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第四十一話 桐藤礼讃③「ヒロインの思惑」

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 芝居の件ね。内容、俺も思い当たってはいたんだけど・・・。

 案外、あれから、彼女が、俺に話しかけてくるようになった。二年生になってからかな。まあ、なんというか、そもそも、肝が据わってる感じの強い子だったようで、安心した。もう、あいつらが、何等かの処罰で、貴族の居留エリアにはいない、と解って、かなり、回復が早かったような気がする。桐藤が、いよいよ、一の姫とのことが、本格化してきた時期に入り、やはり、あまり、学校に来られなくなっていた。多分、桐藤がいたら、同様に、会話をしてきたかもしれない。

 彼女は、演劇部に復活していた。事件のことは、水面下で、ある程度、皆、知っていたようだが、揶揄ったりした場合には、退学に準ずるペナルティを課すことになっていた。流石に、言う者はいなかったし、今でも、話題にはなっていない。復活した彼女を、クラスも、学校も、普通に受け入れていた。今回も、つい、彼女のオーダーに応えてやりたくなってしまい、数馬とのことを確約のように伝えてしまった。でも、このぐらい、いいじゃないか。数馬には、ここまで、話せないけど・・・。

 数馬と、慈朗も頑張ってるし、ちょっと、俺も、気になって、差し入れを持って、顔を出そうとしたら、三の姫様がついてきた。ハニープラネットが差し入れとしては、無難だろうと、この間の件もあり、本店は避けて、少し離れているが、支店の方で買い物をした。

「柚葉、どこいくの?数馬の劇の練習、見に行くの?それ、ハニープラネットの袋だね」
「ああ、隠せませんね。三の姫様には。演劇部に差し入れに」
「行く、行くー」
「ああ、声が大きいです。学校では、静かに、エレメンタル(小学生)の子みたいですよ」
「わかった。差し入れ、いいなあ・・・」
「部員の方と、慈朗のやってる方の裏方の分と、甘木先生の分と、少し多めに買ってありますから。お茶を入れるのを手伝って頂ければ、女美架姫様も、ご一緒できそうですが」
「うん、やる、やる。うふふ」

 三の姫様と、視聴覚室に行く。あれ?成程、そろそろ、通し稽古が始まってるようだが。ドアを開けた所に、甘木先生がいらしたので、許可をとって、三の姫様と、見学させてもらうことにした。そっと、給湯室に行って、お湯を沸かし、紙コップにティーバックだが、アールグレーを入れて、ケーキを食べて貰えるよう、準備をした。甘木先生が、部員たちに声をかけた。

「はい、じゃあ、一旦、休憩にしましょうか。皇宮の第三皇女様から、ケーキの差し入れがあります。皆さん、頂いてください」

 部員たちは、これを見て、三の姫様からの差し入れだと当然思う。

「ああ、すごい、これ、ハニプラの全種類、ない?」
「こんなに沢山、ありがとうございます」
「え?」

 戸惑ってるね。三の姫様。

柚「いいのですよ。お勧めしてください。姫様からの差し入れとお伝えしておりますから」
女「・・・どうぞ、お召し上がりください」
慈「わあ、姫様、柚葉、気が利くよねえ。すごいじゃん。皆、真剣にやってて、ちょっと、緊張してたから、丁度良かったかも、甘いものとかって」
女「慈朗は、残ったのにしてね。姫たちと一緒に」
慈「はい、はい」
女「数馬は?」
慈「あー、さっき、居たんだけど、ああ、あっちの準備室かなあ」
柚「・・・待って、女美架姫様」
女「なんで?」
慈「あ・・・、多分、着替え中かも」

 柚葉は、慈朗に頷いた。まあね、なんとなく、彼女と今、二人で打ち合わせみたいだな。彼女もいないし・・・。どんな状態でも、二人きりなんて、三の姫が見たら、大騒ぎになるかもしれないから・・・。

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