正義と悪と道理
あるお坊さんの話。
私が、社会人になって数年が経った頃。
人間関係で理不尽な事をされたり、納得いかない事を言われたりなどあり、怒りでいっぱいの毎日を送っていた時期があった。
そんな時。
あるお坊さんに出会った。(宗派、風貌など個人を特定させる事は言えないので、控えさせて下さい)
そのお坊さんは、私の人間関係に関する悩みを二言、三言聞くと、すぐに察知したようだった。すると、お坊さんは、
「この世は、道理で出来ているのだよ。人にやった事は良くも悪くも自分に全て返ってくる。だから、たくさん良い行いをしていきなさい。」
と私にそう言った。なるほど。道理か。
それからの私は、そのお坊さんの言った言葉を実行出来なくとも、心に刻むよう忘れない努力をした。
あれから十数年が経ち、義両親との確執から、私が1人だけで家を出る事になった。我が子達を置いて。我が子達は、私の状況を理解していたからか、止めはしなかった。
家を出てアパートを借り、子供達と離ればなれで暮らさなければならない境遇がとても辛く、苦しく、毎日泣いてばかりいた。私の姉達をも困惑させてしまう程だった。
それから半月経った頃、再びお坊さんに会った。私の姉達から状況を聞いたらしく、私を励ます為に駆けつけてくれたようだった。かなり久しかった。
「(私にとって)辛い、苦しい状況だね。この世に生まれてくる人間は、皆必要だから生まれてくる。たとえ、どのような悪人であっても。義両親はあなたの人間性などを全て否定し、尊厳、尊重などもしない。しかし、孫であるあなたの子供達と義父母は、今はある意味において必要とし合っている。ただ、子供達を母親であるあなたから奪ったという事実に変わりはない。それを正義として証明させるには、悪という存在も必要なんだよ。」
お坊さんは、私にそう言った。それを聞いて、ようやくこの世のカラクリが、少しわかった気がした。お坊さんから、
『とにかく辛いだろうが、頑張れ』
と、私を応援している気持ちが、ものすごく伝わってきた。すごくありがたかった。
「誰も見ていないようで、実はしっかりとあなたを見ている存在があるのですよ。天も見ていますよ」
とも言っていた。それを聞いて、ある話を思い出した。
以前、介護施設で働いていた時、利用者さんに漢字クイズを出した時の事。
『お天道様』
「これは、〝おてんとうさま〟と読みますよ」
と私が言うと、
「これ、おてんとうさまって読むんですか?」
と若い女性職員が聞いてきた。
「そうなんですよ。太陽の事を言っています」
と説明をした。実際、
『天の道』
と書く。
(現実でもスピリチュアルでも)生きるエネルギーをもらうのも、亡くなった人が成仏するのに向かっていく方向も、天体が軌道に乗って回っていくのも、全て
『お天道→天の道=太陽』
だからなのかな〜?と考えたりもした。
それからは、感情の起伏が激しくなってしまい、内科の先生の勧めで心療内科に通う事となった。
辛い境遇に変わりはないが、それでも自分の心を癒しつつも、天の道に向かえるよう前を歩くと決めた。
人生の最後で、後悔せずに笑いながら全うする為に。
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