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4. 小説MCH - フレアと父「大炎色の髪」(修正済みvol.4 2024/1/6)

「うぉっはっはっはっは!」

 大男は、どっしりと腹の底から響く、その特徴ある笑い声で、まずは勢いよく駆け降りてきた、小さな狩人の機先を見事に制した。

 どんなに遠くにいても、村の誰もが彼だとわかる、その大きな笑い声が、家全体を震わせるほどに響き渡っている。

 その笑い声は、初めて耳にした者を一瞬で驚かされるほどの迫力があった。それでいて少年は、その笑い声を聞くと、いつも安心して心地よい気持ちになれるのが、とても不思議だった。

 その大男は、それまで頭にかぶっていたローブのフードを、両手でゆっくりとめくり上げながら、淡い赤緑色に光る大きな瞳を、その影からのぞかせた。

 そして、少年に「父ちゃん」と呼ばれるに相応しい、愛情たっぷりな笑顔で彼を見つめると、こう続けた。

「おう!フレア!
 今日も相変わらず、元気なボサボサ頭を従えて。そんな頭じゃ、せっかく捕まえた大物も、びっくりして罠から逃げちまうぞぉ。」

「フレア」というのは、まさに今、ボサボサ頭を振り乱して、ここに駆けつけてきた、その勇敢なチビ助ハンターの名前らしい。

「いい加減、いつになったらお前の髪もオレみたいに、しっとり "大人渋い大炎の色" に成長するのかねぇ。」

 "大人渋い大炎の色" というのは、その特徴をよくぞ言い表したものである。たしかに、大男のその髪の毛は、髪色も髪質も、フレアのそれとは全く異なるものだった。

 夜の静まり返った山奥で、火花だけがパチパチと、飛び散る音が鳴り響く。そんな静寂の中、激しすぎずも静かすぎず、ただひっそりと燃え盛る焚き火の炎に、じっと魅入ってしまった経験はないだろうか。

 彼の髪は、静寂に燃えさかる焚き火のように、見る人を自然と魅了する不思議な色合いを持っていた。そして、ガッシリとしたアゴの下に、ほどよく短めで無精に生やしただけのアゴひげも、彼の髪と全く同じ大炎の色を持っていた。

 そんな大炎色のアゴひげを、父は左の人差し指にくるくる巻きつけながら、フレアを見つめてニヤりと微笑んでいる。

 そんな彼の笑顔には、彼が発した言葉以上に、どこかやさしく遊び心を感じさせるものがあった。

「大炎色の髪の毛」

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※この小説My Cool HEROESは、ジェネラティブNFTコレクション「My Cool HEROES」の背景に流れるストーリーをまとめた中編小説です。

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