴である。

「村のどこにも、大人色の髪の子供なんて、一度も見たことないもんね」

 たしかにフレアの幼い赤茶色の髪は、彼が住む "炎の村" では、そこら中で見かける子供たちと全く同じものだった。フレアの年頃の子供であれば、まだ幼毛なのは当然だったといえるだろう。

「いやいや、決してそうと決まったわけじゃないんだぞ。むかーし昔、あるところに、お前くらいの小さい子供が、突然、大人色の髪に変色したっていう話を、どこかで聞いた覚えがある」

 父は、一見まじめな口調ながら、相変わらずニヤニヤ顔は止まっていない。

「なにそれ〜!そんなことあるわけないでしょ〜」
 フレアは思わず吹き出しながら、そう言葉を返した。

 こうしてみてみると、この親子の一連のやりとりは、いわば我が子の「未熟さ」、その「青さ」をからかって遊ぶ、父と息子の会話遊びのようなものだったことがよくわかる。

 ちなみに、「成長の一環」を通じて変化するのは、その髪色だけではないらしい。フレアと父のそれを見比べてみると、どうやらその「髪質」も合わせて成長するようだった。

 父のそれとは似ても似つかず、クルクルンっと特に毛先に強いフレアのクセっ毛は、たしかにそのまま放っておいたら、父がからかって遊んでいるように、まさに「捕らえた獲物も驚いて逃げ出す」ほどに、大変なことになりそうな予感がする。


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