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スマートフォンの "自撮り”で正確な関節可動域計測ができる?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

スマートフォンの "自撮り"-肘関節可動域測定のための信頼性と正確性の高いツール

Shields, Maegan N., Anthony M. Vaichinger, and Shawn W. O’Driscoll. "Smartphone “Selfies”—A reliable and accurate tool for measuring elbow range of motion." Shoulder & Elbow (2019): 1758573219869206.

[ハイパーリンク] DOI, Google Scholar

[背景] 肘関節拘縮のある患者の肘関節可動域を把握するために、ビデオや図解で説明した後に自分で撮影した写真(「セルフィー」)が、正確で信頼性の高いツールとなるかどうかを検討する。

[方法] 本研究には、肘関節拘縮を呈する50名の患者が参加した。自撮り終了後、上級著者がゴニオメーターを用いて臨床的に屈曲・伸展を測定した(以下図)。

スクリーンショット 2021-06-12 4.53.26

ASES 2018 Closed Meeting Abstractsより引用

写真の角度を測定し、分析した。結果ゴニオメーターによる測定と「自撮り」による測定の間には密接な相関関係があり(R2 = 0.98)、クラス内相関係数は、伸展では0.95(95% CI 0.92~0.97)で平均差は2°(95% CI -3°~7°)、屈曲では0.93(95% CI 0.89~0.96)で平均差は4°(95% CI 0°~8°)と、伸展と屈曲の両方で優れた一致が見られた。体系的な誤差は、伸展位では0°(95%CI、±11°)、屈曲位では-3°(95%CI、±10°)と低かった。6人の患者が、臨床的な測定値と自撮りの測定値の間に10°以上の差を示した。使える自撮り写真を撮影する能力は、年齢と逆相関していた(R2 = 0.97)。

[考察] 自分で撮影した屈曲・伸展写真は、肘関節の可動域を測定するための信頼性の高い正確なツールである。自撮り技術の誤りは許容範囲内であり、可動域の測定にはほとんど影響しないと思われる。したがって、この重要な肘関節機能のパラメータは、通常の診療時間外に得ることができ、品質管理や研究に必要なフォローアップ評価の頻度を向上させる(およびフォローアップの損失を最小限に抑える)ことができる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

新しい視点だと思った。最新技術によって、写真や動画から『自動的に』関節可動域を算出するアプリの信頼性・妥当性の検証などをよくみるが、これはちょっと違っていて、送られてきた自撮り写真を、玄人がゴニオメーターを使って古典的に計測するというちょっとシュールな検証だ。

そして、自撮り写真を撮影する能力が年齢と逆相関するというのも、実感的にはそう思っていたが、改めてエビデンスとして確立されたということは重要なことではないだろうか?

とにかく、どの検証も、目指すところは「離れた場所にいても正確な関節可動域が計測、共有できる」だ。そして、その線はそのまま、遠隔リハビリテーションの質の向上や自動化へとつながる。デジタル・仮想空間・SNSリテラシーを高めておくことが、次世代のリハビリテーションの鍵になりそうだ。