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映画「ロックン・ロール・サーカス」 きらびやかな華たち

「とくにザ・ダーティ・マックを楽しんだ。ジョンやエリックと一緒に〈ヤー・ブルース〉をね。というのもあれはまさしく即興で、映っているあのままだ、一瞬音合わせをしただけ。それはすごいフィーリングだった。」by  キース・リチャーズ

はかり知れない映像記録です。

「ブタに真珠」というべきか。この作品の価値は、私(音楽無知)には とてもじゃないけど量れません。
元々ここnoteでは、映画解説じゃなくその作品から私が何を感じたか、学んだかを書こうとしていますが
この作品の至宝っぷりには、さすがに触れない訳にはいきません。
公式サイトの解説を以下に引用します。
・1968年の12月の2日間
・「ロックン・ロールとサーカスの融合」を目指してローリング・ストーンズが企画・製作し彼らがホスト役も務めたライヴイベント
・「ザ・ローリング・ストーンズ、ジョン・レノン、エリック・クラプトン、ザ・フー、マリアンヌ・フェイスフル、オノ・ヨーコ、ジェスロ・タル、タジ・マハール…」
・4Kレストア版

はて、サーカスとは? サーカスのどんな要素をねらっての融合なの?と考えるのは、野暮なんだろうか。
アッと驚く摩訶不思議さ? あれもこれもの多彩性? 私の町にやってくる身近さ? ファミリーで楽しめる健全さ? まぁいいか。

私の鼓膜にはしんどい音量でしたが
アーティスト1人1人、曲1つ1つが初めて目に耳にするものばかり、きらびやかな時間でした。

お顔をみてそれが誰なのか私には分からないため、以下に書く人名はチラシ解説からの推測です。もし人まちがいであればお許しを。

な、なんという妖艶な音、、エリック・クラプトン

その音が耳に入った途端「う〜わ~~」、、思わず表情がクネった。
「なんちゅう音を出すねん、この人」と。
青少年に聞かせたくない音、とでも言おうか。

かつてギターの音色をセクシーだと感じたことがある。U2だった。
夏の終わりの夕暮れに ひぐらしの鳴き声を聞くような、そんな切なさが胸にしみた。
その音は遠く夜空を流れていく星のごとく、はるか彼方で鳴っていた。

この音は近い!
ハッと気が付くと胸元近くに立っていて、むせ返るような薫りを放ってる。その妖しい蜜っぷりにクラクラし、思わず目を背ける。

この音を、年季の入ったギラギラしたおじさんが 如何にも狙って出しているならまだ分かる。
でもこの音のヌシは(あどけない、とまでは言わないが)淡泊な顔立ちの若者で、時折ニコッと笑いながらサラサラと奏でている!
このギャップがまだ、どえらく印象に残った。
帰ってYoutubeで「愛しのレイラ」の動画を聞いてみたが、そこで流れる(歳とってからの)音より、この作品内の音の方がはるかに!なまめかしいです!!

目も耳も奪われた、でもその要因が分からない。キース・リチャーズ

エリック・クラプトンの妖艶な音に、さんざん字数をさいた後に言うのもなんだが
「この人のギター好き!スゴい人だ」って一番感動したのはキース・リチャーズさんだった。

リチャーズさんはローリング・ストーンズでは主旋律を弾いていて、次第に私の目と耳は(カメラ前面を陣取るミックジャガーを飛び越えて)奥に映る彼だけを追っていた。
エリック・クラプトンの音を聞いた耳には、彼の音は特徴があるようには聞こえなかったが、でもなんでだろう、どんどん惹き込まれてしまった。
目を引くパフォーマンスがあるでなし、抑揚や強弱などが目立つ演奏でもなさそう、一体自分が何に惹かれているのか分からない。強いていえば揺らがない安定した演奏? いやいや、それは魅力を示す単語じゃないだろう。

バックで打楽器(ボンゴみたいなの)を奏でる人がリチャーズさんに笑顔を向け楽しそうにリズムを打つ。そこにはギターとボンゴ2人だけの演奏の場が出来ているようで、見ていて楽しかった。
リチャーズさんをずっと見ていたくて、その彼を背に「ホォー!」とか「ハー!」とか吼えながらパフォーマンスするミック・ジャガーに
「きみ、悪いけど今は黙っといてくれへんか」「そこどいて」と言いたくなった。

ミック・ジャガーさん、もちろんあなたもステキですって。

リチャーズさんを聞く上では「そこどいて」と思ってしまったミック・ジャガーだが、やっぱり目をひく華のある人だった。
歌声もいいし、ロッカーたる荒々しさと色っぽさ、なんだかエッチな感じの大きな口は 笑うと口角がキュッと上がって、チャーミングでもある。
なるほど生涯、伝説を生きる(ことになる)人だなぁと思った。

「悪魔を憐れむ歌」、邦訳(字幕?)が絶妙☆


この どギツイタイトルから思わず歌詞に注目した。
歌詞の中の悪魔は、前半コミカルな慎ましさ、それが徐々に剥がれていって最後は牙をむいて高笑い、そんな流れが(わたし的には)絶妙で
敬語の使い方だろうか、この訳のセンス好きやわー!と思った。

どんな人が訳したのか検索してみたけど、タイトル以外にこの歌に定まった邦訳は存在しないのか、結局分からなかった。
もしかするとこの映画の字幕を担当した「林かんな」さんの訳なのかな。

そしてこの「悪魔を憐れむ歌」というタイトル訳には批判があるという。
原題は「Sympathy for the Devil」で、悪魔に共感すれども「憐れむ」ニュアンスはない、とのこと。

ただ想像をたくましくするに「俺は悪魔に共感するぜ!」「俺は悪魔だ!」と、いきり立つ若造より
その悪魔をさらに「俺はアンタら悪魔を可哀相に思うぜ?」なんて見下す方が、大きな男に見えるのでは。
この邦訳タイトルを考えた人にとって、ザ・ローリング・ストーンズはそれほど偉大な存在だったのかもね。

以上が映画「ロックン・ロール・サーカス」の雑感ですが
実は私が一番聞いてて楽しかったのは、タジ・マハールなるグループだった。
ヴォーカルさんにおそらく黒人さんの血が入っていると思う。そのリズムやカラッと爽快な歌声が楽しくて
そうそう、私、Motown 好きだよね♪って改めて感じた次第。

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