世界だって君にあげるみんな

今から少し前、私は地方の中学生だった。

東京まで2時間半ぐらいで着いてしまう私の地元は、何もなくて、退屈で、つまらなかった。

中学生になって初めて知ったなんちゃって社会の部活動は、信じられないくらい性格の悪い先輩にいじめられる場所になり、学校に行きたくないという基本モチベーションを作ってしまった。

両親が音楽が好きだったこともあるけど、私も人並みに音楽が好きで、部活動に吹奏楽部を選び、休日は音楽を聴くような子どもだった。

それまで、周りの子どもと似たような曲を多く聴いていたが、自分から好きなアーティストを見つけるようになったのは中学2年生だったと思う。

「神聖かまってちゃんは世界の終わりが大嫌い」みたいな動画を見つけたのが、はじまりだったと思う。当時は世界の終わりにどハマりして、人生初ライブを捧げていたのだ。もちろん、大ファンの痛い中学生の私は、すぐにその動画を見て、神聖かまってちゃんは敵という認識になった。

しかし、その頃には和解していて、の子と深瀬は仲良しだったので、そんな敵意もすぐに消失し、YouTubeの関連動画に出てくる神聖かまってちゃんの動画を観るようになっていた。

「ロックンロールは鳴り止まない」「ちりとり」「夕方のピアノ」「きっと良くなるさ」あたりをずっと聴いていた。

そんな頃、神聖かまってちゃんのライブ映像でロックンロールは鳴り止まないを一緒に歌っていた黒髪でピンクの服を着ていた女の子を見つけた。

「魔法が使えないなら死にたい」というワードに惹かれて、すぐに調べたと思う。

夏の魔物のライブ映像と、TIFのライブ映像を観てすぐ好きになった。友達に勧めたけど、好きになってもらえなかった。けど、なんでこんなに惹かれるのかわからなかった。すぐに大好きになった。

家の近くにCDショップがなかったので、遠いHMVに行った。クリスマスプレゼントに「TOKYO BLACK HOLE」の初回限定版を買ってもらった。嬉しくて、嬉しくて、何回も日記を読み込んで、泣いたりした。

愛されていないと思い込んでいた中学時代の私にとって、大森靖子は愛の塊で、私に向けられているわけではない、あたたかい愛に助けられた。

小さいお下がりのiPhoneから流れる音楽が、私の全てで、きっと遠くて広い東京を歌った曲を聴きながら、私はいつか東京で暮らすことを夢みる。

街灯の少ない帰り道で歌った「ミッドナイト清純異性交遊」の歌詞は間違っていたけれど、私の宝物だった。

世界をありがとう
大森靖子ちゃん



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