ストーカー。

 いつもならこういう話は友人によくある話なんだが、珍しく私がターゲットになってしまった話。

 私と友人は同じラーメン屋で高校の頃バイトしてた。
まぁまぁ使える部類だったと思う。
友人は更に使える男だったらしくバイトではなくパートで副店長扱いだった。
同年代の男がもう一人バイトしてたが、そいつには内緒な、と言われて最後までこの話はしてない。

 まぁ、そんな話はさておき、バイトは楽しく特に私の場合子供の人気が高く絡まれる事は多かった。
その流れでお母さんからの人気もまぁまぁあった。
そんな感じで所謂お年頃の女性とは縁遠いバイト生活だったんだ。
そんなある日、大学生と自己紹介してきた女性がラーメン屋の常連になってた。
女子大生、はいはい、友人狙いですねってなもんで適当に愛想よく接客してた。
ファミリー向けっていうか、甘味もやってたから本当に老若男女お客は来てた。
だから女子大生の常連くらいは特に不思議に思ってなかったのもある。
迷惑客って訳でもなく顔を見れば話をする、その程度の絡みで一ヶ月くらいした頃だったかな、友人がその女子大生が来ると少し険しい顔をするようになった。
強引に誘われたかな?と思い聞いてみるが別に、しか言わない。
それから数日後自転車同士で女子大生とすれ違った。
「あ、ども」
「こんにちわ。偶然ですね」
「住んでるのこの近く?」
「ええ、まぁ」
そんな話をして別れた。
すれ違ったのはバイトに行く際使ってる通勤路。
あれだけラーメン屋に来るくらいだから住んでる所が近いのもあるよな、なんて軽く考えてた。
それからまた数日後、今度は自宅とバイト先の中間よりはバイト先に近い所で会った。
その時は急いでたんで手を振っただけで別れた。
相変わらずラーメン屋にも来てて、他愛のない話をしてた。
この辺りからだろうか、徐々に自宅に近付いた場所で女子大生と会う事が多くなっていた。
近所の住人はほぼ知ってて、知らないのは子供のいない家庭か近くにアパートがあって、ここの住人はそんなに知らなかったからそこに越して来た人なのかなぁ、なんて考えて友人にも、また会ったよ、とか呑気に話してた。
友人は無言で厳しい顔をしてる。

 そして運命の日、その日も女子大生は来てて軽く挨拶して仕事してた。
そしたら友人が
「私、そういやお前付き合うなら年齢は気にしない方?」
ちょっと驚いた。
学校でもこんな事聞く奴じゃないし仕事中にこんな雑談振るような性格でもない。
ラーメンのドンブリ洗いながら返す。
「あー、どうかな。好きになればあんま気にしない、のかな」
「いや、それでも上下何歳とかあるだろ?」
「まぁな、流石に3歳とか60歳とか言われたらお断りするかも」
「もうちょい真面目に」
訳分からない。
それでもこいつは無駄な事とかは絶対にしない、何か意図があるだろうともうちょい真面目に答える。
「多分、上下3歳くらいかね、同じ学年過ごした事がある人なら話題も同じ空気感てのかな、分かりやすいし」
「四歳差とかなら?」
「んー、仲良くなってからなら、ワンチャン」
「いきなり来たら?」
「お断りかなぁ。下14じゃ犯罪だし、上21だったらいきなり結婚とか言われて詰みそうじゃん」
「そうか、21は無しなんだな?」
「ん?21はお前の担当だろうがよ」
「いや、それはいいからアリかナシか」
「ナシだなぁ、今は特にナシかな」
そんな会話を友人に釣られて結構大きめの声で話してたら友人があからさまにホッとした表情で私の肩を叩いてくる。
「すまんな」
「いや、別に?」
洗いながら店内見ると女子大生は消えてた。

 バイト終えて帰ろうとすると友人が
「昼、悪かったな。気づいてた?」
「何に?」
はぁ、とため息ついて
「お前、帰りとか後付けられてたぞ、あの女子大生に」
「はぁ?」
聞くと私がバイト帰りに自転車で走ってる後を自転車で追いかけてたらしい。
スクーターと同じスピードの私をママチャリで追うのは難しかったのか途切れ途切れでしか追いきれず徐々に範囲狭めてたっぽい。
「それなら追い付いて知らせてくれよ」
「いや、無理だから」
苦笑を浮かべる友人。
更にこの女子大生、私がバイト休みの日に友人やパートのおばさんにまで私に彼女は居るかとか、住んでる所はどこかとか、色々聞いてたみたいでかなり評判は悪かったと後に聞いた。
「俺は止めといた方がいいと思ったけど、好みだったりしたら恋路邪魔するみたいでな。一応確認の為聞いてみたんだ」
「なるほどね」
普段しないような事をしてたのは、やはり意味があったのか、と後に思ったがこの時はゾワっとして頭が回らなかった。
あと一つか二つ角を曲がれば自宅から一直線の位置まで女子大生は来てたから。
ただ単に追い付かなかったから難を逃れてた。

 それ、早く言ってよ、とどこかのCMみたいな事も言ったが友人の機転でストーカーは消えた。
暫くは警戒して遠回りしたりしてバイトから帰ってたが、もう大丈夫だろうとなったのは数ヶ月後だったか。
当時はモテないと思ってたから、まさかそんなの来るとは思ってなくてかなり焦ったのもあった。
痴漢も私は大丈夫って油断してる人が被害に遭いやすいってお巡りさんに聞いた事あるけど、ストーカーもそうかも知れない。

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