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選択と集中のストラテジー:超具体的な再入院の防止策

▼ 文献情報 と 抄録和訳

統合医療システムにおける再入院防止のための予測分析を対象とした介入の評価:観察研究

Marafino, Ben J., et al. "Evaluation of an intervention targeted with predictive analytics to prevent readmissions in an integrated health system: observational study." bmj 374 (2021).

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 大規模な統合医療システムにおいて,退院後の患者を対象としたケア調整介入(Transitions Program)と,30日目の再入院および死亡率との関連を明らかにする。

[方法] デザイン→観察研究。設定→Kaiser Permanente Northern Californiaが運営する21の病院。参加者→2010年6月から2018年12月までの739,040人のユニークな患者に対応する1,539,285件の適格なインデックス病院入院があった。411 507人の患者がトランジションプログラム実施後に退院し、このうち80 424人(19.5%)が中・高予測リスクであり、退院後に介入を受けるように割り当てられた。介入→入院患者は、電子カルテのデータに基づいて30日目の再入院または死亡の予測リスクが25%以上であれば、退院後30日間に自動的にトランジションズプログラムのフォローを受けることになった。

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再入院リスクを3段階に区分し、それぞれのターゲットに対するトランジショナルケアプログラムの具体的な行動内容・タイミングを規定している

主要評価項目→退院後30日間の非選択的再入院および全原因死亡率。

[結果] 差分推定では,介入は30日目の非選択的再入院のオッズを有意に低下させたが(調整オッズ比0.91,95%信頼区間0.89~0.93,絶対リスク低減95%信頼区間-2.5%,-3.1%~-2.0%),退院後30日目の死亡率のオッズには関連しなかった(1.00,0.95~1.04)。回帰不連続推定値によると、登録に用いたリスク閾値に近い中程度のリスクの患者では、再入院との関連性は同程度であった(絶対的なリスクの減少-2.7%、-3.2%~-2.2%)。しかし,退院後の死亡率との関連の回帰不連続推定値(-0.7% -1.4% -0.0%)は有意であり,このサブグループの患者では有益であることが示唆された。

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予測される低リスク(25%未満)または予測される中高リスク(25%以上)の退院患者の30日複合転帰の月次観察率対期待値、2010年6月~2018年12月。これらのサブグループは、Transitions Programの介入について、それぞれ非治療群と介入群に対応する。縦線は、KPNCの最初の病院がTransitions Programを「本番」にした実施期間の開始時(2016年1月7日)と、KPNCの最後の病院が「本番」にした実施完了時(2017年5月31日)を示す。すべての時系列は、3ヶ月移動平均で平滑化し、X11法で季節調整を行っている。

[結論] 統合された医療システムにおいて,包括的な再入院防止介入の実施は,30日再入院率の低下と関連していた。さらに、30日後の退院死亡率との関連は、有益性を示す証拠がいくつか認められた中リスクの患者を除いて、認められなかった。以上のことから、本研究は、地域社会における再入院防止のための介入の有効性を示唆するエビデンスを提供しているが、このような環境を超えて調査結果を確認するには、さらなる研究が必要かもしれない。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

This is 『BMJ』!!!。先月から今月にかけてのBMJはリハ関連職種からすると神回であったと思う。
近々もう1つレビューすることになる。

学問の要は活用にあるのみ。活用なき学問は無学に等し。
福沢諭吉

再入院の要因や有効なトランジショナルケアのエビデンスが蓄積されつつある。
しかし、それらのエビデンスを統合して、実際に自ら勤める病院で具体的に何をするかは、わからなかった。
今回の論文は、実践可能性が高い。なぜなら、すぐにでも実行できるように詳細なデータを提供してくれているから。
「必要な人を見極め、必要なだけのトランジショナルケアを!」がこの論文のテーマだと思う。
そして、その具体的なスクリーニングアルゴリズムや、ケアの詳細を「これでもか!」というほど教えてくれている。実際に職員が使った「マニュアル」のようなものまで、まんま(多分)のっている。

それにしても、欧米は再入院防止に躍起になっている。
そして、さかのぼってみれば、日本にもその潮流が来る可能性が高い。
いまから、具体的な武器や技を覚えておいた方がいいだろう。

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