読書感想文「人間失格」
そういえば読んだことがなかった。教科書で読んだことのある太宰治の作品は「走れメロス」くらいだったと思う。
「人間失格」はある1人の青年の生涯を振り返るような作品である。青年が残した3つの手記を我々が読むのだ。後の手記になるほど歳をとっていく訳だが、歳をとるにつれて人間らしくなっているように思う。青年の、幼い頃の異常さは失われていった。
私がもっとも印象に残った場面は、青年の妻が穢されるシーンの描写だ。具体的に観察されている訳ではない。ただ、青年の妻の「信頼する心」に傷がついた、と表現されていた。
青年は、妻の人を疑わない心に惚れ込み結婚をした。それまで人を恐れていた青年は、その純真さに心を打たれたのだろう。彼がこれまで行ってきた非行を聞かされても信じず、彼女の目を通した青年をありのまま信じていた。彼女は疑わなければという心さえ持たなかったのだ。
事件以降、彼女は今まで通りではなくなった。疑う必要を知ってしまったのだ。
読んでいて、なんとも耐え難かった。
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