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プラセボは、効力タイミングまでコントロールできる!

▼ 文献情報 と 抄録和訳

持続性疼痛の実験モデルにおけるプラセボ鎮痛の外的タイミング

Camerone, Eleonora Maria, et al. "‘External timing of placebo analgesia in an experimental model of sustained pain." European Journal of Pain (2021) 25(6):1303-1315.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] プラセボ鎮痛に関する研究では、期待される鎮痛効果の方向性(痛みの増加または減少)や大きさに関する情報の影響に焦点が当てられることが多いが、期待の時間的側面についてはこれまであまり注目されてこなかった。最近の研究では、持続時間の短い低強度の刺激を用いて、プラセボ鎮痛効果の発現が時間的情報に影響されることを示した。ここでは、Cold Pressor Test (CPT)において、より長く持続する高強度の痛みでも、時間的な示唆による同様の効果が見られるかどうかを検討する。

[方法] 53人の健康なボランティアが、3つのグループのいずれかに割り当てられた。参加者は、(不活性)クリームを塗布すると5分後(P5)または30分後(P30)に痛みが軽減すると知らされた。3つ目のグループは、クリームには水分補給の効果しかないと知らされた(NE)。すべての参加者は、ベースライン時、クリーム塗布後10分(テスト10)および35分(テスト35)にCPTを完了した。ベースラインからテスト10(Δ10)およびテスト35(Δ35)までの曝露時間(耐痛性)の変化率と、CPT中の心拍数(HR)の変化を3群間で比較した。

[結果] Δ10はNEおよびP30に比べてP5で大きく、早期の鎮痛効果を期待していた群でのみ鎮痛効果があったことが示された。Δ35はNEに比べてP5とP30で大きかったが、これはP30では鎮痛の発現が遅れ、P5では鎮痛が維持されたことを反映している。グループ間のHRの差は有意ではなかった。

[結論] 今回のデータは、長時間の痛みに対して「外部からのタイミング」でプラセボ鎮痛を行うことが可能であることを示唆している。

[意義] プラシーボ効果に関する研究では、主に期待効果の方向性(痛みの増加・減少)や大きさ(強い・弱い)に関する情報の影響が注目されるが、期待の時間的側面は無視される。健常者を対象とした我々の研究では、プラセボによる鎮痛作用の発現は、提供された時間的な情報に従ったものであった。このような「外部タイミング」効果は、プラセボ治療の臨床利用(オープンラベルのプラセボなど)を助けるだけでなく、実薬の有効性をサポートする可能性がある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

「病は気から」というが、気が身体に影響を与える身体化にはとくに疼痛治療において大きな可能性を感じる。たとえば、リハビリテーションにおいても当該治療のエビデンスに精通していることで、「この治療を行うと2週間くらいで疼痛が軽減することが実証されているんですよ♪」などの伝え方ができる。そして、これを言われた患者さんは『実際の効果+プラセボ効果』を得ることができるのではないか?

今回の研究結果により、そのフィードバック時に『タイミング』要素を盛り込むことが大切であると感じた。宮崎駿の言葉が医療者に当てはまることが、実証されつつある。

言葉は意思であり、自分であり、力なのだ
宮﨑駿