この20年間で、超高齢者はより自立し、障害が減り、余命が延長した
▼ 文献情報 と 抄録和訳
高齢者の身体機能、罹患率、障害のない余命の動向:2001年から2018年の間に6回繰り返されたクロスセクション調査「vitality 90+」の結果
Enroth, Linda, et al. "Trends of physical functioning, morbidity, and disability-free life expectancy among the oldest old: six repeated cross-sectional surveys between 2001 and 2018 in the vitality 90+ study." The Journals of Gerontology: Series A 76.7 (2021): 1227-1233.
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[背景] 長寿化に伴い、健康状態の悪さや障害が圧縮されるのか、拡大するのかは依然として不明である。我々は、フィンランドで3番目に人口の多い都市において、2001年から2018年の間に、90歳以上の人口における身体機能と罹患率、および90歳時点での病気や障害のない平均余命(LE)の動向を調査した。
[方法] Vitality 90+ Studyの調査データを使用した。Vitality 90+ Studyは、6回の繰り返し郵送調査(7,590件)で構成される。死亡率に関する情報は、フィンランド統計局から得た。機能(日常生活動作[ADL]と移動能力)、心血管疾患と認知症の罹患率の傾向を、性別で層別した年齢調整済み一般化推定方程式モデルを用いて調べた。さらに、Sullivanの方法を用いて、年齢、性別、期間別の健康余命を算出した。
[結果] 時間の経過とともに、特に女性では機能が向上し、男性では罹患率が上昇した。2001年から2018年にかけて、90歳時のLEは、男性で5.3カ月、女性で6.4カ月増加した。ADL障害のないLEは、男性で5.0カ月、女性で8.4カ月、移動障害のないLEは、男性で6.0カ月、女性で4.4カ月増加した。心血管障害と認知症を伴わないLEは、男性では2.6ヵ月減少し、女性では1.9ヵ月増加した。
[結論] 相対的に見て、男女ともに障害が圧縮され、男性では罹患率が拡大していることがわかった。全体的には良好な傾向であるが、絶対的な罹患率の増加と、ある程度の障害の増加は、人口の高齢化に伴う介護ニーズの増加を意味することは必至である。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
これらの結果は、近代医学の勝利と言えるのかもしれない。
が、ぬか喜びするだけでなく、少し立ち止まって、考えてみよう。
僕たちは、より良さに向かい、日々漸進している、しようとしている。その行き着く先は、どうなってゆくのだろう?たとえば、この論文の最後にも書いてあるが、超高齢者が増えてゆくことは、良いことだけではないだろう。人類全体を1個のものとして捉えたとき、僕たちは、いったい何をすれば良いのだろう・・・。
たしかにあの鳥の生き血を吸ったものは、永久に不滅の生命を持つということだ……
だがおぬし、人間の寿命がのびて…のびたところでいったいなんになる?
「火の鳥(3)」より
考え続けたい。