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馬券買うのは便利になったが… 私の産業遺産Vol.2 「JRA-PAT」

自宅にある産業遺産を紹介する「私の産業遺産」シリーズ。初回は2000年代のガジェットだったが、時代を一気に遡り1990年代初めの製品に。JRA(中央競馬)の馬券を電話回線を使って自宅で買える「JRA-PATサービス」だ。

私は競馬が大好きで大学生の頃から馬券を買っていた(学生の馬券購入は本当はいけないが)。

当時、住んでいた金沢には中央競馬の馬券売り場はなく、東京や大阪の友達に頼んで買ってもらっていた。
就職し東京に出てきてからは場外馬券売り場(ウインズ)を利用していたが、せっかくの休みにウインズまで足を運ぶのも面倒になってきた。そこで電話投票を始めることにした。
当時、電話投票のタイプには2種類あった。
オペレーターと電話でやり取りして馬券を購入する「CRT」方式とファミコンなどの端末を利用する「PAT」方式だ。
CRTは入会金が10万円した。一方、「PAT」は機器の購入などが3万円ほどと安かった。迷わずこちらを選ぶ。ファミコンを使って馬券が買えるという画期的なもので電話回線をケーブルでつないで使う。1988年に登場した「ファミリーコンピュータ ネットワークシステム」を利用している。

当時は電話投票の手続きが超面倒。まずJRAの会員募集に申し込んで、それから抽選があった。当選してから会員手続きの案内が郵便で届く。ようやく会員になれてからも、指定された銀行で専用の口座を開設しなければならなかった。一連の手続きが終わり馬券が買えるようになるまで2週間以上かかった。

専用機が届いた時にはワクワクした。専用機器にメモリーが入った専用カードを差し込んで使う。専用機器をファミコンにゲームソフトのようにセットする方式だった。


ちなみにこの専用カードには色々な種類があり、証券会社はファミコンで株式売買ができるというサービスをやっていた。
本格的にパソコンを使い始める1996年くらいまでこの端末で馬券を買っていた。実際の稼働期間は3年ほどだろう。
久しぶりに取り出してみると本体は茶色に変色している。

この原稿を書くために調べてみると驚いた事実がある。なんとこのサービスは2015年7月末まで利用されていたという。
今ではパソコンやスマホから手軽に馬券が買える。インターネットが主流になり、現在のネット投票の名前はIPAT方式。PATの名前は残っている。
利用開始まで2週間以上かかった大変な手続きも今は銀行のネット口座さえあれば即座に開設でき、すぐに馬券を買うことができる。便利になったが、馬券の難しさは変わりなく、今年も大幅な負け越しとなっている。
昔と比べるとめちゃめちゃ手軽に馬券を買えるようになったが、手軽に勝つ方法はまだ見つけられていない。


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