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介護事故防止のために知っておきたいこと:要因分析から事故対策まで

介護事故は単なるミスで済まされる問題ではなく、利用者の生活に大きな影響を及ぼす可能性があるため、その防止は我々にとって重要な課題です。

本記事では、介護事故の定義から種類、そして事故が起こったときの対応方法まで、事故防止に必要な知識を詳しく解説します。また、事故防止に向けたリスクマネジメントやヒヤリハットの活用法、事故が起きた際の対処法についても触れています。

これを読むことで、あなたが介護現場で事故防止のための実践的な知識を身につけ、より安全なサービスを提供することにつながるでしょう。

介護事故とは

介護事故とは、介護の過程で利用者や介護者に生じる身体的・精神的な損害や不利益のことを指します。介護事故は、介護の質や安全性に影響を与える重大な問題です。

介護事故を防ぐためには、介護事故の定義や一般的な種類を知り、予防策や対応策を学ぶことが重要です。

介護事故の定義

介護事故の定義は、全国社会福祉協議会によると「社会福祉施設における福祉サービスの全過程において発生する全ての人身事故で身体的被害及び精神的被害が生じたもの。なお、事業者の過誤、過失の有無を問わない。」とされています。

介護事業者は日々のサービス提供において、全ての行為に対して事故防止の視点を持つことが求められます。

参考:厚生労働省『「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に
関する取り組み指針 ~利用者の笑顔と満足を求めて~」について

主な介護事故の種類

介護事故には様々な種類がありますが、ここでは代表的な4つの種類について紹介します。
転倒
介護を受ける人が歩行や移動中に足を滑らせたり、バランスを崩したりして地面に倒れることです。転倒はもっとも多い介護事故であり、骨折や頭部外傷などの重大な後遺症を引き起こす可能性があります。
転落
介護を受ける人がベッドや車椅子から落ちたり、階段や窓から落下したりすることです。転落は転倒よりも高さがあるため、より深刻な損傷を与える可能性があります。
誤嚥
介護を受ける人が食べ物や飲み物を飲み込む際に気管に入ってしまうことです。誤嚥は呼吸困難や窒息を引き起こすだけでなく、肺炎や敗血症などの感染症にもつながる可能性があります。
誤薬
介護を受ける人が間違った薬を飲んだり、正しい薬を間違った量や方法で飲んだりすることです。誤薬は薬の効果が弱まったり、強まったり、副作用が起こったりする可能性があります。

介護事故の要因分析

介護事故は、介護者や事業所のミスだけでなく、利用者の行動や環境の変化などによっても起こります。介護事故の要因を分析すれば、事故を防止するための対策を考えられます。

介護者や事業所による事故の原因

介護者や事業所による事故の原因としては、以下のようなものがあります。


  • 介護技術や知識の不足

  • 人員不足や過重労働

  • コミュニケーション不足や連携不良

  • 設備や備品の不備

  • ルールやマニュアルの不適切さ

これらの原因は、介護者や事業所の責任に帰することが多いですが、時には利用者や家族からの要望や圧力によっても引き起こされることがあります。

利用者の行動が引き起こす事故の原因

利用者の行動が引き起こす事故の原因としては、以下のようなものがあります。


  • 認知症や精神疾患による判断力や自制心の低下

  • 身体機能や活動能力の低下

  • 食欲不振や脱水症状

  • 薬物の副作用や相互作用

  • 睡眠障害や昼夜逆転

これらの原因は、利用者自身がコントロールできないことが多いですが、時には介護者や事業所からの適切なケアやサポートが欠けていることもあります。

つまり、両者は相互関係になっている場合もあり、多角的な視点での分析が必要といえるでしょう。

介護事故ランキング:よく起こる事故のパターン

介護事故はさまざまな形で起こりますが、よく起こる事故のパターンとしては、以下のようなものがあります。


  • 転倒・転落・滑り

  • 皮膚損傷・褥瘡・火傷

  • 食べ物・異物誤飲・窒息

  • 脱走・迷子・行方不明

  • 暴力・暴言・虐待

これらの事故は、重大な後遺症や死亡につながることもあります。

介護事故を防止するためには

介護事故を防止するためには、以下のようなことを心がける必要があります。


  • リスクマネジメント

  • ヒヤリハットの共有

  • ICTツールを活用してリスクに対応

それぞれ説明していきます。

リスクマネジメント

リスクマネジメントとは、事故を起こす可能性を予測し、そのリスクを低減するための計画を立てることです。リスクマネジメントでは、以下のようなステップを踏みます。


  1. 分析: 事故の原因や影響を分析する

  2. 評価: 事故の発生確率や重大度を評価する

  3. 対策: 事故を防止するための具体的な対策を考える

  4. 監視: 事故の発生状況や対策の効果を監視する

介護事故防止に向けた取り組みにおいて、上記のようなリスクマネジメントが有効であるとされています。

ヒヤリハットの共有

ヒヤリハットとは、事故には至らなかったが、危険な状況に遭遇したり、不安や恐怖を感じたりしたことを指します。ヒヤリハットは、事故の予兆や原因となることが多いです。

ヒヤリハットを共有すれば、事故を未然に防げます。ヒヤリハットの共有では、以下のステップを意識しましょう。


  1. 報告: ヒヤリハットが起きた場合は、すぐに報告する

  2. 分析: ヒヤリハットが起きた原因や背景を分析する

  3. 改善: ヒヤリハットが起きないように改善策を考える

  4. 共有: ヒヤリハットの内容や改善策を他の関係者と共有する

上記のステップで情報共有することで、事故の発生数を減らしましょう。

ICTツールを活用してリスクに対応:介護向けのICTツールを紹介

介護事故を防止するためにはICTツールの活用が有効です。人の能力だけで事故を防止するのが難しいなら、ICTの力を借りましょう。

ICTツールの活用例の一部を以下に示します。

- 介護者の位置や行動をリアルタイムで把握できるセンサーやカメラを設置する
- 心拍数や血圧などの生体情報を測定できるウェアラブルデバイスを利用する
- 介護事故の発生や原因を分析し、改善策を提案するシステムを導入する

上記のような活用ができそうな介護向けICTツールの一例を紹介します。


これらのICTツールを積極的に活用することで、介護事故防止だけでなく、介護サービスの質を向上できます。

介護事故が起こったら

ここまで紹介した対応を完璧にこなしていても、介護事故が100%なくなることはありません。介護事故が起こったときに慌てることのないよう、対応を決めておくことが大切です。

介護事故が起こったら、以下の4つのポイントに従って対応しましょう。

利用者の安全確保と初期対応

利用者の安全確保と初期対応とは、事故が起こった直後に行うべき対応です。具体的には以下のような対応をとります。


  • 利用者の状態を確認し、必要ならば応急処置や救急搬送をする

  • 事故現場を保全し、証拠や情報を収集する

  • 他の利用者や介護者への影響を最小限に抑える

重大事故に発展させないためにも、適切な初期対応は非常に大切です。

家族への状況説明と謝罪方法

次に、家族に事故の状況を説明しましょう。事故の原因や経過、利用者の状態や対応策などを正確かつ分かりやすく伝えます。

また、事故の責任を認め、心から謝罪しましょう。家族の感情や意見にも耳を傾け、信頼関係を回復するように努めることが大切です。

事故の状況による関係機関への連絡

事故の状況によっては、関係機関への連絡が必要になる場合があります。例えば、利用者が死亡した場合は、警察や保健所に届け出る必要があります。

また、介護保険の適用を受けている場合は、事故の内容や影響に応じて、市町村に報告しなければなりません。事故発生直後は慌ただしいため、連絡する機関や方法は、事前に確認しておきましょう。

事故の記録の重要性

介護事故が起こったら、事故の記録を残すことが重要です。事故の記録とは、事故の発生日時や場所、利用者や介護者の氏名、事故の原因や発生状況、利用者の状態や対応などを詳細に書いたものです。

事故の記録は、事故の分析や改善策の検討、法的な問題の解決などに役立ちます。事故の記録は、できるだけ早く作成し、正確かつ客観的に記述しましょう。

介護事故で落ち込む人の特徴と対策

介護事故が発生すると、介護者はショックや罪悪感に苛まれ、自信喪失やミスの繰り返しにつながることがあります。

落ち込みやすい人の特徴としては、全て自分のせいだと思い込みやすい人や、他人の批判に過敏に反応しやすい人などが挙げられます。

対策としては、事故は個人だけの問題でなく組織全体の問題と認識し、他者の助言やサポートを受け入れましょう。

また、適度なリラクゼーションや趣味を見つけ、運動や栄養摂取により心身の健康を保つことが重要です。

介護事故の防止【まとめ】

では、今回のまとめです。

介護事故は、介護の過程で不慮の事故に遭うことを指し、その事故防止は非常に重要な課題です。具体的には、転倒・転落・誤嚥・誤薬などが主な事故の種類で、介護者や利用者の行動、事業所の状況がその原因となります。

介護事故の防止には、リスクマネジメントの徹底、ヒヤリハットの共有、事故の早期発見が有効です。また、事故が起きた場合は、利用者の安全確保、家族への説明、関係機関への報告、事故の記録が求められます。

日々の介護業務において事故防止の意識を常に持ち、必要なスキルや知識を身につけ、安全な介護サービスの提供を目指しましょう。


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