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第二十九話 奥許し②~脂下がる 桐藤と一の姫⑤

「あの月光草の栞、大事に持っていて頂いたんですね。とても、嬉しいですよ」
「・・・御本を読む時は、ずっと、あの栞を使わせて頂いているのです」
「月光草は、珍しい花で、百年に一度しか、その花を咲かせないものだそうです。綺麗な花だと思ってましたら、そんな貴重なものなのかと、中庭で見つける度に、押し花にしておりました。他にも取ってあった筈なのですが、いつの間にか、どこかに行ってしまったようです。だから、今朝、御本に栞が挟んであったのを見て、ものすごく、懐かしく、嬉しい気持ちになりました」
「桐藤が初めて、私にくれたものですから。大事にしておりました」
「嬉しいですよ。そのように、言って頂けるのが」

 ブランケットの中で、少し、会話を交わす。小休止。このように、落ち着いてくださることが、大事なんですよ。首尾よく、進んでいます。

「これ、痛くないですか?固い枕かもしれないですね」
「桐藤こそ、私の頭、重いでしょう?痺れてしまいそうだから、もう、・・・」
「腕を抜いてもいいのですか?・・・お話は、多分、終わってしまいますよ」
「・・・あ・・・」
「もう少し、ゆっくり、なされたいでしょう?」
「なんで、解るの?桐藤には、私の気持ちが解るのね」
「貴女が好きだからです。好きだから、知りたくなって、一生懸命、見てしまいます。不思議ですが、嫌いな人のことなんて、知りたくもなくて、むしろ、解らないままでいいのですがね。好きな人のことは、ずっと、見てしまいます。だから、その分、よく解るのでしょうね。そんな感じ、解りますか?姫には、そんなこと、ございませんか?」
「・・・そうですね・・・」

 ああ、そんな至近距離で、小首を傾げる、そんな、可愛い仕草、いけませんよ。お話を、ここで終わらせてしまいたくなってしまいますよ。

「桐藤が、遠くを見てらっしゃる時は、多分、大切なことをお考えの時なの、見ていて、解ります。多分、政(まつりごと)のこととか、スメラギの将来のこととか、思いを馳せてらっしゃるのかな、と思う時があります。・・・でも、本当の所は、わかりません。外れてるかもしれませんね」
「今夜の夕食は、なんだろう・・・とか?」
「え?・・・桐藤でも、そんなこと、考えるのですか?」
「ありますよ、たまには、僕も人間ですから・・・それに、そんな時こそ、大好きな方のこと、考えてしまっていることもあるかもしれませんね・・・」
「・・・?」
「そんなに、不思議なお顔されて・・・、目の前に、その方がいても、眩しすぎて、ずっと、そちらを見ていられないこともあるものですからね・・・随分、言わせましたね、姫」
「あ、・・・え?・・・どういうこと?・・・ごめんなさい、今のは・・・?」

 あああ、これ以上、説明は要らない筈なのに、なんでしょうね?ちょっとした機微のことなのですけどね。

「嫌ではないですよ。こうやって、そんな、好きな方のお話できるの、嬉しいですよ・・・」
「・・・あ、・・・それって、そのような・・・あああ・・・」

 また、両手でお顔を隠されましたね。少し時間がかかりましたが、ご理解頂けたようですね。腕の中で、身じろぎされて、もう、お休みはお終いです。

「追い打ちをかけるようですが、そんな僕が、どれだけ、貴女を愛しているか、これから、示していきたいと思いますから・・・可愛いお顔を、見せてください」

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