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「不使用の学習」の定義:曖昧さが露呈される

▼ 文献情報 と 抄録和訳

学習された不使用現象の運用化に向けた第一歩;デルファイ調査の結果

Hirsch, Theresa, et al. "A First Step Toward the Operationalization of the Learned Non-Use Phenomenon: A Delphi Study." Neurorehabilitation and Neural Repair 35.5 (2021): 383-392.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 脳障害後にしばしば見られる、残存機能能力と対側の手の使用量の減少との間の負の不一致は、Learned Non-Use(LNU)と呼ばれ、回復時の神経細胞のメカニズムと学習依存のメカニズムの相互作用に依存すると考えられている。

[目的] LNU現象の存在は一般的に認められていますが、現在のところ学際的な定義はない。さらに、LNUを対象とした治療的アプローチが臨床現場で実施されているにもかかわらず、標準化された診断ルーチンは文献に記載されていない。我々の目的は、定義に関するコンセンサスを得ること、および現在の診断手順に関する知識をまとめることである。

[方法] この分野の臨床および科学の専門家を対象に、デルファイ法に基づいて構造化されたグループコミュニケーションを行い、患者集団と動物モデルの両方から得られた知識を活用した。

[結果] LNU現象の学際的な定義について合意が得られた。さらに、診断プロセスの様式と戦略、臨床的意思決定に関連する情報源と結果パラメータについては、一貫した普遍的な診断方法がない現状を示すように、幅広い範囲で説明された

[結論] 構造化された診断手順を開発し、それを臨床現場に導入する必要性が強調された。さらに、LNU現象のメカニズムに関する一般的な仮説と実際の証拠との間には顕著なギャップがある。したがって、ベッドサイドとベンチをつなぐ基礎研究が必要であり、最終的には臨床的な意思決定を改善し、脳卒中リハビリテーションの分野を超えた介入戦略をさらに発展させることができると考えられる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

ニーチェはこういった。『事実、言語は科学のための努力の第一段階である』。不使用の学習は使い勝手のいい言葉だ。脳卒中片麻痺者の麻痺側上肢に対していうこともあれば、骨折後の患側下肢に対して使っている時もある(後者は完全に間違っているのだろうか?)。
だが、『不使用の学習を診断して下さい』と言われたらドキリとする。明確な言葉の定義を知らずに、使っていたからだ。だが、それでは学術体系として発展しにくくなる、共通言語としての機能が落ちる。
この研究は、不使用の学習という言葉において、そういうことが現実に生じていることを明らかにした。題目に第一歩とあるように、第二、第三歩、明確な定義・診断に至るまで目が離せない。